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旅に出ます
聞こえてません、知りません
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「はあ。風除けもあるし、テントがなくても寝袋だけでいけそうね。しかし、なんだろこの建物。石造りの礼拝堂?なんだろ民家にしては立派よね」
「ガウガウ(んー、なんだろうな)」
扉が壊れてぽっかりと開いた建物に屋根はなく、広さはケイレブがもう1匹増えても入れそうな程。床も壁も石造りだ。石の所々に何か模様が彫られているが、風と雨に晒されて原型を留めていない。
ひとまず周囲安全を確認してから、魔獣避けの魔道具を起動させ、光源をつけて汗を拭いて着替えた。
野営の時に使っている光源は、私が作った魔道具:石油ストーブもどきちゃんだ。あの白い筒状のストーブを模したものを作った。焚き火兼コンロの用途を一つにしようと考えた結果の作品だ。大きさは実物より二回り小さい。だが火力調整ができるため熱源としての役割は十分なのだ。
早速ストーブの上に水を入れたケトルをおいてお湯を沸かす。シュッシュッと音がで始めたら持ってきたティーセットを使って適当にお茶を淹れる。適当でもいい塩梅に作れるのがこの私。さすが私。
夕飯は何を作ろうか。やっぱりあったかいスープかなぁと考えながら私は後ろにいるモフモフを背もたれにし、温かいお茶を淹れたコップを手に持った。
「ずるるる」
「ガウ…(啜るなよ…)」
「いいじゃん。誰も見てないって」
『見てますよ』
「ガーウッ!…?(ほら見てるってよ!…?)」
「?」
言葉を発したケイレブも、ケイレブの前の言葉を聞いた私もお互いに見つめ合った。お互いに目が点である。そして目で〈気のせいだよね〉と語り合ってから、何事もなかったように私はお茶を飲み、ケイレブは伏せの状態で寝転んだ。
『ねぇ。聞こえてますよね?』
何か聞こえてくるが、私達はガン無視だ。いやコレは関わってはいけない案件に違いない。双子だからか考えている事を口に出さずとも通じる私達は目も合わさずに声の主を無視し続けた。
「ずるるるる」
『レディ。美味しそうに飲まれますね。私もお茶が大好きなんです。是非ご相伴に預かりたいのですが…』
「あー、空が綺麗ね。お星様が見えるわ」
「ワオン(おー、いい夜空だなぁ)」
『あ、あの。聞こえてますよね?』
「あー、お腹すいたね。何食べる?」
「ガウ(肉)」
『はい!私は野菜がいいです!』
「肉ね。じゃ、肉ゴロゴロシチューだね」
「ガーウッ(分厚めで頼む)」
『いいですね!シチュー!ああ、涎が出てきました』
私達の会話に加わってくる声の主を無視しつつ、私は夕飯を作り始めた。
作ってる間も『包丁捌きが見事ですね』とか『ああ、貴方のようにお美しいお方自ら作ってくださる料理はどんな味でも美味しく感じてしまう事でしょう』とか『美しい人。貴方の真っ赤な瞳は輝く火魔石のようです。ああ、あんな物とは比べ物にならないくらい真っ赤で本当に美しい』とか…。
右から左からと声が聞こえてくる位置が変わるため、話してる奴は私の周りをウロウロチョロチョロしているようだ。だが幸いな事に姿は見えない。声だけなら周りをウヨウヨされてもあまり気にならない。私はガン無視を決め込み鍋いっぱいのシチューを作り上げた。
「ケイレブ。ちょっと熱いから気をつけてね」
「ガーウッ(俺熱いの大丈夫だってば)」
「いやー、油断すると火傷するって」
『そうですよ!油断は禁物です』
「いただきまーす」
「ガウガウ(いただきます)」
『え?あれ?私のは?あの、美しい方???』
声を無視して私はスプーンを使って黙々と深皿に入ったシチューを食べる。ケイレブは机がないから床にお皿を置いて口を突っ込んで食べていた。
「あったまるー」
『ねぇ!あの!私にも…』
「ガーウッ(おかわり)」
「はいよー」
