自然と世界は廻る

已己已巳己

文字の大きさ
11 / 55

第十一話 昔のヒーロー

しおりを挟む
村の人 じゃあ、村を救ってくれた若きヒーローに、乾杯!!
全員 かんぱーい!!!
百鬼 あれ、いただきますじゃないのかー!?
葉月 おんなじ意味だよ!かんぱーい!
百鬼 かんぱーい!!
村の人 いやー、助かったよ!
百鬼 えへへー、ありがとうございます!
村の人 この集落は前にも襲われたんだけど、その時は今回とは違って助からなかったからねえ。
村の人 うわ、あんときのか、もう数年もたつのかー。
 村の人達は彩里たちに過去にも襲われたことを話した。
葉月 その時は、皆さんはどうして助かったのですか?
村の人 いや戦いに出た子たちはいたんだ。だが負けてしまってな、村を蹂躙じゅうりんするつもりの団体ではなかったから、俺らは大丈夫だったんだがな…その戦いに出たうち1人の名は北見きたみといったな。
村の人 今もこの村にいれば、君たちと同じぐらいの年齢だったんだけどねえ。
 村の人達は苦い顔をしつつその数年前の戦いを思い出した。
葉月 その北見って子を連れ去った人たちの情報ってありますか?
村の人 そうだな、団体名っぽいのは聞いたぞ。戦争を終わらせるために優秀な子供を狙っていろんな村を襲撃しゅうげきする奴らは、自分たちを争滅隊そうめつたいと言っていた。あの団体は見込んだものを無理やり引き連れようとして、逆らったやつを圧倒的な実力でじ伏せ、そのせいで子供をかばった村のやつも何人も死んだ。
錫谷 そこでなくなったうちの1人が、相馬の母親だ。父親は元からいないらしいがな。そして、俺の両親もそこで死んだらしい。
村の人 …申し訳ない、思い出させようとしたわけではないんだ…
 村の人は勇紀がそばにいることに気が付いていなく、とても申し訳なさそうな顔をしていた。
錫谷 いや、勝手に聞いてたこっちが悪かったです。
 勇紀も村の人と同じような顔をした。
百鬼 この魚ってなんか味付けてるー?
村の人 あぁ、これは…
百鬼 まって言わないで、塩焼きでしょ!
村の人 まあ、そうだな。
百鬼 やっぱそうよね!塩焼きめっちゃおいしいわー!
 重い空気が流れる中、そのすぐ近くではみなもが元気に魚について村の人と話していた。
村の人 ならみなもちゃん、これをつけて食べてみたら?1年物よー?
 村の人はニヤニヤしながら村の伝統品である、収穫していた大豆と小麦、そして食塩を原料に醸造じょうぞうした特製の液体をみなもにすすめた。
百鬼 塩焼きには勝てないと思うけど、いただきます!っておいしーぞこれも!!
村の人 いやいや、塩コショウもいいぞ!俺はこれが一番好きだな!じょうちゃんも絶対ハマるぜ!
百鬼 食べるー!
村の人 いやマヨネーズも捨てがたいわよ!これ今マイブームなのよ!
百鬼 じゃあそれも食べる!!
村の人 あの子いっぱい食べるなー!
村の人 たらふく食うやつは強くなるぞー!
 たくさんの調味料を進めていく中で、みなもはそれを全てたいらげ、村の人たちはとても感心していた。
葉月 …争滅隊っていう団体、僕たちが必ず倒して、捕らわれた方々を助けに行きます。
村の人 ただえさえ村を救ってくれたのに、そんな重いことを背負わせられないよ。みんな確かに悲しい思いはしたけれど、君たちを失うことは村の子を失ったあの時と同じようにみんなが悲しむだろうし、気持ちはとっても嬉しいけど、任せられないよ。
村の人 何より、今回の親玉なんかとは比べ物にならないほどの実力を持ってる奴らが占めてる団体だから、今の状態で行きゃあ、いい方は悪いが即死が妥当だとうだと言わざるをえんな。
葉月 だとしても、自分だけじゃないんです。特にうちには、関わった人は全員幸せになってほしい主義の子がいるので、間接的にも誰かを見捨てることはできません。
村の人 だとしてもだな…
村の人 まあいいじゃないか。ただ、いくっつーなら、日々の鍛錬たんれんおこたらずにすることだな。何かしらしてるんだろう。あと、今の君のランクを見せてくれ。
 村の人はもう1人をなだめ、それから何かを思い出したように彩里のランクを聞いた。
葉月 ?はい…あれ、ランクが、5に上がってる!
村の人 やっぱりな。俺は今回の襲撃も北見のがきんちょたちが連れ去らせた時も現場を見ていたが、戦いの中であんちゃんは特に周りの誰よりも成長速度が速い。きっと戦闘力以外の特技をよく活かせてるからだ。
葉月 (空間把握能力と、瞬時の判断能力…)
 彩里は自分の手を見て、今回に限らず過去に生きた2つの能力を思い出した。
村の人 あんちゃん自身も、何か理解わかっているならなおさらいいな。北見のガキを連れ去った連中はこっから西北西にまっすぐ行った先にある集落に行けば情報があるだろう。おそらくあの団体があそこも襲撃しに行ってるはずだ。まあ、いいこまがいたらの話だがな。
 そういって指をさしながら争滅隊のいそうな場所を教えてくれた、その時、その指の方向に気がかりがあったのか、瞬太が反応した。
相馬 え、それってあっち!?
錫谷 なんかあんのか?
相馬 ちょうどこのぐらいの温度だったころにそのお祭りってのがやってたんだよ!
錫谷 へー。
 勇紀は特に気にせず、当たり前のように話を受け流した。
葉月 教えてくれてありがとうございます。今日と明日はこちらにいさせていただき、あさってには向かいたいと思います。
村の人 そんな急がなくても、一週間ぐらいゆっくりしていっていいのにー。
葉月 自分たちには、他にも目的があるので、休んでられないですよー。それと、あまりご迷惑になるわけにもいかないですしね。
村の人 迷惑だなんて、全く考えてないわよー?
 名残なごり惜しい思いのある村の人は何とかゆっくりしていってもらいたげの反応をしたが、その隣にいたその人の旦那が言葉を返した。
村の人 あのなあ、俺たちにとってはそうでも、この子らには自然にそう感じちまうもんなんだよ。異界いかいの地で初めて会った人間にはいろいろと接しにくいところもあるだろう。俺たちにできることは、黙って見守ることだけだ。
村の人 そういうもんなのか知らねぇ…
 村の人は、手をほおにあてながら、不服そうな顔をした。
葉月 あはは…
錫谷 なあ、後で話聞いてもらってもいいか?
葉月 おう!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...