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1話 プロローグ 婚約破棄からの王国追放と敵国の皇太子
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「ラティリス、他に好きな女性ができたから、君との婚約は破棄したい!!」
「え?」
……この王子は何を言っているのだろうか?
悪役令嬢に転生してから二年が経とうとしているが、その間、王子の婚約者として相応しい令嬢となるべく準備を重ね、最近では結婚式の段取りまで王子に配慮しながら私が進めていたというのに――
「それに、君は私と婚約をしているというのに、他の男と親密な関係になっていたそうじゃないか」
……他の男と親密な関係?
それは心外だ――
確かに言い寄ってくる男性はいたが、王子への貞操を守るため、私は心を鬼にして冷たくあしらってきた。
「その中でも一番許せないのは大切な幼馴染との仲を裂くために、君が私達を貶めようとした数々の悪事についてだ!!」
何となく察しがついた……
王子の幼馴染の女が、私を陥れるために、王子に何かを吹き込んだのだろう。
「私の幼馴染にした仕打ちを考えれば、本来、君は刑に処されても仕方のない立場だが――、婚約期間に君がしてくれた数々の恩を、私は忘れてはいない。よって、この王国から君を追放することで、私はその罪を許したいと思っている」
……もう色々とおかし過ぎて、どこから弁明したらいいの?
二年間尽くした恩は感じているのに、私にその真意を確認することなく幼馴染の言葉の方を全部信じるとか――
薄々感じてはいたが、この王子は人の誠意に鈍感なのだと思う……
そう思うと、長い目で考えて婚約は破棄されてよかったのかもしれない。
王子への気持ちが急激に醒めていくのを、私は感じていた――
元々、お父様からお願いされて、お家のためにと受け入れた婚約。
王子から婚約を破棄したいと言っているのだから、私が未練がましく食い下がる必要はない。
「わかりました。王国からの追放で罪を許していただき、本当にありがとうございます」
「ふん、ありがたく思えよ」
……はぁ、この王子が皇太子だというのだから、どの道この王国の未来は明るくなさそうだ。
私は溜息をつきながら、私の故郷でもあるこの王国の行く末を憂いた――
◇
「これから、どうしようかなぁ……」
生活に困らない程度には売れる宝石と、旅路に必要な最低限の荷物を持って、私は隣の王国の道をとぼとぼと歩いていた。
私がいた王国は西以外海に囲まれているため、敵対している王国ではあるが追放された私はこの国に来るしかなかった。
「お前、こんなところにいたら危ないぞ」
誰か知らないが、私のことを心配して声をかけてくれた。
「あ、お構いなく。私、魔法が使えるので、盗賊くらいは撃退できますから――」
「ほう、それは面白い……。女が一人でこんなところを歩いているので声をかけたが、魔法が使えるとはな――。どうやら俺の杞憂だったようだ」
「わかってもらえれば……」
――って、この人、よく見たら、ルランド皇太子だよね。
隣の王国から黒髪灼眼の皇太子自らが交渉に来たと王宮でも話題になっていたことがある。
元婚約者の王子が優位性を示そうとして、その時の交渉は破談になったらしいが……
「あなたは、――もしかしてルランド皇太子ですか?」
「ん? 俺のことを知らないということは、お前、この国の者ではないな」
「あ、はい、今日、隣の王国からこちらに来たんです」
「なるほど……」
ルランド皇太子が何かを考えている。
「――どうかなさいましたか?」
「よし、気に入った。俺は今からお前を王宮に連れて行く」
「いえ、ご遠慮します」
私は即答した。
「……何故だ? 王宮で住まわせてやると言っているのだぞ?」
「まあ、過去に色々とありまして――」
もう、王宮のゴタゴタに巻き込まれたくない。
「フ、ますます気に入った……。多少強引にでも、お前を王宮に連れて行くこととしよう」
「え? ちょっと、待って――」
制止する間もなく、私はお姫様抱っこをされて、ルランド皇太子の馬に乗せられた。
「では、行くぞ!!」
「え、え、えーーー?!」
こうして、私は隣の王国に足を踏み入れて数時間も経たない間に、また王宮生活をすることとなった――
◇
「――あの時は、本当に強引でしたね」
「今更、昔のことはいいだろう……」
私が王国を追放されてから一年――