『あの…私にも…』
2人でガン無視を決め込んでいると、だんだんと声の主はしょぼくれ始めた。そして建物の端っこでブツブツと呟き始めた。
ボソボソと呟きながら何か言っているナニカ。正直ご飯を食べて満腹満腹、さて寝よーっというタイミングまで続けば徐々に鬱陶しくなってくる。
私はケイレブの耳に口を寄せた。
「ねぇ、反応した方がいい?」
小声で話しかけてみればケイレブは言葉には出さず、うーんっと唸ると伏せていた体を起こしてお座りになった。そして何かに気がついたような顔になると、ゆっくり四つ足で立ち上がり床をクンクンと嗅ぎ回り始めた。
「ちょっと、何してんの」
私が小声で呼びかけてもケイレブは何かを探すようにフンフンと嗅いでいる。そして建物のちょうど真ん中辺りを嗅いだケイレブはすっと頭を上げた。
「ガウガウ(ここ、なんか匂う)」
「え?え?ここ?」
私はコソコソしながらケイレブに近寄ると、彼が右前足でツンツン突いている石を観察した。
「うーん。確かに何か模様はあるけど……ん?」
ジロジロ観察して見れば少しだけ隙間があるようだ。しかも少しだけこの石は出っ張っている。私は石を掴んでゴリゴリと音を立てながら引っこ抜いた。女の私でも簡単に取り外せて拍子抜けしつつも、私とケイレブは目の前にある光景を見て何かを察した。
「あー」
「ガウー」
石一つ分だけ引っこ抜いてみれば、そこには空洞があった。
「ねぇ、嫌な予感しかない」
「クーン(俺も)」
私達は見てはいけないものを見てしまったようだ。何もなかったことにしたい。という事でお互いに目合わせて頷き合った私達は石を元の位置に戻そうと決めた。そして私が手に持っている石をはめ込もうとした瞬間。
『ダメですよ』
さっきまでの陽気な声とは裏腹に、背筋がスーッと凍りつくような声で話しかけられた。金縛りにあったかのように体が動かない。目だけ動かしてケイレブを見つめれば、彼も同じ状態のようだ。
『さあ、石を手から離しましょう。そして中を覗いて下さい。真っ暗なので何か光を入れてくださるといいですね。さあ』
石畳は色んな形のものが使われているが、私が引っこ抜いた石は長方形でよくあるレンガ一つ分くらいの大きさだ。顔を近づけて下を覗き込むことが可能な隙間であることは確かだ。
だが、床の石を引っこ抜いてその先に空間があるとは…。寝てる最中に地盤沈下したら一発アウトではないだろうか。
『さあさあ』
私が思考している間も声の主は急かすように声をかけてくる。
『さあ、早く』
しかし、早よ早よと急かされても体が動かないのである。故に私はやりたくないことをすることにした。
「体が動かないの。金縛りみたいになってて。だから手を動かして光源の魔道具を入れることもできないのです」
『ああ!やはり、やはり、やはり!!!私の声が聞こえるのですね!!!』
私が話しかければ、声の主(以後アイツとする)は歓喜に満ちた声で踊り出しそうなくらいテンションが爆上がりしはじめた。
『あああ、お待ちしておりました!!!!私の声が聞こえるお方を!!!100年間!!お待ちしておりました…!!!!!』
よほど嬉しいのかアイツはウッウッウッと泣き始めた。しかし金縛りが解かれる様子はない。私はとりあえず動かせる口を動かすことにした。
「あの、嬉しいのはわかったので…うごけるようにしていただけますか?」
『あああ、申し訳ございません』
アイツが謝ってきた直後に体に自由が戻ってきた。手のひらを開いて閉じてと動作確認をしてから、私は深いため息をついた。
「で、中を覗けばいいのですね」
『はい!はい!そうです!』
「ちなみにこの床…抜ける心配はありませんか?」
『大丈夫でございます。ささっ、中を見てください』
「…はあ、わかりました」
私は深い深い深いため息をついてから、腰につけているポーチからゴーグルを取り出し身につけた。モードを暗視に切り替えると、床に伏せて穴に顔をくっつけて中を覗き込んだ。
「あー」
