誰にも言えない初恋

山本未来

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加奈子の夏

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慌ただしく流れて行く毎日


だけど、、


どんなに忙しい毎日でも


私は君の事忘れる事はない、、



君がいてくるだけで


私は生きている意味を感じ


明日への生きていく力になる


君に会えなくて


寂しくて涙を沢山流す日も


なぜだか君が側にいてくれて


いる気がして、、


それが例えば錯覚だとしても


優しい気持ちにさせてくれる


君の面影は私にとっては


なくてはならない大切なもの


君の笑顔、君のはにかんだ顔


そして大好きな声、、


苦しいくらい愛しいから、、


だからずっとずっと想い続けると


決めた、、




春が来て夏が始まる頃

ふと、新聞に目をやると

夏の全国高校野球大会の予選の

組み合わせが掲載されていた


『あ~もうこんな時期なんだ~

早いな~、、』


私はその新聞の組み合わせの中から

翔くんの高校の名前を探した


『あっ!あった~対戦校はあまり

聞いた事のない高校だな~

弱いチームだったらいいのに、、』


私は翔くんの試合の日と開始時間

開催場所を手帳に書くと


『どうか翔くんの高校が勝ちますように、、』


と、そっと心でつぶやき新聞を閉じて

仕事に行く準備をした


いつもと同じ時間に玄関を出て

いても通り自転車に乗った


いつも翔くんの家の前を通って

自転車がないか確認する


『翔くんの自転車ないな~

今日もちゃんと学校行ってるな、、

前にこの場所でバッタリ会った時

凄く嬉しかったな~、、

偶然だったのかもしれないけど

何度か同じ様な事があると

もしかして待っててくれたの~?!

って思ってしまう、、

どちらにしても会えるだけで

嬉しいからいいんだけど、、』


私はそんな事を考えながら自転車を

マイペースで漕いだ


クリスマスの日、翔くんが帰って

来そうな時間に何度も外を覗いたこと


もし会えたらケーキとお菓子と

そしてとっても寒い日だったから

カイロで少しでも温かくなって

欲しくて用意していた事、、



そして願い叶って翔くんがタイミングよく

帰って来た事、、


『愛の力って凄い~!!

不思議な事って起こるんだ~』


あの時は本当にビックリした、、


私の作ったケーキ食べてもらえた事

クリスマスに渡せた事、、

それが本当に嬉しかった


本当にロマンチックな夜だった、、



毎日、毎日翔くんの事ばかり、、

翔くんの事ばかり考えている、、



野球の地方大会が始まり

翔くんの試合がある日は

ネットで勝敗を確認していた


一回戦二回戦は高得点で勝利!!

そして三回戦は、ちょうど土曜日

仕事も休みで開始時間もチェック

していたので何回かネットで確認

そして結果は負け、、


『あ~、、残念だな~これで翔くんの

最後の試合、甲子園の夢も

終わっちゃった、、

なんか切ないな~』


私はまるで自分の事のように

甲子園への夢果たせなかったのが

悲しくて、そして小さい頃から

野球を続けていた翔くんの姿が

頭に駆け巡った、、


辛い事沢山あったはずなのに

何もないように頑張っていた姿


私だったら母親があんなに大変で

そして亡くなったらもう立ち直る

事出来ない位落ち込んでいたと思う


それも高1で、、


そんな事を考えていると涙が

頬に流れ落ちた、、



そして翔くんが帰って来そうな

時間に買い物に行きお菓子と

ジュースを買った


『会えるかどうかは分からない

でも会いたい、、会って一言

良く頑張ったねって言ってあげたい、、』


公園で時間を潰してキョロキョロ

して待つことにした


そしてとてもいいタイミングで

翔くんが自転車で現れた!!



私は大きな声で呼び止めると

走って翔くんのいる方へ向かった



「翔くん!!お帰り、、

今日の試合残念だったね~

でも、今まで本当に良く頑張ったね!

甲子園は行けなかったけど

本当に本当に頑張ったと思うよ、、

これご褒美!!」


私は息を切らしながら

ドキドキしながら翔くんに

スーパーの袋を渡した


翔くんはビックリした顔をしたかと

思ったら最高に嬉しそうな顔で

私に笑顔を向けてくれた


「あ、ありがとうございます!!

いつもありがとうございます!

ぼ、僕、凄く嬉しいです!」


翔くんはスーパーの袋を

受け取った


私達はしばらく見つめ合った


スポーツ刈りが似合ってて

とても爽やかでそして日に焼けて

真っ黒で、、笑った顔が眩しくて、、



夕方で人通りも多い時間なのに

私達2人はまるで違う世界にいて

たった2人でいるようにお花畑に

いるような、夢の世界にいるような

不思議な気持ちで見つめあった


野球の道具や、とても大きなバッグ

そんな重そうな荷物を私が

持ってあげたい位、私は翔くんの

為だったら何でも出来る

そう思った、、


愛しい、、


翔くんが愛しい、、


私は時間を忘れる程、翔くんを

じっとじっと見つめた、、

ずっとずっと見つめた、、







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