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7話 ヒュドラ退治(前編)
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『ドラグラ……、後のことはお願いね……』
「ラース様ーーーー!!」
ガバッ!
目を覚ますと同時に、私は勢いよく身を起こした。
夢か……
そう、夢――
先代の憤怒の魔王ラース様が生きているはずがない。
ラース様は、私の目の前で亡くなられたのだから……
「――ドラグラ参謀? ……大丈夫ですか?」
ユーリスが心配をして声をかけてくれた。
「すまない、起こしてしまったな、ラース様の夢を見ていたのだ――」
「いえ、うなされても仕方がありません……。ラース様が殺されたあの事件は、私にとっても悪夢のような出来事でしたから――」
「そうだったな……」
「傷心緩和!」
「ありがとう、ユーリス……」
ユーリスが魔法を唱えて、心の傷を穏やかにしてくれた。
◇
「今回のお主達への依頼は、九頭巨大毒蛇退治じゃ」
「九頭巨大毒蛇退治!?」
「これは、また厄介(やっかい)な依頼ですね……」
ハザンからの依頼内容に驚いている私の横で、ドラグラがそう呟いた。
「正直、この依頼を受けてくれる冒険者がいなくてな……。お主達の腕を見込んでの依頼じゃ」
九頭巨大毒蛇は、九つの頭を持つ巨大な毒蛇で、沼地に棲んでいると言われている。
隣の王国に行く途中にその沼地があるらしいのだが、今はその沼地を避けて通っているため、かなりの遠回りをしているとのこと。
王国でさえ手をこまねいているほどの案件のため、難易度はSランク。
前回、炎竜の問題を解決した期待から、王国の勅命で九頭巨大毒蛇退治の依頼が来たらしい。
確かに、その依頼の報酬額を聞くと、かなり魅力的ではあるが――
「イラ殿、この依頼はあまりにも危険です……。さすがに辞退した方がよろしいかと――」
「ギルドマスター、ハザン!! その依頼、俺にも手伝わせてくれ!!」
ドラグラが最後まで台詞言い切る前に、男がギルドマスターの部屋に入って来た。
容貌は小人妖精のように見える。
「ん、鍛冶屋のダッフルではないか? 何故、お主が九頭巨大毒蛇退治を手伝う必要があるのだ?」
「俺の娘は隣の王国の薬を使っているんだ!! ただでさえ高価な薬を使っているのに、九頭巨大毒蛇のせいで、最近は更に値段が上がっちまってる!!」
「なるほどな……。だが、安心せい、ここにいる冒険者達が、その問題を見事に解決してくれるはずじゃ」
……え?
なに言ってるの?
「ほ、ほんとうか!! あ、ありがとう!! この恩は一生忘れんぞい!!」
ガシッ!
両手で私の手を握り、涙を流しながらダッフルはそう言った。
こ、これ、断れないやつ――
行くしかないじゃん……
「わ、わかりました。任せて下さい……」
「イラ殿……」
ドラグラがジト目でこちらを見ている。
し、しょうがないでしょ。
断れる雰囲気じゃなかったんだから……
私はそう心の中で弁解した。
「ありがとう!! 代わりに、討伐に必要な装備は何でも作るぞい!!」
ん?
手先が器用な小人妖精に装備を作ってもらえるのなら悪い話ではない気もするが――
「……小人妖精が装備を作ってくれるんなら、そこまで悪い条件じゃないんじゃない?」
「うーん……。はぁ、危険には変わりないですが、仕方がないですね――」
溜息をつきながら、ドラグラもしぶしぶ了解してくれた。
「それでは、九頭巨大毒蛇退治の依頼、受けてくれるということでよいのじゃな」
「はい、それでお願いします……」
九頭巨大毒蛇に関しての知識がほとんどない状態で、依頼を受けてしまったが、本当に大丈夫だろうか――
依頼を受けさせることができてニコニコしているハザンの笑顔を見ながら、私もドラグラと同じような溜息をついた。
グイッ!