『見えましたか?その、メガネで見えるのですか?』
「あー、はいはい、あー、はいはい」
『見えたのですね!あああ!嬉しい嬉しい』
アイツはまた涙を流し始めたようで、ウッウッウッと泣き始めた。
「どうしましょうね。取った方がいいですか?」
『もちろんですとも!お願いいたします』
「はい…」
中を覗けば深さは全くなかった。引っこ抜いたその場所だけ深さ30センチほどの空間があっただけで、石の大きさ分以外はみっちりと石が詰まっていた。
手を伸ばせばなんとか取り出すことは可能だ。私は穴から顔を離すと伏せた状態のまま右腕を中に突っ込んだ。そして目的のものを手に取るとズボッと腕を引っこ抜いた。
『あああああ!!!!』
アイツは私の手の中にある物を確認したのか、また叫びながら涙を流し始めたようだ。
「ガウ?(首飾りか?)」
私の手の中にある物を確認したケイレブはフンフンとそれを嗅ぎ始めた。
「多分そうね。何かの魔石が入った首飾りの飾り部分のようね。それにしても、かなり大きい魔石だわ。大きめな卵くらいあるなんて初めて見た。でも魔石の力はもう無いのかしら??光ってないし、色も真っ黒。それとも真っ黒な魔石?真っ黒なんて見たこと無いし、属性もわからない。あー、鎖部分は紐だったのかも。台座に使われている金属と魔石以外は朽ちたようね」
私の手のひらには首飾りのトップ部分のようなものがある。トップの台座は金のようだ。金は腐食しにくい。だから鎖は朽ちてもトップ部分は残ったようだ。
『はい。鎖は紐でした。貴方様はとても博識でいらっしゃる。ささ、それをこの光に近づけて下さいませ』
アイツは感心したような声を出すと、ストーブがある位置に移動したようだ。急かすように声をかけてくるアイツの言葉に今は従うしかない。正直大変嫌だ。
私はまた深くため息をつくと、立ち上がってストーブがある場所へ戻った。ケイレブは私の後を追いかけるようにやってくると、定位置にちょこんとお座りをした。
『ハアハア、やっと、やっとです』
私がストーブにトップを近づけると、アイツはとても興奮したような声を出した。
とてもとても嫌な予感しかない。
「ガウガウ(んー、なんだろうな)」
扉が壊れてぽっかりと開いた建物に屋根はなく、広さはケイレブがもう1匹増えても入れそうな程。床も壁も石造りだ。石の所々に何か模様が彫られているが、風と雨に晒されて原型を留めていない。
ひとまず周囲安全を確認してから、魔獣避けの魔道具を起動させ、光源をつけて汗を拭いて着替えた。
野営の時に使っている光源は、私が作った魔道具:石油ストーブもどきちゃんだ。あの白い筒状のストーブを模したものを作った。焚き火兼コンロの用途を一つにしようと考えた結果の作品だ。大きさは実物より二回り小さい。だが火力調整ができるため熱源としての役割は十分なのだ。
早速ストーブの上に水を入れたケトルをおいてお湯を沸かす。シュッシュッと音がで始めたら持ってきたティーセットを使って適当にお茶を淹れる。適当でもいい塩梅に作れるのがこの私。さすが私。
夕飯は何を作ろうか。やっぱりあったかいスープかなぁと考えながら私は後ろにいるモフモフを背もたれにし、温かいお茶を淹れたコップを手に持った。
「ずるるる」
「ガウ…(啜るなよ…)」
「いいじゃん。誰も見てないって」
『見てますよ』
「ガーウッ!…?(ほら見てるってよ!…?)」
「?」
言葉を発したケイレブも、ケイレブの前の言葉を聞いた私もお互いに見つめ合った。お互いに目が点である。そして目で〈気のせいだよね〉と語り合ってから、何事もなかったように私はお茶を飲み、ケイレブは伏せの状態で寝転んだ。
『ねぇ。聞こえてますよね?』
何か聞こえてくるが、私達はガン無視だ。いやコレは関わってはいけない案件に違いない。双子だからか考えている事を口に出さずとも通じる私達は目も合わさずに声の主を無視し続けた。
「ずるるるる」
