空想未来戦記 【ジルコン】

蜜柑ブタ

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SS7  初陣、そして仲間

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  敏雄と幸香が、過酷な運命に巻き込まれ話をしたその日。

 「なんで…、コイツが?」
  敏雄は、だだ広い実験施設の中で、クリエイターそっくりのシズという男と二人きりにされた。
 『簡単な話だ。そこにいるのは、君の分身のようなモノなんだよ。』
 「はあ!?」
  高い壁にある観察場らしき場所から分厚いガラス越しにこちらを見ている者達が、マイクからそう言った。
 『信じられんことだろうが、そこにいるNUMBER01『シズ』と名乗ったモノは、君のジルコンとして外殻であり、武器が自我を持ち、自立しているモノなんだ。彼無しに、君は新型ジルコンとして活動はできない。』
 「つ、つまり…。」
 『察しが良いとは聞いたが、それなら話は早い。彼と合体し、これから出陣してもらいたい。』
 「できるかーーー!」
  敏雄が叫ぶ。
  そりゃ、アンバーを創ったとされる悪と認定される人物そっくりの奴と合体しりだなんて言われて、喜ぶ馬鹿はいないだろう。
 『…やらなければ、君の彼女の命は…。』
 「てめぇら……!」
  幸香の命を盾にされ、従わざるおえなくなる。
  敏雄がジロッと横にいるシズを見ると、シズは、ずっと敏雄を見ていたのか首と顔を敏雄に向けていた。
 「……で? どうしたらいいんだ?」
 『ここからが問題なんだ。我々もまだ具体的にどうやって君がジルコンとして活動できるようになるか分かっていない。いわば、ぶっつけ本番だ。』
 「おいおい…。」
 『まあ、やれるだけことはやってくれ。我々は、それを観測し、他の新型ジルコンの参考にするから。』
 「そんなこと言われても…。」
  敏雄は、困ってしまった。
  こういう時…、特撮とかのヒーローとかどうしている?
  変身アイテムのような物は無い。
  胸部に、ジルコンの核と同じ石が埋め込まれた状態だが、それを触っても何の反応も無し。
 「念じるとか?」
  敏雄は、目を閉じ、念じてみた。
  新型ジルコンの形になるように。
 「……ん?」
  念じて1秒もかかってないだろうか、何か感じて目を開けたときに見たのは、シズが触手のようにほぐれ、敏雄を包み込む瞬間だった。
 「う、うわあああああああああ!」
  たまらず悲鳴を上げたが、あっという間に包み込まれ、目の前が真っ暗に。
  そして、急に視界が明るくなり、あらゆるものが鮮明に見えるようになった。
  身長も高くなり、全身が暖かく、力がみなぎってくるようだった。
 『ほう…。うまくいったようだね。何をしたのかな?』

 『……ね、念じただけだ。』

  マイク越しの声に、敏雄は戸惑いながらそう答えつつ、自分の手を見た。そこにあるのは、人間の手ではない。ジルコンの装甲とゴムっぽい質感の黒と銀色に包まれた手があった。
 『合体に成功して早々だが…、初陣だ。そのままカタパルトから出たまえ。』
 『カタパルト? ん? あそこか? ん…?』
  見えない別の思考が流れてくるような感覚があり、敏雄はまさか…っと思った。
  シズがいるのだ。合体するということは、つまりそういうことなのだ。
 『…気色わりぃ。』
 『早く行きたまえ! こうしている間にも…。』
 『分かってる! 行くぞ!』
  敏雄は、カタパルトに急行し、シズに導かれるまま機器に足を引っかけて、急発進した。
 『うおおおおおお!?』
  凄まじ速度で外に放り出されたが、背中からリングが現れ、宙に浮いた。
 『くっそ…。シズの野郎に全部任せっきりかよ!』
  それらの細かい動作をサポートされているのを感じ、敏雄は忌々しく思いながら現場に飛んでいった。
  視界と脳内に映し出される映像とデータなどが、どこにアンバーがいるのかを敏雄に教える。一瞬慣れない感覚に戸惑うが、じきに慣れてきた。
  現場に来てみると、住宅街に現れた10メートル級のアンバーが、家を押しつぶすように移動していた。
  逃げ惑う人々を追いかけている。
 『やらせるかーーーー!』
  敏雄は、宙から落下するように片足で蹴りを上からお見舞いした。
  柔らかい弾力を感じるが、ズブズブと足がジルコンの肉鎧(にくよろい)を突き破っていくのも感じた。
  敏雄がその感触で、戦う力を実感した時、アンバーが下の方から引っこ抜いた電柱を肉で絡み取って、それで敏雄を殴った。
 『ガッ!?』
  戦いに関してはド素人の敏雄は対応できず吹っ飛ばされ、倒壊していない家に突っ込んだ。
 『くそ!』
  2階を破壊して、畳の上で体制を整えた敏雄は、破壊した家屋を放っておいて飛び、アンバーに殴りかかった。

