須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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初授業は

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レクリエーションも終わり、この後から本格的な授業を受けれることになる。 教科書とかはまだ貰っていないが、この学校では最初の授業の時に教科書が配られるので、その心配はないと元卒業生の母が言っていた。


 チャイムが鳴り、教科担当の先生が入ってきた。


「初めまして新入生のみなさん。 私が現国の担当をさせてもらいます古池 幸恵こまいけ さちえです。 ではこれから現国の教科書を配りますが、本日は使いません。 代わりに皆さんには中学までの総復習と言うことでテストを受けてもらいます。」


 その先生の言葉にみんなが「えぇーー!?」と大きく動揺していた。 さすがの僕もこればかりは予測出来ていなかったので事前に復習をしてくるのを完全に忘れていた。 というか多分この学校の方針の可能性があった。


 そんなことをつべこべ言っていてもしょうがないので目の前に配られた問題用紙と解答用紙を見比べる。


「では終わりのチャイムがなるまで精一杯頑張ってください。 それでは、スタート。」


 先生の言葉を合図にまずは問題の内容を確認する。 現国と言うことはなにかの本を題材に、語られている部分やどこに文章が繋がっているか。 その文章を物語っている人物の心境を述べよという問題だろうと言うのはある程度予測はついていた。 実際にそうだったし。 後は漢字の読み書きが後半を占めていた。 そして最後は現国らしく、この学校に入った理由などを文章に示せというものだった。


 正直なことを言えばこれくらいならなんら問題はない。 現国は少々苦手な科目だけど、法則性を見出だしてしまえばそこまで苦ではない。


「よし、全部解答欄は埋めたから、後は見直しをして・・・」


 僕のテストのやり方としては、まずは分かる部分をすぐに解いて、その答えの見直しや空欄の部分を埋めるために残りの時間を使うようにしている。 僕の中ではこれが一番やりやすい。


 解答欄の見直しをしつつ、チラリと隣の席を見ると、意外と言えば失礼になってしまうが、須今さんは起きて、テストに取り組んでいた。 

 と思ったら用紙を落ちないように端にやったと思ったら机に伏せてしまった。


 端に置いたってことは解答欄は埋めたってことでいいんだよな? いいんだよね?須今さん。 状況が状況なだけに理解しがたい部分もある 分かりやすいようなそうじゃないようなそんな気分だ。


 そんな須今さんを横目に見ながら見直しを繰り返して、チャイムがなる。 2時間目が終了した合図だ。


「はい。 では問題用紙と解答用紙を後ろから前に回してください。 それと、初授業の科目はテストが行われることを覚えておいてください。 では3時間目以降も頑張ってください。 それでは終わります。」


 古池先生が回収し終わったタイミングでそう言い残して、クラスのみんなは「まじかよ・・・・・・」とか、「うち勉強してないんだけど」とかなんだか嘆いているような感じになっていた。 それも当然だ。 授業の始まりがテストでは対策のしようがない、 問題のレベルが中学校までのそれだったのは不幸中の幸いとも言える。


「須今さん。 さっきのテスト、どうだ・・・・・・」


 そう言って隣を見ても机に伏せたままの須今さんがいた。 あ、まだ寝てるな、これ。


 そうして次のチャイムが鳴り響く。 また別の授業がはじまり、そしてこれもテストとなっていた。


 事前に知らされていれば心構えは出来ている。 要はこれは今の自分の学力がどこまでのものかを知るためのテストなのだ。 ここで賢いアピールをしてもなんら意味はないとは思うが、それでも手を抜く理由にはならない。


 そうこうしているうちに時間が過ぎていき、3時間目、4時間目とテストを終わらせていった。 そして4時間目終了のチャイムがなって今日の授業は全て終わりだ。


 僕が通っている学校は、入学最初の3日程は学校に慣れてもらうために、お昼以降の授業はない。 なのでしばらくはこのように昼のうちに終わったりもする。

 先輩たちは普通に授業を受けているなかで、新入生は平然と下校するわけだが、この学校の方針ならばそれも致し方ないことだと思う。


 担任の先生の帰りのホームルームが終わって、みんな鞄をもち、それぞれに帰っていく。 隣の須今さんをチラリと見ると未だに寝ていた。


 須今さんはこのテストの時間、2時間目と同じ様に、解いては机に突っ伏しての繰り返しだった。 多分解いてはいるとは思うが、確認も無しにただただ机に伏せているのは、他人とはいえ少々危ない気もする。


「須今さん。 今日の授業は終わったよ?」


 そう言って声をかける。 その声に「ん・・・・・・」という声だけ出して、顔をこちらがわに向ける。 改めて顔を見てみると、かなり綺麗な顔をしていた。 綺麗な顔をしているだろう? 寝てるだけなんだぜ?


「・・・・・・ん? おや、館さん。 もう終わりなのですか?」

「え? ・・・・・・ああ、うん。 そう。 今日は終わりだよ。」


 ちょっとまじまじと見てしまっていたようで、急な反応に戸惑ってしまった。


「そうですか。 すみません。 わざわざ起こさせてしまって。」

「それは構わないんだけど・・・・・・ テストの方は大丈夫そうなの?」

「ご心配なく。 これでも成績は良い方なので。」


 それは安心していいものなのだろうか? 疑問にはなるが考えないようにしよう。


「それでは、また明日ですね。」

「あ、うん。 また明日。」


 複雑な心境を残しながら、今日の須今さんとの会話は終わった。 須今さんと話していると不思議な気分になるのは気のせいじゃないはず。 気のせいじゃないよね?

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