『レディ。美味しそうに飲まれますね。私もお茶が大好きなんです。是非ご相伴に預かりたいのですが…』
「あー、空が綺麗ね。お星様が見えるわ」
「ワオン(おー、いい夜空だなぁ)」
『あ、あの。聞こえてますよね?』
「あー、お腹すいたね。何食べる?」
「ガウ(肉)」
『はい!私は野菜がいいです!』
「肉ね。じゃ、肉ゴロゴロシチューだね」
「ガーウッ(分厚めで頼む)」
『いいですね!シチュー!ああ、涎が出てきました』
私達の会話に加わってくる声の主を無視しつつ、私は夕飯を作り始めた。
作ってる間も『包丁捌きが見事ですね』とか『ああ、貴方のようにお美しいお方自ら作ってくださる料理はどんな味でも美味しく感じてしまう事でしょう』とか『美しい人。貴方の真っ赤な瞳は輝く火魔石のようです。ああ、あんな物とは比べ物にならないくらい真っ赤で本当に美しい』とか…。
右から左からと声が聞こえてくる位置が変わるため、話してる奴は私の周りをウロウロチョロチョロしているようだ。だが幸いな事に姿は見えない。声だけなら周りをウヨウヨされてもあまり気にならない。私はガン無視を決め込み鍋いっぱいのシチューを作り上げた。
「ケイレブ。ちょっと熱いから気をつけてね」
「ガーウッ(俺熱いの大丈夫だってば)」
「いやー、油断すると火傷するって」
『そうですよ!油断は禁物です』
「いただきまーす」
「ガウガウ(いただきます)」
『え?あれ?私のは?あの、美しい方???』
声を無視して私はスプーンを使って黙々と深皿に入ったシチューを食べる。ケイレブは机がないから床にお皿を置いて口を突っ込んで食べていた。
「あったまるー」
『ねぇ!あの!私にも…』
「ガーウッ(おかわり)」
「はいよー」
『あの…私にも…』
2人でガン無視を決め込んでいると、だんだんと声の主はしょぼくれ始めた。そして建物の端っこでブツブツと呟き始めた。
ボソボソと呟きながら何か言っているナニカ。正直ご飯を食べて満腹満腹、さて寝よーっというタイミングまで続けば徐々に鬱陶しくなってくる。
私はケイレブの耳に口を寄せた。
「ねぇ、反応した方がいい?」
小声で話しかけてみればケイレブは言葉には出さず、うーんっと唸ると伏せていた体を起こしてお座りになった。そして何かに気がついたような顔になると、ゆっくり四つ足で立ち上がり床をクンクンと嗅ぎ回り始めた。
「ちょっと、何してんの」
私が小声で呼びかけてもケイレブは何かを探すようにフンフンと嗅いでいる。そして建物のちょうど真ん中辺りを嗅いだケイレブはすっと頭を上げた。
「ガウガウ(ここ、なんか匂う)」
「え?え?ここ?」
私はコソコソしながらケイレブに近寄ると、彼が右前足でツンツン突いている石を観察した。
「うーん。確かに何か模様はあるけど……ん?」
ジロジロ観察して見れば少しだけ隙間があるようだ。しかも少しだけこの石は出っ張っている。私は石を掴んでゴリゴリと音を立てながら引っこ抜いた。女の私でも簡単に取り外せて拍子抜けしつつも、私とケイレブは目の前にある光景を見て何かを察した。
「あー」
「ガウー」
石一つ分だけ引っこ抜いてみれば、そこには空洞があった。
「ねぇ、嫌な予感しかない」
「クーン(俺も)」
私達は見てはいけないものを見てしまったようだ。何もなかったことにしたい。という事でお互いに目合わせて頷き合った私達は石を元の位置に戻そうと決めた。そして私が手に持っている石をはめ込もうとした瞬間。
『ダメですよ』
さっきまでの陽気な声とは裏腹に、背筋がスーッと凍りつくような声で話しかけられた。金縛りにあったかのように体が動かない。目だけ動かしてケイレブを見つめれば、彼も同じ状態のようだ。
『さあ、石を手から離しましょう。そして中を覗いて下さい。真っ暗なので何か光を入れてくださるといいですね。さあ』
石畳は色んな形のものが使われているが、私が引っこ抜いた石は長方形でよくあるレンガ一つ分くらいの大きさだ。顔を近づけて下を覗き込むことが可能な隙間であることは確かだ。