ルランドと初めて出逢った時の話をすると、ルランドは気まずそうにそう言った。
「しかし、ラティリス、お前は本当に頑なに王国の情報を教えなかったな」
「当然です。たとえ、王子に裏切られたとはいえ、故郷の人々を裏切るようなことはできませんから……」
「だが、君のような立派な令嬢を追放してしまうような無能な王子ならば、こちらが流した情報に踊らされるに違いない。そう考えた俺の戦略は正しかっただろ」
「まあ、それはさすがだと思いましたが――」
王国に嘘の情報を流し、民に対する不信感を与えさせた上、不満を増長させたところで民と一緒に王族を追い出す。
ルランドの作戦は見事に成功した。
私達が今いる場所は私が追放された王国の王宮――
私は一年もしないうちに、ルランドの婚約者として、またこの王宮へと戻って来ていた。
追放された私が、この王国の王妃になろうとしているなんて、なんと皮肉な話なのだろう……
私はしみじみとそう思った。
「さて、君の元婚約者の話はこれくらいにして――」
「ふふ、もしかして嫉妬してしまいましたか?」
「かもしれないな……」
私は冗談のつもりで言ったのだが、ルランドは何故か真剣な面持ちで答えた。
「今日はやけに素直ですね。――どうかしましたか?」
いつもとは違うルランドの様子が気になった。
「俺はラティリスにずっと謝らないといけないと思っていたんだ……」
「私に謝らないといけないことですか? 多すぎて、どれのことを言っているのかわかりませんが――」
「ハハ、確かにそうだな」
冗談っぽく答えると、ルランドは笑った。
「ラティリス、俺が君に初めて出逢った時、君が王子の元婚約者だということには気づいていたんだ」
ああ、そのこと……
「あの時は君を利用できると思って王宮へと連れて行った。――だから、ラティリスと婚約することになった時、そのことを謝ろうと思っていたんだが、今日まで、俺はそれを伝えることができなかった……。すまなかった」
そう言ってルランドは私に頭を下げた。
ルランドって粗野な性格に見えて、実は優しかったりするんだよね――
「そのことですが、私はあなたの意図に気づいていましたよ」
「なっ?!」
ルランドが驚いた表情をしている。
「……い、いつからだ?」
「初めて逢った時です。ああ、この人は私から王国の情報を得ようとしているんだろうなぁと思っていました。――ですから、私は王国の情報を教えなかったんですよ」
「君って人は……。ん? ――だったら、どうしてラティリスは俺の婚約を受け入れてくれたんだ?」
ルランドが私に素朴は疑問を投げかけた。
「そ、それは……、察してください!!」
私が顔を真っ赤にしてそう答えると――
「ラティリス!!」
ルランドは私の名前を大声で叫び、強く強く私を抱きしめた。
そして――
「俺は君のことを心から愛している。だから、どうか、俺と結婚してほしい!!」
と私にプロポーズをした。
「はい、喜んで」
満面の笑みを浮かべながら、私はルランドにそう返事をした。
こうして、悪役令嬢に転生し、王子に婚約破棄をされて王国まで追放された私だったが、敵対していた王国のルランド皇太子に出逢って、本当の幸せを手に入れることができた。
しかし、そんなささやかな幸せで満足していた私の想いとは裏腹に、新たな物語がここから始まろうとしていた――
「え?」
……この王子は何を言っているのだろうか?
悪役令嬢に転生してから二年が経とうとしているが、その間、王子の婚約者として相応しい令嬢となるべく準備を重ね、最近では結婚式の段取りまで王子に配慮しながら私が進めていたというのに――
「それに、君は私と婚約をしているというのに、他の男と親密な関係になっていたそうじゃないか」
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確かに言い寄ってくる男性はいたが、王子への貞操を守るため、私は心を鬼にして冷たくあしらってきた。
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何となく察しがついた……
王子の幼馴染の女が、私を陥れるために、王子に何かを吹き込んだのだろう。
「私の幼馴染にした仕打ちを考えれば、本来、君は刑に処されても仕方のない立場だが――、婚約期間に君がしてくれた数々の恩を、私は忘れてはいない。よって、この王国から君を追放することで、私はその罪を許したいと思っている」
……もう色々とおかし過ぎて、どこから弁明したらいいの?
