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第五章 キングダムインベードミッション

三四半期後の君へ

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「おお、帰ってきたか。随分と長いトイレだったんとちゃうんか?」

 長い長い時間旅行から帰って来た俺達を迎えてくれたニシ。

 まるで三四半期近く感じられた異時間転移からの帰還は、しばらく帰ってなかった実家に久しぶりに帰って来たかのような懐かしさがあるな。

「そちらの用事は済んだのか、七海」

「はい。お気遣いありがとうございます、エドさん」

 丁重に深々とお辞儀をする七海。その訳を分かっておらず首を傾げるニシとレイを差し置いて、エドが立ち上がり言った。

「それでは、王国侵入捜査作戦を開始する」

「ついにですね。エドさん」

 ああ、とエドは短く返す。何度も世界をやり直しているエドにとっては、今回は成功の目が何とか見えた千載一遇の回であろう。

 彼女の静寂の中に、何処か期待感のようなものが潜んでいる気がした。

「では、行こうか。皆、気を引き締めていけよ?」

 しかしそれを悟らせない冷静沈着な声でエドはそう言った。

 エドの作戦決行の宣言に対して全員が首肯して、立ち上がる。

 ただならぬ緊張感が辺りに広がっているのを犇々と感じつつ、俺達は王城へ向かった。




 ※





 ~チームミミ~

 チームミミはミミ、レイ、チロの三人で王城へと向かっていた。記憶を引き継ぐ能力を持つミミがリーダーになり、もう一人の能力者チロがこの作戦におけるメインウェポン、主戦力であり、そしてレイがそのトリガーとなっている。非常にバランスの取れたチームだ。

 チロの能力は大雑把に説明すれば何かを対価に捧げることでその対価に応じた願いを叶えるという能力なのだが、レイはチロの思い人であり(本人は否定しているが)、彼女を守るために戦うのであればチロは高いポテンシャルを発揮することが出来る。

 そして過去の記憶を引き継ぐミミは王城の地理や敵の情報を熟知している。

 その為、戦闘力的にも情報的にも申し分の無い鉄壁の布陣であると言えるだろう。



 ~チームナオ~

 チームナオはミミと同様、記憶を引き継ぐ能力を持つナオと、ニシの西の国代表の二人と白雪七海。超能力者二人と一般関西人というチームミミと似たような編成だが、チームミミと違って圧倒的なメインウェポンが存在しない。

 強いて言えば戦闘要因は人の心理を盗み取る他、憑依能力を持つ白雪七海であるが、七海自体にそこまでの戦闘能力は無いためチームナオのメインの戦い方はチーム戦となる。

 同じ国の代表同士であるナオとニシのチームワークは抜群で、七海も能力を使いサポート役に回る。チームミミとはまた違った協力な布陣である。



 ~チームエド~

 チームエドのメンバーはただ一人、エドのみである。文字通りの個人軍、否、最早チームでもない。

 エドに関しては言わずもがな、圧倒的な戦闘力、他の追随を許さない世界最強である。エド一人いるだけで他のチームにも劣らない、むしろ一番強い可能性すらある。

 エドに心配することは何一つ無いであろう。





 ……そして王国軍、近衛兵。

 近衛兵には6人の兵長がいる。各々がエド、ミミ、ナオ、そしてチロや七海の様に能力を持っている。

 支配、反逆、法例、始祖、孤高、不可侵。近衛兵長それぞれが持つ能力の通称である。

 この6人に、最強のエドさえも幾度と苦戦を強いられてきた。

 今回も、エド達に対して圧倒的な壁として立ち塞がる……




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