  “右”

『へっ?』
  その声に反応して右を見ると、アンバーが掴んでいる大きな家屋の瓦礫が肉に掴まれ迫ってきた。
  咄嗟に両手をクロスさせてその攻撃を防ぎ、砕ける瓦礫の粉塵を気にせず闇雲に殴った。
  拳の攻撃のいくつかはアンバーに命中し、肉鎧(にくよろい)が削れていく。
  懸命に攻撃していて気がつかなかったが、半分以上の肉鎧が溶けて削れていた。

  “左”

 再び声が聞こえ、見ると、家電をミノムシのように纏った肉の触手が、ブンッ!と振られてきた。
 『はあ!』
  それを蹴りで破壊し、肉から落ちた家電が周りに落下する。
 『最後だーーーー!』
  敏雄は、目前まで迫ったアンバーの核めがけて猛攻撃をかけた。
  そして、核に手が到達した。

  “喰う”

 そこからは、本能なのかどうなのか分からないが、敏雄は知らず知らずその声の通りに核を引きずり出し、腹の口に押し込んで喰った。


 『…勝った……。勝ったーーー!』
  敏雄は、初陣からの勝利にガッツポーズを取った。

 『山内敏雄! 今すぐ帰還だ!』
 『やったーー! 父さん、母さん、俺やったよ!』
 『帰還せよ!』

  “帰還”

『って、うわっ!』
  喜びに我を忘れていた敏雄を、声がそう言い、動作を敏雄から奪って宙を飛び、研究所に帰還したのだった。





***





 帰ってきた敏雄はカタパルトから、研究所内に戻ると、そこで待っていたのは、なんとも言えない表情をした大人達だった。
 「まったく…、やってくれたね。」
 『なんだよ! 俺、勝ったじゃないかよ!』
 「これを見てもかい?」
  宙に浮いたディスプレイの映像を敏雄に見せた。

  そこには、敏雄が戦った時の映像を流すニュースと共に、その戦闘による被害の方が大きかったことをニュースキャスターが語っている映像だった。

 『あ……。』

  被害を受けたのは、家屋の破壊だけじゃなく、怪我人などを多数出していたのだ。
 「まあ…、今回は、初陣だったというのあるが…、君がアンバーを倒すことに熱中して周りが見えなかっただろうし、そんな余裕もなかったのだろうから、まだ言い訳は出来る。だがね……、これまでのジルコンの戦闘ではこうした戦闘による被害はほとんどなかったんだ。ずいぶんと問い合わせが来ているよ。こんなド素人丸出しの戦い方をしていては、いずれ死傷者が出るだろう。」
 『…うぅ…。』
  敏雄は、悔しさに呻いた。
 「そこでだ。君には、戦いつつも、戦い方の訓練を積んでもらう。プロの元軍人による訓練だ。相当キツイが君のこれからのためだ。」
 『…俺のためってか…、《GAEA》のためだろ?』
 「逆らうなら…。」
 『わかてるよ! いいか? 幸香に手出したら、俺…。』
 「力を手にれたからといっていい気にならないことだ。」
  敏雄が必死に怒りを抑えながら威嚇するが、大人は冷静に流したのだった。
 「今回のことで、新型ジルコンの貴重なデータも取れた。ご苦労様。君が喰ったアンバーの核を《GAEA》の炉心に繋がっている輸送パイプに入れたまえ。」
 『……くそ!』
  敏雄は、悪態を吐きながら渋々、《GAEA》の端末に設置されている《GAEA》本体に繋がった輸送パイプに背中を預け、突き刺さった箇所から喰ったアンバーの核が体内から移動するのを感じながら、これからのことを少し考えたのだった。

  その後、変身を解きたいと念じると、身体を覆っていたジルコンの装甲とスーツ部分が触手のようになって外れ、シズの形になった。


  敏雄が少しふらつきそうになる足取りで通路を歩いていると。
 「だいじょうぶ?」
 「えっ?」
  可愛らしい女性の声が聞こえたの、そちらを見た。
  そして思わず、うわっと声を漏らしてしまった。
 「あっ、ご、ごめん…びっくりしたよね?」
  そこにいたのは、髪の先から、指の先まで、服以外が真っ白な異様な女性がいた。顔の造形は可愛らしいが、その白さがあまりにも…。
 「君…、もしかして、トシオくん?」
 「えっ…あ、はい…。」
 「やっぱり! 私、名前、ユイリン! 君と同じ新型ジルコンなの!」
 「ええっ!?」
 「初めまして、これから仲間だね。よろしく!」
  そう言って笑顔で差し出された白い手。
  敏雄は、戸惑いながらその手を握って握手したのだった。

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