二年間尽くした恩は感じているのに、私にその真意を確認することなく幼馴染の言葉の方を全部信じるとか――
薄々感じてはいたが、この王子は人の誠意に鈍感なのだと思う……
そう思うと、長い目で考えて婚約は破棄されてよかったのかもしれない。
王子への気持ちが急激に醒めていくのを、私は感じていた――
元々、お父様からお願いされて、お家のためにと受け入れた婚約。
王子から婚約を破棄したいと言っているのだから、私が未練がましく食い下がる必要はない。
「わかりました。王国からの追放で罪を許していただき、本当にありがとうございます」
「ふん、ありがたく思えよ」
……はぁ、この王子が皇太子だというのだから、どの道この王国の未来は明るくなさそうだ。
私は溜息をつきながら、私の故郷でもあるこの王国の行く末を憂いた――
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「これから、どうしようかなぁ……」
生活に困らない程度には売れる宝石と、旅路に必要な最低限の荷物を持って、私は隣の王国の道をとぼとぼと歩いていた。
私がいた王国は西以外海に囲まれているため、敵対している王国ではあるが追放された私はこの国に来るしかなかった。
「お前、こんなところにいたら危ないぞ」
誰か知らないが、私のことを心配して声をかけてくれた。
「あ、お構いなく。私、魔法が使えるので、盗賊くらいは撃退できますから――」
「ほう、それは面白い……。女が一人でこんなところを歩いているので声をかけたが、魔法が使えるとはな――。どうやら俺の杞憂だったようだ」
「わかってもらえれば……」
――って、この人、よく見たら、ルランド皇太子だよね。
隣の王国から黒髪灼眼の皇太子自らが交渉に来たと王宮でも話題になっていたことがある。
元婚約者の王子が優位性を示そうとして、その時の交渉は破談になったらしいが……
「あなたは、――もしかしてルランド皇太子ですか?」
「ん? 俺のことを知らないということは、お前、この国の者ではないな」
「あ、はい、今日、隣の王国からこちらに来たんです」
「なるほど……」
ルランド皇太子が何かを考えている。
「――どうかなさいましたか?」
「よし、気に入った。俺は今からお前を王宮に連れて行く」
「いえ、ご遠慮します」
私は即答した。
「……何故だ? 王宮で住まわせてやると言っているのだぞ?」
「まあ、過去に色々とありまして――」
もう、王宮のゴタゴタに巻き込まれたくない。
「フ、ますます気に入った……。多少強引にでも、お前を王宮に連れて行くこととしよう」
「え? ちょっと、待って――」
制止する間もなく、私はお姫様抱っこをされて、ルランド皇太子の馬に乗せられた。
「では、行くぞ!!」
「え、え、えーーー?!」
こうして、私は隣の王国に足を踏み入れて数時間も経たない間に、また王宮生活をすることとなった――
◇
「――あの時は、本当に強引でしたね」
「今更、昔のことはいいだろう……」
私が王国を追放されてから一年――
ルランドと初めて出逢った時の話をすると、ルランドは気まずそうにそう言った。
「しかし、ラティリス、お前は本当に頑なに王国の情報を教えなかったな」
「当然です。たとえ、王子に裏切られたとはいえ、故郷の人々を裏切るようなことはできませんから……」
「だが、君のような立派な令嬢を追放してしまうような無能な王子ならば、こちらが流した情報に踊らされるに違いない。そう考えた俺の戦略は正しかっただろ」
「まあ、それはさすがだと思いましたが――」
王国に嘘の情報を流し、民に対する不信感を与えさせた上、不満を増長させたところで民と一緒に王族を追い出す。
ルランドの作戦は見事に成功した。
私達が今いる場所は私が追放された王国の王宮――
私は一年もしないうちに、ルランドの婚約者として、またこの王宮へと戻って来ていた。
追放された私が、この王国の王妃になろうとしているなんて、なんと皮肉な話なのだろう……
私はしみじみとそう思った。
「さて、君の元婚約者の話はこれくらいにして――」
「ふふ、もしかして嫉妬してしまいましたか?」
「かもしれないな……」
私は冗談のつもりで言ったのだが、ルランドは何故か真剣な面持ちで答えた。
「今日はやけに素直ですね。――どうかしましたか?」
いつもとは違うルランドの様子が気になった。
「俺はラティリスにずっと謝らないといけないと思っていたんだ……」
「私に謝らないといけないことですか? 多すぎて、どれのことを言っているのかわかりませんが――」
「ハハ、確かにそうだな」
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そう言ってルランドは私に頭を下げた。
ルランドって粗野な性格に見えて、実は優しかったりするんだよね――
「そのことですが、私はあなたの意図に気づいていましたよ」
「なっ?!」
ルランドが驚いた表情をしている。
「……い、いつからだ?」
「初めて逢った時です。ああ、この人は私から王国の情報を得ようとしているんだろうなぁと思っていました。――ですから、私は王国の情報を教えなかったんですよ」
「君って人は……。ん? ――だったら、どうしてラティリスは俺の婚約を受け入れてくれたんだ?」
ルランドが私に素朴は疑問を投げかけた。
「そ、それは……、察してください!!」
私が顔を真っ赤にしてそう答えると――
「ラティリス!!」
ルランドは私の名前を大声で叫び、強く強く私を抱きしめた。
そして――
「俺は君のことを心から愛している。だから、どうか、俺と結婚してほしい!!」
と私にプロポーズをした。
「はい、喜んで」
満面の笑みを浮かべながら、私はルランドにそう返事をした。
こうして、悪役令嬢に転生し、王子に婚約破棄をされて王国まで追放された私だったが、敵対していた王国のルランド皇太子に出逢って、本当の幸せを手に入れることができた。
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