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これにてごめん
だからこの状況を説明して
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「で?ベルナール。さっきの言葉は本当なの?」
『はい。私はご主人様に向かって嘘偽りは決して申し上げません』
私達は二階建ての大きな家に移動していた。この家はリビングが広く2人掛けソファーも向かい合うように2つある。話し合うにはちょうどいい場所だ。
ディーの荷物もあの袋以外は急いで持ち出す必要はないものらしく、彼は袋を持ってルンルンでこの家にやってきた。
そして、お茶とお菓子をローテーブルに置いて私は向かい側に座るベルナールに質問をしたところというわけだ。
私はムムッと眉間に皺を寄せて質問を続けた。
「でもね?伴侶って、異世界から来る人でしょう?私はこの世界に生まれた人間よ?」
私の質問はもっともであり、キャスリーンとケイレブはウンウンと頷いている。あの2人はベルナールの隣に座っており、いつも通りケイレブの膝上にキャスリーンが座っていた。
「普通はそうなんだろうけど、俺の伴侶はヴィーで間違いない」
私の隣で私に抱きついているディーはキッパリと言い張った。
「いや、その根拠はどこからきてるの?」
「え?いやだってさ」
『エイデン様。伴侶については守り手同士の口伝で伝えられているもの。一般的には知られておりません』
ディーの言葉に被せるようにベルナールが告げれば、ディーはポンっと手を叩いて納得をした顔になった。
「そうだった。待ち続けて待ち続けてずっと出会う日を考えたり、出会ったらどうするべきかを模擬的に想像していたら、ついうっかりそれが当たり前だと認識してたよ」
『左様でございましたか。では、残りの3人に伴侶についての口伝をお伝えいただけますか?』
「ああ、わかった」
ウンウンと頷いたディーは説明を始めた。
「まず、伴侶は異世界からやってくる。長年森を守った守り手のご褒美は伴侶である。これが一般的に知られている事だ」
「ええ、そうね」
隣で私がウンウンっと頷くのを、ディーは横目でそれを見ながら話を続けた。
「じゃあ、守り手はどうやって伴侶だと認識するのか。その方法はなんだと思う?」
ディーの質問に無知な3人はムーンッと考えると、何かを思いついたキャスリーンが1番に手を挙げた。
「そもそも、森の中に入って来れること自体が伴侶である証になるのではないか?」
キャスリーンはディーに敬語を使う気はないようで普段通りの口調になっている。ディーはそれを指摘することなく、うんっと同意の意味で頷いた。
「ああ、確かにそうだ。この森でウロウロしてる奴がいれば伴侶の可能性は高い。でも思い出してくれ。今回俺が寝てる間に森でウロウロしてた奴がいなかったか?」
ニヤッと笑ってディーがキャスリーンを見れば、彼女は確かにと言う顔になった。
「キャスリーンを初めて見た時。俺は、君が伴侶なのかと思った。それくらいびっくりしたけど、自分から守り手の証を見せてきた。もう、正直浮ついた気持ちがギューンッと下がって、あの時は死にたくなったなー」
「ああ。だからあんなに泣いてたのか」
「そう。だって森にいる女性ってなったらご褒美だって普通思うだろ?」
「ふむ」
2人のやりとりを眺めつつ考えていた私はディーの行動を思い起こし、気がついたことを手を挙げてから話をした。
「そういえば。ディーは私に何が描かれてるかって聞いてきたわよね?もしかして、このグルグルにしか見えない模様って、伴侶だと絵に見えるって事?」
「んー、おしい。半分正解」
よくできましたー!っとディーは私の頭を撫でてから説明を続けた。
「伴侶は長年森を守った守り手へのご褒美。森が選ぶ伴侶は別の世界から来る。守り手の証である模様が何を描かれているのか当てることができる。そしてその模様に描かれた何かは、守り手が何になれるかを示してる。守り手はその姿になるまで何が描かれているのかわからない。だが、伴侶はその姿を見ずとも証を見て言い当てる。これが残りの半分だな」
