自然と世界は廻る

已己已巳己

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第二十九話 商い方そして主催の遭遇

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宿主 そうね、1つ1つのお部屋に違いをもうけるのはどうかしら。
桜木 いいじゃんそれ!
 2人はウケのよい新しい宿の姿を考えていた。
宿主 このご時世、遠出はできないけれど、それでも来たいと思わせるには、期待をいい意味で超えることよ。
桜木 そうね…じゃあ、外観から意識するのはどう?いつしか戦争もなくなってお客さんが来るようになれた時、お祭りの季節にたくさんの人がその景色に負けないようにするみたいな!
宿主 お祭りは、夜になると全体的に赤とオレンジ色に町が染まるわ。
 宿主は、鈴音がお祭りを知らないことに対して少しイメージから話しだした。
桜木 そうなんですか!
宿主 人ってね、視覚情報で気分が変わることもあるの。それは大雑把な色でも一緒でね、赤だとテンションが上がったり、青だと落ち着いたり。ならそんな雰囲気の中この宿に必要なのは何色だと思う?
桜木 それは人によると思うけど…
宿主 それはそうだけど…w
桜木 私だったらきっと疲れてすぐに寝たいかも。
宿主 そうね、元々宿屋は寝るところだもの。なら私は、外に必要なのはある程度の薄い明りと植物がいいと思ってるわ。
桜木 緑色だからってこと?
宿主 それももちろんあるけど、眠くて暗いと色なんかはっきり認識しないものでしょう。ここで大事なのが、その植物の発する匂いね。
桜木 匂い、か。
 鈴音はあまりイメージが沸いていなかった。
宿主 適度なリラックス効果のある匂いは宿屋らしさも、そこから動かさないという効果も期待できるの。
桜木 確かに、落ち着く匂いって、ずっとそこから動きたくなくなるかも。そっから宿に入ってきやすくなるってことね!
宿主 それに、ただ利益を求めるわけじゃない。私達商売人に最も大事なものは心よ。また来てもらえるように、お客様を第一に考えて動くことが、還って店の利益に繋がるわ。
桜木 というと?
 鈴音は徐々に宿主の本気にワクワクしだしていた。
宿主 さっき薄明りが欲しいって言ったけど、それは宿屋がそこにあることのアピールと、雰囲気作りの2つのみを集中的に意識させるためなの。ここは祭り会場から少し離れた薄暗い位置にある。つまり、明かりのいらない朝、この宿を出るときに、来た時と違った2つ目の本来の宿の姿を見せることができるの。
桜木 すっご!
宿主 そこに美しい花壇かだんを飾れば外観は完璧になるはずだわ!
桜木 いやー。すごい、さすがとしか言えないわ…
 鈴音は壮観な芸術を見たかのように、その話の余韻よいんひたっていた。
宿主 実はここだけの話、外に花壇を置くのは外観以外にもう1つ理由があって、それはあきないの仕方に知識があって肥えてる人に対しては、花壇を置く余裕があることはその店が繁盛していることを示唆するからなのよ。
桜木 そうなんだ、でも何でそこまでするの?
宿主 広めてくれる人にも一般人と専門家なら、響き方が違うでしょう?
桜木 確かに…w
 鈴音はその戦略に対して、笑うしかできないほど感心していた。
宿主 いやー、数十年ぶりに熱が入っちゃったわね!w
桜木 じゃあ、後はいろいろ追加していきながら、お客さんを集めるために私たちも戦争を終わらせるために頑張らないとだね。
宿主 んん!?鈴音、戦争を終わらせるために旅をしていたのかい!?
 宿主は突然のその発言に動揺していた。
桜木 いや、本来の目的はまた別なことなんだけど、これは私の妄想だね。でも本当になりそうな気がして。もしその時が来たら、この村に報告しに来るね!
宿主 え、ええ…その時が来たら、その日の宿屋は貸し切りで大赤字ね。
桜木 そうこなくっちゃ!じゃ、早速取り掛かりますかぁ!
宿主 ええ、そうしたいのはやまやまなのだけど…
桜木 何か問題あった?
宿主 そうね、重要な問題が…
桜木 え…?
宿主 あまりの衝撃に、腰をやっちゃってね…
桜木 それはごめーん!ww

??? ヒャッハー!俺の時代が来たぜー!!(?)
 爽快に走り回る最中、彼にとってこの村で見たことのない人物を目撃する。
葉月 なんだあいつ…
 その先にいた彩里は遠くからやばい奴を見る目で彼を見つめると、不本意ながら目が合ってしまった。
??? お前かー!!
葉月 何がー!?
??? なあ!君でしょ!旅人ってさ!
葉月 まあ、そうだけど…
??? 単刀直入にお願いがあるんだわ!
葉月 なるほど!??
??? 俺もその旅に連れてってくれよ!
葉月 はい!?
 彩里はあまりの勢いっぷりに動揺することしかできなかった。
??? どう!?
葉月 まず誰やねん!!?
天宮 天宮灯請あまみやちょうせいっていうよ!よろしくね!
葉月 葉月彩里だけど…何があったの?
 彩里は一応真剣にそう尋ねた。
天宮 俺この村から抜け出してみたくてさー。
葉月 というと?
天宮 俺一応神なんだけどさ、このままだと一生祭られてここから外の世界を知らないで死にそうだからさ。黙って出ていきたいんだ。
葉月 なるほどねー…なるほどね!?
 彩里は無視できないほどの衝撃的な発言に遅れて気づいた。
天宮 いやー、だからさ…
葉月 ちょいちょいwここの村のお祭りの主催…ってことでしょ?
 彩里は慎重に頭を整理しようと問いかける。
天宮 そうなるね。
葉月 もしこの村から君がでていっちゃったらどうなる?
天宮 村の祭りが無くなるね。
葉月 …それいいの?
天宮 おれを神にしたのが悪い!
葉月 んーーーーー。これは強い。
 彩里は諦めて歩き出した。
??? 沈黙ちんもくは了承ってこととみなすぜー!

村の人 あ…
葉月 もしかして彼を知っている人ですか?
村の人 といいますか、専属人とでもいったところでしょうか。
天宮 ははは!残念だったな!俺は葉月君について行くことになったんだぜー!?
村の人 …
 村の人は彩里の方をゆっくりと向いた。
葉月 丁度よかったです。お探ししていました。では…
村の人 …
天宮 んふー…w
葉月 彼をよろしくお願いします。
村の人 承知しました。
天宮 は…
村の人 行きますよッ!
天宮 いやだあぁぁ!!
葉月 よし…一件落着かな…
 彩里はとりあえず村の人に任せることにした。
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