「え?」
エンが私の袖を引っ張った。
「僕、ダッフルさんの家に行ってあげてもいいですか?」
「もしかして、ダッフルの娘さんに回復魔法をかけてあげたいの?」
エンが頷いた。
エンは本当に優しい……
記憶がなくて自分も大変なのに、どうしてそんなに優しくなれるのだろうか……
エンが愛おしく思えて、私は人目もはばからず、エンをギュッと抱きしめた。
ナデナデ!
前回は撫でられたので、今回は私がエンを撫でてあげた。
「……イ、イラ?!」
エンが戸惑っている。
そんな仕草も可愛くて、私はクスっと微笑した。
「回復魔法を使うのなら、ユーリスも一緒に行った方がいいよね」
「はい、そうしてもらえるとありがたいけど……」
そう言って、私とエンがユーリスの方を見ると――
「もちろん、僕も同行させていただきますよ」
と、ユーリスは笑顔で答えた。
「ありがとう、ユーリス」
エンは感謝を伝えて、ユーリスにお辞儀をした。
「はぅっ!! 期待されて、期待に応えて、感謝をされる……。これが友情というものなのですね……」
ユーリスは天井を見上げながら、何か分からない何かに涙を流しながら、そう祈りを捧げていた。
うん、悪い子ではないんだけど、ユーリスはちょっと不思議な感性を持っているようだ――
そんなことを考えながら、私は苦笑いをした。
「私も同行させていただきますね」
「あ、ドラグラも来てくれるの?」
「はい、装備を作ってもらえるのでしたら、九頭巨大毒蛇との戦いに備えて、防具に魔法付与も施ほどこしたいですからね」
確かに、九頭巨大毒蛇の毒の息に対抗するには、ただの防具では心もとない……
「ありがとう、ドラグラ」
「べ、べつに、これぐらいは当然のことです」
ドラグラは少し照れた様子でそう言った。
これはもうツンデレ確定でしょ!
ほんと、楽しい仲間達だよね――
素敵な仲間達に囲まれて、私は本当に幸せだと思う……
「ラース様ーーーー!!」
ガバッ!
目を覚ますと同時に、私は勢いよく身を起こした。
夢か……
そう、夢――
先代の憤怒の魔王ラース様が生きているはずがない。
ラース様は、私の目の前で亡くなられたのだから……
「――ドラグラ参謀? ……大丈夫ですか?」
ユーリスが心配をして声をかけてくれた。
「すまない、起こしてしまったな、ラース様の夢を見ていたのだ――」
「いえ、うなされても仕方がありません……。ラース様が殺されたあの事件は、私にとっても悪夢のような出来事でしたから――」
「そうだったな……」
「傷心緩和!」
「ありがとう、ユーリス……」
ユーリスが魔法を唱えて、心の傷を穏やかにしてくれた。
◇
「今回のお主達への依頼は、九頭巨大毒蛇退治じゃ」
「九頭巨大毒蛇退治!?」
「これは、また厄介(やっかい)な依頼ですね……」
ハザンからの依頼内容に驚いている私の横で、ドラグラがそう呟いた。
「正直、この依頼を受けてくれる冒険者がいなくてな……。お主達の腕を見込んでの依頼じゃ」
九頭巨大毒蛇は、九つの頭を持つ巨大な毒蛇で、沼地に棲んでいると言われている。
隣の王国に行く途中にその沼地があるらしいのだが、今はその沼地を避けて通っているため、かなりの遠回りをしているとのこと。
王国でさえ手をこまねいているほどの案件のため、難易度はSランク。
前回、炎竜の問題を解決した期待から、王国の勅命で九頭巨大毒蛇退治の依頼が来たらしい。
確かに、その依頼の報酬額を聞くと、かなり魅力的ではあるが――
「イラ殿、この依頼はあまりにも危険です……。さすがに辞退した方がよろしいかと――」
「ギルドマスター、ハザン!! その依頼、俺にも手伝わせてくれ!!」
ドラグラが最後まで台詞言い切る前に、男がギルドマスターの部屋に入って来た。
容貌は小人妖精のように見える。
「ん、鍛冶屋のダッフルではないか? 何故、お主が九頭巨大毒蛇退治を手伝う必要があるのだ?」
「俺の娘は隣の王国の薬を使っているんだ!! ただでさえ高価な薬を使っているのに、九頭巨大毒蛇のせいで、最近は更に値段が上がっちまってる!!」
「なるほどな……。だが、安心せい、ここにいる冒険者達が、その問題を見事に解決してくれるはずじゃ」
……え?