「どう言う事?」
はっきりしない言葉に私が首を傾げると、ディーはうーんっと考えてからソファーから立ち上がった。
「じゃあ、体の大きさは少し変えるけど…ここで変わるから見てて」
そういってディーはリビングのひらけた空間に立つと、ピカーと光を放ち始めた。
そして光が収まると、ケイレブが獣化したときより一回り小さめの灰色の狼が佇んでいた。見た目はケイレブと同じで牙が長い。この世界にいる狼とそっくりだった。
「守り手は証に描かれた姿になって魔獣と戦うんだ。理由は色々あるんだけど、簡単に言えばこの姿の方が戦いやすい相手がいるって感じかな」
「「「えええ!?」」」
ケイレブとは違ってディーの口は普段の声と言葉を発している。それにも驚きだが、守り手が獣化することを初めて知った私達3人はあんぐりと口を開けた。
「で、ヴィーは俺の変身する姿を当てた。見ての通り狼だ。ここで伴侶の可能性が高くなった。次に異世界から来たかどうか、っていう点だけどさ」
ディーはポカーンってしている3人を無視してまた光に包まれると人の姿に戻り、私の隣にやってくるとよいしょっと腰を下ろした。
「ヴィー。異世界の記憶、あるでしょ」
「うっ、そ、そ、それは…」
ディーの指摘に言葉を詰まらせる私の様子を見て、ケイレブはハッとした顔になった。
「だからか!いつもいつも突拍子のない案を出してくるし、妙にそれが上手くいくって確信してるし。魔道具だって作ってくるのが奇抜なのばっかりで…そうか。そうなんだな。もしかして、小さい時から図書館で本ばっかり読んでたのは心がすでに大人だったからなのか?ってなると、父上達のことを時々痛ましいものを見る目で見てたのも、あの様子がどういうものなのか知ってたんだな!」
幼い頃からの疑問が解消されたのか、ケイレブはなるほどなるほどと頷いて1人納得していた。逆にキャスリーンはまだ信じられないようで、びっくりした顔で固まっている。
私は2人に正直に話をすることにした。
「隠しててごめんね。でも、前世の記憶があるだなんて言っても信じてもらえないと思って。だから言えなかったの…」
前世の記憶があり、何歳まで生きたのか。そしてこの世界に生まれ記憶を取りもどしたきっかけは何だったのか。前世の知識で母国の異常性を理解し、貧困に危機感を感じ、その捩れを正そうと復興に励んだことなど…。
私が今までのことを話せば、ケイレブはより納得した顔になりキャスリーンは私の話に聞き入っていた。そして、彼女は私に向かって頭を深々と下げた。
「すまない。エヴィが国のためにそのように励んでいたとは、想像もしていなかった。普段の様子から蝶よ花よと育てられた公女なのだと…私以外の皇女のように育ったのだと。そう思っていた。思い込んでいた。とても失礼なことをした。本当にすまない」
「えええ。いいよいいよ。そんなこと謝らないでよ。私が母国を守ろうとした気持ちをキャスリーンは理解してくれた。だからそうやって謝ってくれたんでしょ?それを理解してくれただけでいいよ。ありがとう」
「これからは人の印象だけで全てを決めないように心がけるよ。それに、兄であるケイのことをどこか子供を扱うように接していた理由もわかった。時折見せる大人のような顔は昔の記憶のせいだったんだな」
キャスリーンは何かを思い出して頷くと、私の話を信じたようだ。
「ってことで、異世界から来る伴侶という条件もある意味当てはまってるんだ」
ディーは少しだけドヤ顔になりつつも、真剣な声で話を進めた。
「そして次に教えられてるのは伴侶自身についてだ。ここからがある意味大事なのかもしれない」
そういうと、彼は私の顎を軽く掴んで私の顔を振り向かせると、チュッと音を立てて唇に口付けをした。
「なあ、ヴィー。俺とのキス…どう?」
「ど、ど、ど、どうって…えっと」
突然の口付けに顔を真っ赤にしていると、ボディーガードキャスリーンが待ったをかけた。
