菓子箱(短編集)

瀬野砂月

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夢じゃない

夢じゃない[R-18]

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 なんでこんなことになったんだっけ?
 頭がくらくらする。
 たしか今日は依頼を受けて隣町に来ていて、そこで先輩と再会して――

「あっ……やっそこ……」
「ずいぶん余裕だな、考えごとなんて。俺にチンコしゃぶられながら、ケツいじられてるのに……もしかして、気持ちよくないか?」

 ここ、こんななのに?
 勃ち上がり先走りをこぼす自身の先端を吸われ、腰が甘く疼く。先端ばかりを丹念に舐められ、今度は自身のあちこちにキスをされ、裏筋を舐めあげられる。

「カワイイな、お前のここ。俺がチンコにキスすると締めつけてくる。……なぁ、何考えてたんだよ?」
「っん……あぁっ……」

 中に入れられていた2本の指を回され、感じる場所を重点的に擦られる。

(……気持ち…いいけど……)
「言えよ。何考えてたか。まだコッチだけじゃイケないだろ?」
「あっ…だめっ……」

 強弱をつけて激しく責め立てられ、じりじりと追いつめられていく。
 何を考えていたか?
 そんなのは決まっている。
 目の前にいるアルフ先輩のことだ。3つ年上でアカデミーの先輩。ボーデン辺境伯家の次男でありながら、現在は冒険者として活動している。辺境伯家特有の銀色の髪にアイスブルーの瞳。少々粗暴ではあるものの、鍛え抜かれた身体と整った顔立ちで女性からのアプローチが絶えない。
 そんな彼と自分が行為に及んでいる。その現実がうまく受け止められないのだ。

「……っアルフ先輩のっぁ…ことっ……なっんで…こうなっぁのか……やんっ」
「は? なんでって? お前が泣きながら告白してきたからだろ」
「っそう…だけどっ……先輩っん…女の人っ好きぁっ…だ…から……」

 断られると思っていた。久しぶりに会った嬉しさと酒に酔ったことで、ぽろりとしてしまった告白。受け入れられるはずがない。
 なら、どうして男の自分とこんなことを? ただの性処理? 女性に飽きて? 興味?

「あ? あぁ……自分は男なのにって思ったのか……」

 コクコク頷くと頬を撫でられ真剣な眼差しを向けられた。

「お前が好きだからだよ」
「っ……ぁ」

 締まったな、カワイイやつと微笑まれ、唇が重ねられる。

「アカデミーの頃からお前のこと好きだった。でも、男の俺の告白されても迷惑だと思ったんだ。だから、忘れようとしてた。なのに、ポロポロ涙流して好きなんて言われたら我慢できなかったんだ」

 ごめんな。もう逃がしてやれない。
 吸いこまれそうなアイスブルーの瞳から向けられる慈しみとその奥に潜む情欲の視線に身体が熱くなる。

「好きだ、ノア」
「――――っ」

 耳元で囁かれ、全身が甘く痺れた。

(…気持ち…いい…何これ……射精してないのに……)

 とろとろとこぼれる愛液のように思考が溶ける。

「本当にお前は……ちゃんと答えてくれたし、ご褒美あげないとな」

 目尻を下げたアルフは頬にキスをして、ノア自身から流れる愛液を舐め取り一気に咥えた。先端を丁寧にねぶり抽挿しながら、ときに吸い上げ、中もノアの気持ちよくなる部分を優しくマッサージする。

「あぁっ…やっ……ダメッ……出るっ……っあ、出ちゃっ……」

 直接的な刺激に内部でくすぶっていた熱が出口を求めてせり上がってくる。
 このままでは、アルフの口の中に出してしまう。
 ダメなはずなのに、気持ちよさに腰が勝手に揺れる。

(…腰揺らして……カワイイな)
「もぅっ……ッイく…からっ……」

 放して。
 懇願するノアにアルフは目を細め、手を緩めることなく絶頂に追い立てる。

「あっああぁ――――っ」

 口の中に出された迸りをアルフは嚥下し、ノアを解放した。
 快感と羞恥で震えるノアと口元を手で拭うアルフの視線が交差する。

「ふぅっ……っごめん……なさっ……」

 陶磁のような白い肌を赤く染め蜂蜜色の瞳から涙をこぼす姿は扇情的だと思うと同時に、罪悪感がこみ上げてくる。

「俺のほうこそ、悪い。やりすぎた。ノアがカワイイからつい……」

 まだできあがっていないノアの薄い身体を抱き寄せ、汗ではりついた金髪を払い額に、目元に、頬に口づける。最後に唇へ口づけ歯列を割り舌を入れると、応えるようにたどたどしく舌を絡めてきて愛らしい。

「んっ……ふっ…アルフ先輩っ」

 縋るように身を寄せ、とろけた蜂蜜色の瞳で見つめられながら名前を呼ばれると、ただでさえ痛いほど張りつめているものに響く。
 アルフはノアの身体をぎゅっと抱きしめて、耳元に唇を寄せた。

