コイシイヒト

山本未来

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出逢った意味、、

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柳井君から東京に行く話しを聞いてから

あっと言う間に時は流れた


電話番号を教えてもらっていたものの

かける勇気が出なくて


だけど想いはどんどん募っていって

電話が鳴る度に


もしかして柳井君かもって思ったり


何度も受話器を握りしめては

柳井君の電話番号の途中まで押して

やっぱりかける事出来なくて切ったり

そんな事を繰り返していた



『電話かけるだけで

こんなにも勇気がいるんだ、、

せめて少しだけでも声が聞けたら

少しは心が軽くなるのかな、、

柳井君元気にしていたらいいけどな、、』


夜になるといつもそんな事を考えて

切ない気持ちになっていた



そんな頃


柳井君から電話がかかって来た



「白石!久しぶり

前に言ってた東京に行く話し

来月に決まったから、、」



柳井君は落ち着いた声でそう言った



「え、、

来月、東京に行ってしまうの、、

思っていたより早やかったね、、」


あれから半年が経っていたけれど

私にはその半年があっと言う間だったから


来月と聞いてとてもショックだった


言葉を失っている私に柳井君は言った


「そうだな、、

でも決めた事は早く実行しないと

歳ばかりとっていくし、、

東京で住むアパートも一応決まったし、、

後は頑張るしかないよな、、

白石も来年仕事辞めた後

いい所に就職できたらいいのにな、、」



「そうだね!

決めた事だもんね、、

柳井君が東京に行ってしまうのは

寂しいけど応援してるね!

私も来年は新しい環境で頑張らないとね!」



「東京に行って落ち着いたら

また連絡するし、、」



「うん!待ってるね

柳井君は東京で頑張るから

私も負けないように頑張るね!」



柳井君の声を久しぶりに聞けて

話せて私はとても嬉しかった


だけど、、



応援するって言ったけれど

元気に振る舞ったけれど



寂しかった、、



もしかして東京に行くの

諦めるんじゃないかと

少しだけ期待していたから、、




だけどやっぱり本当に考えた上の

決断だったんだ、、


気持ちは変わらなかったんだ、、


来月には東京に行ってしまうんだ、、



東京に行ったらもう会えない、、



柳井君とはずっとずっと

一緒に居れる気がしていたのに、、



たった2年半でサヨナラなんて

思いも寄らなかった、、


大切な人

好きな人

ずっと側に居て欲しい人



そんな人は何故かいつも遠くに行ってしまう、、



出逢った時は別れが来る事なんて

考えもしないのに、、


せっかく出逢ったのに


別れの日はいつも突然やって来る、、



気持ちを伝えられなくても

友達としてでも

それが叶わないのなら


知り合いとしてでもいいから

側にいて欲しかった


そう願っても


大切な人に限って

私の側から居なくなる、、



側に居て欲しい

たったそれだけの願いなのに


いつも叶わない、、



『どうしてなんだろう、、

どうして大切な人は居なくなるの?

せっかく出逢ったのに、、

せっかく好きになったのに、、』



柳井君との別れの日は

刻一刻と迫って行った、、


私の想いを届ける事も出来ないまま


急ぎ足で逃げるように毎日が過ぎて行った、、


柳井君と出逢った意味も分からないまま


日にちばかりが過ぎて行った、、



秋から冬に向かう少し肌寒い季節の中で

寂しい別れは近づいて行った、、



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