「エイデン様。いや、エイデン。待ちたまえ。今、接吻をする必要はあったか?」
「あったよ!むしろ、ちゃんとわからせないとダメみたいだから…外野は少し黙ってて」
ディーが少し強い口調でそう告げると、キャスリーンは立ち上がってこちらにやってこようとした。だが、ケイレブが彼女の体をギュッと抱きしめて首を横に振る。それを見たキャスリーンは仕方なくあげた腰を下ろした。その様子から、彼女はこの状況を見守ることにしたようだ。
私はといえば、人前での口付けにアワアワとあわてていた。
「じゃあ、ヴィー。もう一回、しっかりするから。よく考えて答えて」
ディーはニヤッとした顔でそういうと、私の唇に唇を合わせてきた。
「んっ…んん」
今度はただのキスではない。ディーは私の口の中に舌を入れてくると、ねっとりと舌を絡め始めた。
「んっ……っ……やっ、で……はぁっ…」
やめてよっと口付けの合間に伝えようとするが、その音すら彼の口の中に吸われていく。
私はボーッとして体が熱くなるのを感じながら、この状況が終わるにはどうするのか、懸命に考えた。
(ああ、だめ。ディーのキス気持ちよすぎる。…絶対パンツ濡れてる…。もう、この人本当にこの前まで童貞だったの?んん、ほんと気持ちいい。やばい。こんなに甘いキス……ん?……)
ピチャピチャと音を立てながらディープな口付けをされている私は、ふと前世でのキスとの違いに気がついた。そして、あえてそれを味わうように舌を動かし返えすと、ディーは私が気がついたことがわかったようだ。
彼はチュッと名残惜しそうな音をたてて、唇を離と私を見つめてクスッと笑った。
「ヴィー。わかった?」
「はぁ…んっ、まって。……息をね……整えてから…」
「いいよ。ゆっくり整えて」
若干エロエロモードなのか、人前であるにも関わらずディーは肩で息をする私の耳元に誘惑するような声で囁いた。
「えっと、たぶん…。…伴侶の体液は甘い」
そんな彼を無視するように答えを出せば、ディーは私の首元から顔を離してパチパチと手を叩いた。
「正解!」
ディーはよくできましたーっと笑って私の頭を撫でた。そして撫でられながらふと観客に目線を向けると、顔を真っ赤にさせ両手で目を覆うキャスリーンが見えた。
ケイレブは母国で見慣れた光景だったからか平然としつつも、さりげなく抱きしめているキャスリーンの腰を撫でている。彼はエロエロモードがしたいようだ。
ベルナールは若いって素敵ですねーと言う顔で微笑んでいた。
ディーは名残惜しそうにペロリと自身の唇を舐めてから、伴侶についての詳しい説明を始めた。
「伴侶は蜜を固めたもの、つまり蜜飴だな。あとは液体しか受け付けないんだ。俺達が食べている普通の食事は食べることはできない。そして、食べられる蜜飴は自分で出せる。でもその蜜は守り手から与えられた体液がないと作り出せない。また守り手と伴侶はお互いの体液を甘く感じる。蜜飴については、ヴィーも巣篭もりの時に俺が試しに作らせたら作れただろ?」
「え?そうだっけ?」
記憶がないなーっと首を傾げると、ディーはクスクスと笑った。
「蜜が出せるよって話たら〈はちみつぅ〉とか言って手の中に蜜飴だしてさ。パクッと食べて〈あまああ〉って言いつつ寝てたよ」
「ええ、ほんと記憶ない…」
ブンブンッと音がなるくらい首を横に触っていると、ベルナールが話しかけてきた。
『今試しに作ってみてはどうですか?』
「あ、なるほど。えっと、手の中に出す感じなのかな?」
『ええ。そうです。どのような味のものにするのか、効果はどれほどのものなのか。そんなことも出来る範囲でなら指定できるそうですよ』
「え?そうなのか?それはお前の父親から聞いてないぞ」
ディーがびっくりしたような声で話せば、ベルナールは少しだけ寂しそうに、そして懐かしそうな声で話をした。
『母上が守り手の伴侶でしたからね。ここにいる誰よりも伴侶についてはわかっております。また、父上からは伴侶の詳細については決して誰にも言わないようにと。母上の命に関わる事だからと口酸っぱく言われていました。私も妹も母上について口を滑らせないよう、幼い頃は常にビクビクとしたものです』