「ノア、挿れたい。いいか?」

 意味を理解したノアは身体をさらに赤く染め、小さく頷いた。了承を得たアルフが身体を離そうとすると、ノアに着ていたシャツを掴まれた。

「……先輩も脱いで…オレだけ裸なのヤダ……」

 拗ねたように言うノアの額に口づけ、アルフはシャツを脱ぎ捨て、続けて下着ごとズボンを下ろした。適度に日焼けし鍛えられ、筋肉が陰影をつくる身体に熱い視線を送り――ノアは顔を背けた。身体の熱が上がり、ドキドキと激しく鼓動を刻む。盗み見るように視線を戻して、腹につくほど勃ち上がったアルフのものを見て顔が熱くなった。

「ノア」

 覆いかぶさるように組み敷かれ、足が開かれる。

「本当にいいか?」

 硬直しているノアにアルフはギラギラと欲望を滲ませた瞳を向けながら優しく告げた。
 同じ男だからわかる。ツラいはずなのに、自分を労ってくれるアルフに胸が苦しくなる。

「……先輩」

 ノアはアルフの首に腕を絡め、触れるだけのキスをして耳元に唇を寄せた。

「キて……」
「っ……ゆっくり挿れる…から、力抜いてろ」

 すぐにでも奥まで暴いて激しく揺さぶりたい衝動を抑え、絞り出すように言ったアルフは柔らかい入口に切っ先を擦りつけ、ゆっくり腰を進める。

「ん…っあ……ふっん」

 身体の中に自分のものではない熱が入ってくる。押し広げられ苦しいと感じると同時に、じわじわとアルフを受け入れていることを実感する。
 涙をこぼすノアにアルフは腰を止めた。

「ノア、痛いか? ツラいなら」
「うれしくて……っ先輩とつながれて……」

 幸せそうに微笑むノアの目から涙がこぼれ落ち、アルフの繋ぎ止めていた理性の糸が音をたてて切れた。
 噛みつくように口づけられ、一気に腰が進められる。

「あっや……ぱぃ…まっ…あんっ」
「ノアッ…ノアッくっ」

 激しく腰を振られながら名前を呼ばれ、ノアはアルフを締めつけた。

「あぁっ」

 締めつけたことで強く気持ちいい場所を擦られ、快感に背を反らせる。

「はっ…ノアッ」
「…ふ…んっやぁ……せんぱっ……んっ」

 頬を撫でられ甘い口づけをされながら、今度は優しく中を押され思考がとろとろと溶けていく。アルフの背に腕を回し、自らももっとと強請るように唇を重ねる。

「ふっ……ノア…俺の名前、呼んで……呼び捨ていいから」
「ん……アル…フ……っ!」

 名を呼ばれ恍惚としたアルフに身体が熱くなり、愛おしさがこみ上げてくる。

「あっ…んっ……アルフ、好きっ…」
「俺もっ好きだっ」
「あぁっ……っぁん……やぁっ」

 勃ち上がっていた自身に触れられ腰が跳ねた。

「あっ…アルフ…だっめ…いっしょ…あやぁ……イくっ」

 アルフの熱い手に自身を扱かれ、激しくピストンされ、絶頂の波が押し寄せる。

「あぁ、俺もっ……もう」

 荒い呼吸が重なり、互いの熱が溶け合う。
 気持ちいい。
 もっと彼を感じていたい。
 熱に浮かされた視線が重なり、貪るように口づける。

「…ふっん……ノ、ア」
「っあ…んっア…ルフ……―――っ」

 奥を突かれ、敏感な先端を擦られ、頭が真っ白になる。締め上げたものが爆ぜ、熱が注ぎこまれる快感に身体が震えた。



 やらかした――――っ!!
 太陽がてっぺんに昇る頃、アルフはベッドの上で頭を抱えていた。

(優しくするはずだったのに……)

 隣で眠るノアを見る。泣き腫らして赤くった目元。白い肌のあちこちには赤い痕が散らばり、歯型まである。
 本当なら、はじめてのノアに合わせてゆっくりお互いが気持ちよくなれるようなセックスをするはずだった。しかし、理性を切らし、自分が求めるままに激しく何度も抱いてしった。

(最低だ、俺……)

 アルフが自身の行いに猛省している横で、ノアは静かに目を覚ました。隣にアルフがいるとわかり、顔を綻ばせ名前を呼ぼうとして――

「げほっげほっ」
「ノア!」

 急いでコップに水を注ぎ、咳きこむノアを抱き起こしてゆっくり水を飲ませる。

「大丈夫か?」

 コクリと頷き「ありがとうございます」というノアの声は、ひどく掠れていて胸が痛くなる。
 コップを置き、アルフはノアをぎゅっと抱きしめ首元に顔を埋める。

「ごめん、無理させた」

 ノアは首を振った。背に腕を回し、すり寄ってくるノアが愛おしい。
 自然と身体が離れ、アイスブルーと蜂蜜色の瞳が合い、触れるだけの口づけを交わす。
 ノアが嬉しそうに笑った。アルフの顔をノアの温かい両手が包む。

「夢じゃない。本当に俺、アルフと恋人同士になれたんだ……」

 存在を確かめるように頬を撫でたノアはアルフの首に腕を絡め、唇を重ねた。

(あぁ、そうだ。夢じゃない。俺はノアと恋人同士になったんだ)

 今更ながらに“恋人同士”になった事実を実感し、胸がいっぱいになる。
 アルフはノアの後頭部と腰に手と腕を回し、優しくキスを返した。



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