なに言ってるの?
「ほ、ほんとうか!! あ、ありがとう!! この恩は一生忘れんぞい!!」
ガシッ!
両手で私の手を握り、涙を流しながらダッフルはそう言った。
こ、これ、断れないやつ――
行くしかないじゃん……
「わ、わかりました。任せて下さい……」
「イラ殿……」
ドラグラがジト目でこちらを見ている。
し、しょうがないでしょ。
断れる雰囲気じゃなかったんだから……
私はそう心の中で弁解した。
「ありがとう!! 代わりに、討伐に必要な装備は何でも作るぞい!!」
ん?
手先が器用な小人妖精に装備を作ってもらえるのなら悪い話ではない気もするが――
「……小人妖精が装備を作ってくれるんなら、そこまで悪い条件じゃないんじゃない?」
「うーん……。はぁ、危険には変わりないですが、仕方がないですね――」
溜息をつきながら、ドラグラもしぶしぶ了解してくれた。
「それでは、九頭巨大毒蛇退治の依頼、受けてくれるということでよいのじゃな」
「はい、それでお願いします……」
九頭巨大毒蛇に関しての知識がほとんどない状態で、依頼を受けてしまったが、本当に大丈夫だろうか――
依頼を受けさせることができてニコニコしているハザンの笑顔を見ながら、私もドラグラと同じような溜息をついた。
グイッ!
「え?」
エンが私の袖を引っ張った。
「僕、ダッフルさんの家に行ってあげてもいいですか?」
「もしかして、ダッフルの娘さんに回復魔法をかけてあげたいの?」
エンが頷いた。
エンは本当に優しい……
記憶がなくて自分も大変なのに、どうしてそんなに優しくなれるのだろうか……
エンが愛おしく思えて、私は人目もはばからず、エンをギュッと抱きしめた。
ナデナデ!
前回は撫でられたので、今回は私がエンを撫でてあげた。
「……イ、イラ?!」
エンが戸惑っている。
そんな仕草も可愛くて、私はクスっと微笑した。
「回復魔法を使うのなら、ユーリスも一緒に行った方がいいよね」
「はい、そうしてもらえるとありがたいけど……」
そう言って、私とエンがユーリスの方を見ると――
「もちろん、僕も同行させていただきますよ」
と、ユーリスは笑顔で答えた。
「ありがとう、ユーリス」
エンは感謝を伝えて、ユーリスにお辞儀をした。
「はぅっ!! 期待されて、期待に応えて、感謝をされる……。これが友情というものなのですね……」
ユーリスは天井を見上げながら、何か分からない何かに涙を流しながら、そう祈りを捧げていた。
うん、悪い子ではないんだけど、ユーリスはちょっと不思議な感性を持っているようだ――
そんなことを考えながら、私は苦笑いをした。
「私も同行させていただきますね」
「あ、ドラグラも来てくれるの?」
「はい、装備を作ってもらえるのでしたら、九頭巨大毒蛇との戦いに備えて、防具に魔法付与も施ほどこしたいですからね」
確かに、九頭巨大毒蛇の毒の息に対抗するには、ただの防具では心もとない……
「ありがとう、ドラグラ」
「べ、べつに、これぐらいは当然のことです」
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素敵な仲間達に囲まれて、私は本当に幸せだと思う……
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