「あー、なるほどな。じゃあ、他のことも知ってるよな?」
ディーの質問にベルナールは頷いた。
『守り手と伴侶は出会って1日以内に交わる必要がある。そうしなければ伴侶は儚くなる。理由としては守り手に出会うまでは森の加護を受け、守り手の体液がなくとも蜜が出せる。だが、その加護は守り手に出会えば消える。故にすぐに交わる必要がある』
「その通り!」
ディーはベルナールの解答に大袈裟に喜んで拍手をすると、まだ蜜を出せていない私をじっと見つめた。
「とりあえず、あんまり考えずにやってみたらどう?」
「う、うん。やってみるね」
目を閉じてこころの中で甘いものを念じてみた。
(甘いの甘いの。んー、甘いの。あ、そうだなー。蜜飴って言うならやっぱり飴かな。じゃあ昔よく食べてた梅干し味の飴。あれを久しぶりに食べたいかも。そうそう。あれ)
味を思い出すと口の中で涎がじんわりと広がる。この現象はなんていうのだっけ、なんて考え事をしながら頭の中で丸い飴を想像してみた。
すると、先ほどまでなかった感触が手のひらにある。ゆっくり目を開けて確認すれば、手のひらの上に見覚えがある真っ赤な塊があった。
「うわ、本当にできた!んんん、この味。なつかしー!」
パクッと口に含んで蜜飴を舐めれば、思い描いていた味と同じ味が口いっぱいに広がった。特にお腹が空いているわけではないが、少し満たされたような気がする。
『母上は飴の味にもこだわっていましたが、飴を食べてから何時間満腹でいられるのか。その点もこだわっていましたね。あとは、そうですね。時折父上が強請っていたのは《えっちな気分になる飴》だったでしょうか』
「ぶ!!なんつーもんをねだってるのよ!」
「「「《えっち》ってなんだ(よ)?」」」
意味がわかっている私がツッコミを入れるが、残りの3人は言葉の意味がわからないようで首を傾げている。私は静かに首を振ると不思議な顔3人組に語りかけた。
「覚えなくてよろしい」
最後にニコッと微笑めば、無知組は何かを察して気まずそうに頷いた。
『はい。私はご主人様に向かって嘘偽りは決して申し上げません』
私達は二階建ての大きな家に移動していた。この家はリビングが広く2人掛けソファーも向かい合うように2つある。話し合うにはちょうどいい場所だ。
ディーの荷物もあの袋以外は急いで持ち出す必要はないものらしく、彼は袋を持ってルンルンでこの家にやってきた。
そして、お茶とお菓子をローテーブルに置いて私は向かい側に座るベルナールに質問をしたところというわけだ。
私はムムッと眉間に皺を寄せて質問を続けた。
「でもね?伴侶って、異世界から来る人でしょう?私はこの世界に生まれた人間よ?」
私の質問はもっともであり、キャスリーンとケイレブはウンウンと頷いている。あの2人はベルナールの隣に座っており、いつも通りケイレブの膝上にキャスリーンが座っていた。
「普通はそうなんだろうけど、俺の伴侶はヴィーで間違いない」
私の隣で私に抱きついているディーはキッパリと言い張った。
「いや、その根拠はどこからきてるの?」
「え?いやだってさ」
『エイデン様。伴侶については守り手同士の口伝で伝えられているもの。一般的には知られておりません』
ディーの言葉に被せるようにベルナールが告げれば、ディーはポンっと手を叩いて納得をした顔になった。
「そうだった。待ち続けて待ち続けてずっと出会う日を考えたり、出会ったらどうするべきかを模擬的に想像していたら、ついうっかりそれが当たり前だと認識してたよ」
『左様でございましたか。では、残りの3人に伴侶についての口伝をお伝えいただけますか?』
「ああ、わかった」
ウンウンと頷いたディーは説明を始めた。
「まず、伴侶は異世界からやってくる。長年森を守った守り手のご褒美は伴侶である。これが一般的に知られている事だ」
「ええ、そうね」