だが、床の石を引っこ抜いてその先に空間があるとは…。寝てる最中に地盤沈下したら一発アウトではないだろうか。
『さあさあ』
私が思考している間も声の主は急かすように声をかけてくる。
『さあ、早く』
しかし、早よ早よと急かされても体が動かないのである。故に私はやりたくないことをすることにした。
「体が動かないの。金縛りみたいになってて。だから手を動かして光源の魔道具を入れることもできないのです」
『ああ!やはり、やはり、やはり!!!私の声が聞こえるのですね!!!』
私が話しかければ、声の主(以後アイツとする)は歓喜に満ちた声で踊り出しそうなくらいテンションが爆上がりしはじめた。
『あああ、お待ちしておりました!!!!私の声が聞こえるお方を!!!100年間!!お待ちしておりました…!!!!!』
よほど嬉しいのかアイツはウッウッウッと泣き始めた。しかし金縛りが解かれる様子はない。私はとりあえず動かせる口を動かすことにした。
「あの、嬉しいのはわかったので…うごけるようにしていただけますか?」
『あああ、申し訳ございません』
アイツが謝ってきた直後に体に自由が戻ってきた。手のひらを開いて閉じてと動作確認をしてから、私は深いため息をついた。
「で、中を覗けばいいのですね」
『はい!はい!そうです!』
「ちなみにこの床…抜ける心配はありませんか?」
『大丈夫でございます。ささっ、中を見てください』
「…はあ、わかりました」
私は深い深い深いため息をついてから、腰につけているポーチからゴーグルを取り出し身につけた。モードを暗視に切り替えると、床に伏せて穴に顔をくっつけて中を覗き込んだ。
「あー」
『見えましたか?その、メガネで見えるのですか?』
「あー、はいはい、あー、はいはい」
『見えたのですね!あああ!嬉しい嬉しい』
アイツはまた涙を流し始めたようで、ウッウッウッと泣き始めた。
「どうしましょうね。取った方がいいですか?」
『もちろんですとも!お願いいたします』
「はい…」
中を覗けば深さは全くなかった。引っこ抜いたその場所だけ深さ30センチほどの空間があっただけで、石の大きさ分以外はみっちりと石が詰まっていた。
手を伸ばせばなんとか取り出すことは可能だ。私は穴から顔を離すと伏せた状態のまま右腕を中に突っ込んだ。そして目的のものを手に取るとズボッと腕を引っこ抜いた。
『あああああ!!!!』
アイツは私の手の中にある物を確認したのか、また叫びながら涙を流し始めたようだ。
「ガウ?(首飾りか?)」
私の手の中にある物を確認したケイレブはフンフンとそれを嗅ぎ始めた。
「多分そうね。何かの魔石が入った首飾りの飾り部分のようね。それにしても、かなり大きい魔石だわ。大きめな卵くらいあるなんて初めて見た。でも魔石の力はもう無いのかしら??光ってないし、色も真っ黒。それとも真っ黒な魔石?真っ黒なんて見たこと無いし、属性もわからない。あー、鎖部分は紐だったのかも。台座に使われている金属と魔石以外は朽ちたようね」
私の手のひらには首飾りのトップ部分のようなものがある。トップの台座は金のようだ。金は腐食しにくい。だから鎖は朽ちてもトップ部分は残ったようだ。
『はい。鎖は紐でした。貴方様はとても博識でいらっしゃる。ささ、それをこの光に近づけて下さいませ』
アイツは感心したような声を出すと、ストーブがある位置に移動したようだ。急かすように声をかけてくるアイツの言葉に今は従うしかない。正直大変嫌だ。
私はまた深くため息をつくと、立ち上がってストーブがある場所へ戻った。ケイレブは私の後を追いかけるようにやってくると、定位置にちょこんとお座りをした。
『ハアハア、やっと、やっとです』
私がストーブにトップを近づけると、アイツはとても興奮したような声を出した。
とてもとても嫌な予感しかない。
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