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第三章 ワールドウォー・トゥモロー

実を言うと俺は年下のほうが好きだ。

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 俺は彼女の事を思い出していた。

 それはまるで走馬灯のように鮮明に鮮烈に、俺の記憶から呼び覚まされた。

「…それで、七海が今この世界にいるのか?」

「そうだ。だが彼女は君とは会うつもりは無いらしい。その理由については彼女に口止めされているから言えないが。」

 七海、彼女とはもう6年ほど会っていない。俺から会いに言った事はあったが、七海は姿を現さなかった。

 ……本当に何を考えてるんだ、アイツは。訳の分からない事ばっかり言って、アイツは何故か俺に会おうとしない。

 そんなこともあって、俺は彼女と関わることを止めて、今までの事は全て忘れようとしてきた。

 しかし、今まで頭の奥深くに閉まってあった思い出の数々が溢れ出てきて、俺は彼女への愛おしさが押さえきれない。

「七海、どうして………?」

「一つ言っておくと、彼女は君が嫌いで距離を置いている訳ではない。話すことは出来ないがどうにも複雑な理由があるんだ。それだけは分かってあげてくれ。」

 ミミがそう弁明し、この話は一旦切り上げる。俺はまだ府に落ちてないが、話を進めるためにここは我慢をする。

「……それで何の話をしてたんだっけか?」

「ああ、所で何で君はエドを知っていたんだい?その理由が聞きたい。」

「そうか、その話か。」

 はたしてこの質問に馬鹿正直に答えていいのか?ここはゲームの世界である。それをここの住人に明かしてしまったら、何か深刻なバグでも起こってしまうんじゃないか?

「……悪いがその理由は話せない。お前も何故俺を知っていたか話せないみたいだからな。」

「そうだね、それを話すと色々と問題になる。君もまたそういうことだろう?」

「ああ、だからこの話は無しだ。」

「そうだな。」

 こうして話合いは終結する。お互い話す事はもう話きった。そしてカナとハナも俺達の話に飽き飽きしている様子だ。もうここでお開きとしよう。

「さあ、最後にお互いの健闘を称えあって酒を交わそうではないか。……まあ、私はお酒飲めないけど。」

「え、酒飲めないの?お前歳はいくつなの?」

「そうあっさり女性に年を聞くものじゃないぞ。それはそうと私は18だ。」

「まさかの同い年!?」

 ミミのまさかの年齢公表に俺は驚きを隠せない。なんと同い年とは思わなかった。この世界で出会った人達は全員俺より年上だったということもあり、俺はミミに対して謎の親近感が沸いた。

「所でハナはいくつ?」

「私は16です。」

「マジか!」

 謎にテンションが上がる。実を言うと俺は年上より年下のほうが好きだ。

「だからお酒でなくコーラでいいかな?カナさんはお酒飲みたいかもだけど。」

「ううん、大丈夫。それに私だけお酒っていうのも何か嫌だし。」

「ありがとうカナさん。じゃあ宴会を始めようか。」

 そして笑い合いながら俺達は宴会を楽しんだ。

「楽しいねっ、チロ♪」

「…そうだね。」


 その時、俺は白雪七海の事を思い出した。

 カナの笑顔、そして雰囲気はとても白雪七海に似ている。俺は恐らく七海の面影をカナから感じていたのだろう。

 だが俺はどっちを愛しているんだ?カナの笑顔は白雪七海と同じだ。だがどちらを俺はより愛しているんだろうか。

 ……分からない。


 愛というのは俺には重すぎる。




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