隣で私がウンウンっと頷くのを、ディーは横目でそれを見ながら話を続けた。
「じゃあ、守り手はどうやって伴侶だと認識するのか。その方法はなんだと思う?」
ディーの質問に無知な3人はムーンッと考えると、何かを思いついたキャスリーンが1番に手を挙げた。
「そもそも、森の中に入って来れること自体が伴侶である証になるのではないか?」
キャスリーンはディーに敬語を使う気はないようで普段通りの口調になっている。ディーはそれを指摘することなく、うんっと同意の意味で頷いた。
「ああ、確かにそうだ。この森でウロウロしてる奴がいれば伴侶の可能性は高い。でも思い出してくれ。今回俺が寝てる間に森でウロウロしてた奴がいなかったか?」
ニヤッと笑ってディーがキャスリーンを見れば、彼女は確かにと言う顔になった。
「キャスリーンを初めて見た時。俺は、君が伴侶なのかと思った。それくらいびっくりしたけど、自分から守り手の証を見せてきた。もう、正直浮ついた気持ちがギューンッと下がって、あの時は死にたくなったなー」
「ああ。だからあんなに泣いてたのか」
「そう。だって森にいる女性ってなったらご褒美だって普通思うだろ?」
「ふむ」
2人のやりとりを眺めつつ考えていた私はディーの行動を思い起こし、気がついたことを手を挙げてから話をした。
「そういえば。ディーは私に何が描かれてるかって聞いてきたわよね?もしかして、このグルグルにしか見えない模様って、伴侶だと絵に見えるって事?」
「んー、おしい。半分正解」
よくできましたー!っとディーは私の頭を撫でてから説明を続けた。
「伴侶は長年森を守った守り手へのご褒美。森が選ぶ伴侶は別の世界から来る。守り手の証である模様が何を描かれているのか当てることができる。そしてその模様に描かれた何かは、守り手が何になれるかを示してる。守り手はその姿になるまで何が描かれているのかわからない。だが、伴侶はその姿を見ずとも証を見て言い当てる。これが残りの半分だな」
「どう言う事?」
はっきりしない言葉に私が首を傾げると、ディーはうーんっと考えてからソファーから立ち上がった。
「じゃあ、体の大きさは少し変えるけど…ここで変わるから見てて」
そういってディーはリビングのひらけた空間に立つと、ピカーと光を放ち始めた。
そして光が収まると、ケイレブが獣化したときより一回り小さめの灰色の狼が佇んでいた。見た目はケイレブと同じで牙が長い。この世界にいる狼とそっくりだった。
「守り手は証に描かれた姿になって魔獣と戦うんだ。理由は色々あるんだけど、簡単に言えばこの姿の方が戦いやすい相手がいるって感じかな」
「「「えええ!?」」」
ケイレブとは違ってディーの口は普段の声と言葉を発している。それにも驚きだが、守り手が獣化することを初めて知った私達3人はあんぐりと口を開けた。
「で、ヴィーは俺の変身する姿を当てた。見ての通り狼だ。ここで伴侶の可能性が高くなった。次に異世界から来たかどうか、っていう点だけどさ」
ディーはポカーンってしている3人を無視してまた光に包まれると人の姿に戻り、私の隣にやってくるとよいしょっと腰を下ろした。
「ヴィー。異世界の記憶、あるでしょ」
「うっ、そ、そ、それは…」
ディーの指摘に言葉を詰まらせる私の様子を見て、ケイレブはハッとした顔になった。
「だからか!いつもいつも突拍子のない案を出してくるし、妙にそれが上手くいくって確信してるし。魔道具だって作ってくるのが奇抜なのばっかりで…そうか。そうなんだな。もしかして、小さい時から図書館で本ばっかり読んでたのは心がすでに大人だったからなのか?ってなると、父上達のことを時々痛ましいものを見る目で見てたのも、あの様子がどういうものなのか知ってたんだな!」
幼い頃からの疑問が解消されたのか、ケイレブはなるほどなるほどと頷いて1人納得していた。逆にキャスリーンはまだ信じられないようで、びっくりした顔で固まっている。
私は2人に正直に話をすることにした。
「隠しててごめんね。でも、前世の記憶があるだなんて言っても信じてもらえないと思って。だから言えなかったの…」
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「すまない。エヴィが国のためにそのように励んでいたとは、想像もしていなかった。普段の様子から蝶よ花よと育てられた公女なのだと…私以外の皇女のように育ったのだと。そう思っていた。思い込んでいた。とても失礼なことをした。本当にすまない」
「えええ。いいよいいよ。そんなこと謝らないでよ。私が母国を守ろうとした気持ちをキャスリーンは理解してくれた。だからそうやって謝ってくれたんでしょ?それを理解してくれただけでいいよ。ありがとう」
「これからは人の印象だけで全てを決めないように心がけるよ。それに、兄であるケイのことをどこか子供を扱うように接していた理由もわかった。時折見せる大人のような顔は昔の記憶のせいだったんだな」
キャスリーンは何かを思い出して頷くと、私の話を信じたようだ。
「ってことで、異世界から来る伴侶という条件もある意味当てはまってるんだ」
ディーは少しだけドヤ顔になりつつも、真剣な声で話を進めた。
「そして次に教えられてるのは伴侶自身についてだ。ここからがある意味大事なのかもしれない」
そういうと、彼は私の顎を軽く掴んで私の顔を振り向かせると、チュッと音を立てて唇に口付けをした。
「なあ、ヴィー。俺とのキス…どう?」
「ど、ど、ど、どうって…えっと」
突然の口付けに顔を真っ赤にしていると、ボディーガードキャスリーンが待ったをかけた。
「エイデン様。いや、エイデン。待ちたまえ。今、接吻をする必要はあったか?」
「あったよ!むしろ、ちゃんとわからせないとダメみたいだから…外野は少し黙ってて」
ディーが少し強い口調でそう告げると、キャスリーンは立ち上がってこちらにやってこようとした。だが、ケイレブが彼女の体をギュッと抱きしめて首を横に振る。それを見たキャスリーンは仕方なくあげた腰を下ろした。その様子から、彼女はこの状況を見守ることにしたようだ。
私はといえば、人前での口付けにアワアワとあわてていた。
「じゃあ、ヴィー。もう一回、しっかりするから。よく考えて答えて」
ディーはニヤッとした顔でそういうと、私の唇に唇を合わせてきた。
「んっ…んん」
今度はただのキスではない。ディーは私の口の中に舌を入れてくると、ねっとりと舌を絡め始めた。
「んっ……っ……やっ、で……はぁっ…」
やめてよっと口付けの合間に伝えようとするが、その音すら彼の口の中に吸われていく。
私はボーッとして体が熱くなるのを感じながら、この状況が終わるにはどうするのか、懸命に考えた。
(ああ、だめ。ディーのキス気持ちよすぎる。…絶対パンツ濡れてる…。もう、この人本当にこの前まで童貞だったの?んん、ほんと気持ちいい。やばい。こんなに甘いキス……ん?……)
ピチャピチャと音を立てながらディープな口付けをされている私は、ふと前世でのキスとの違いに気がついた。そして、あえてそれを味わうように舌を動かし返えすと、ディーは私が気がついたことがわかったようだ。
彼はチュッと名残惜しそうな音をたてて、唇を離と私を見つめてクスッと笑った。
「ヴィー。わかった?」
「はぁ…んっ、まって。……息をね……整えてから…」
「いいよ。ゆっくり整えて」
若干エロエロモードなのか、人前であるにも関わらずディーは肩で息をする私の耳元に誘惑するような声で囁いた。
「えっと、たぶん…。…伴侶の体液は甘い」
そんな彼を無視するように答えを出せば、ディーは私の首元から顔を離してパチパチと手を叩いた。
「正解!」
ディーはよくできましたーっと笑って私の頭を撫でた。そして撫でられながらふと観客に目線を向けると、顔を真っ赤にさせ両手で目を覆うキャスリーンが見えた。
ケイレブは母国で見慣れた光景だったからか平然としつつも、さりげなく抱きしめているキャスリーンの腰を撫でている。彼はエロエロモードがしたいようだ。
ベルナールは若いって素敵ですねーと言う顔で微笑んでいた。
ディーは名残惜しそうにペロリと自身の唇を舐めてから、伴侶についての詳しい説明を始めた。
「伴侶は蜜を固めたもの、つまり蜜飴だな。あとは液体しか受け付けないんだ。俺達が食べている普通の食事は食べることはできない。そして、食べられる蜜飴は自分で出せる。でもその蜜は守り手から与えられた体液がないと作り出せない。また守り手と伴侶はお互いの体液を甘く感じる。蜜飴については、ヴィーも巣篭もりの時に俺が試しに作らせたら作れただろ?」
「え?そうだっけ?」
記憶がないなーっと首を傾げると、ディーはクスクスと笑った。
「蜜が出せるよって話たら〈はちみつぅ〉とか言って手の中に蜜飴だしてさ。パクッと食べて〈あまああ〉って言いつつ寝てたよ」
「ええ、ほんと記憶ない…」
ブンブンッと音がなるくらい首を横に触っていると、ベルナールが話しかけてきた。
『今試しに作ってみてはどうですか?』
「あ、なるほど。えっと、手の中に出す感じなのかな?」
『ええ。そうです。どのような味のものにするのか、効果はどれほどのものなのか。そんなことも出来る範囲でなら指定できるそうですよ』
「え?そうなのか?それはお前の父親から聞いてないぞ」
ディーがびっくりしたような声で話せば、ベルナールは少しだけ寂しそうに、そして懐かしそうな声で話をした。
『母上が守り手の伴侶でしたからね。ここにいる誰よりも伴侶についてはわかっております。また、父上からは伴侶の詳細については決して誰にも言わないようにと。母上の命に関わる事だからと口酸っぱく言われていました。私も妹も母上について口を滑らせないよう、幼い頃は常にビクビクとしたものです』
「あー、なるほどな。じゃあ、他のことも知ってるよな?」
ディーの質問にベルナールは頷いた。
『守り手と伴侶は出会って1日以内に交わる必要がある。そうしなければ伴侶は儚くなる。理由としては守り手に出会うまでは森の加護を受け、守り手の体液がなくとも蜜が出せる。だが、その加護は守り手に出会えば消える。故にすぐに交わる必要がある』
「その通り!」
ディーはベルナールの解答に大袈裟に喜んで拍手をすると、まだ蜜を出せていない私をじっと見つめた。
「とりあえず、あんまり考えずにやってみたらどう?」
「う、うん。やってみるね」
目を閉じてこころの中で甘いものを念じてみた。
(甘いの甘いの。んー、甘いの。あ、そうだなー。蜜飴って言うならやっぱり飴かな。じゃあ昔よく食べてた梅干し味の飴。あれを久しぶりに食べたいかも。そうそう。あれ)
味を思い出すと口の中で涎がじんわりと広がる。この現象はなんていうのだっけ、なんて考え事をしながら頭の中で丸い飴を想像してみた。
すると、先ほどまでなかった感触が手のひらにある。ゆっくり目を開けて確認すれば、手のひらの上に見覚えがある真っ赤な塊があった。
「うわ、本当にできた!んんん、この味。なつかしー!」
パクッと口に含んで蜜飴を舐めれば、思い描いていた味と同じ味が口いっぱいに広がった。特にお腹が空いているわけではないが、少し満たされたような気がする。
『母上は飴の味にもこだわっていましたが、飴を食べてから何時間満腹でいられるのか。その点もこだわっていましたね。あとは、そうですね。時折父上が強請っていたのは《えっちな気分になる飴》だったでしょうか』
「ぶ!!なんつーもんをねだってるのよ!」
「「「《えっち》ってなんだ(よ)?」」」
意味がわかっている私がツッコミを入れるが、残りの3人は言葉の意味がわからないようで首を傾げている。私は静かに首を振ると不思議な顔3人組に語りかけた。
「覚えなくてよろしい」
最後にニコッと微笑めば、無知組は何かを察して気まずそうに頷いた。
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
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