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球技練習
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早速次の体育の授業で体育館を使って、球技大会の練習を始める。
始めると言ってもバレーのチームのフォーメーションやボール打ち上げ方などの確認や実践を行っているが、ドッジボールチームはどちらかと言えば遊んでいるようにしか見えない、試合形式の形を取っていた。
ドッジボールは練習のしがいが無いように感じるのも頷ける。 正直練習をする理由がないとも言えるから。
「なぁ、こんなことをしてもあんまり意味ないんじゃないか?」
「確かに。 ドッジボールなんて、試合の流れによって変わるわけだから、せめて誰がボールを持った方がいいのか、みたいなのは必要かも知れないけどね。」
そう言っている坂内君と小舞君だが、僕も含めてたチームは適当に組まれている上に、あまり実力を発揮しないでやっている。 この行為に意味を感じないドッジボールの試合を延々としているのだ。 正直僕もやる気が削がれていく感覚があった。
「よし、こんなもんじゃないか? 次、女子が入ってくれよ。」
敵チームとしている矢藤君が適当に集まっていた女子に声をかけて、自分達が入っていたチームと交代させる。 彼が主体で動いてくれているようにも見えるが、実際は「面倒なのだが、彼を敵に回したくない」という思いが男子にはあり、女子の方も「それで単位が取れるなら」位の事しか考えていないのが半分近くいる。
一方でバレーチームは色々な組み合わせをして、楽しそうにやっている。
「俺たちもあれに混ざるか?」
「止めておこうよ。 団結力が崩れちゃうかもしれないし。」
「そうだな。 私たちが行ったところで、かえって邪魔になってしまう位なら、向こうは向こうなりにやらせておいた方がいいと判断するね。」
小舞君の意見に僕と坂内君が否定をしたので、小舞君も少し考えた後に、舞台上まで誘導して、そこで3人仲良く座る。
「こんなのじゃ、団結もなにもないんじゃないかと私は思うのだが、お二人はどう思うかね?」
「同感だな。 バレーチームはしっかり出来ているが、ドッジボールチームはもう少しなにかあればやる気でも出せればいいんだがなぁ。」
「やる気って、例えば?」
「んー。 優勝商品とかか?」
確かにそれはやる気は上がるかもしれないが、それで団結力が上がっては元も子もないんじゃないかな?
「でも実際に団結を高めるなら、ドッジボールとかではないと私は思うね。 もっと別の球技にするべきではないかな?」
「それは・・・学校の方針だから難しいんじゃない?」
そこまで変えるとなるとかなりの力が必要だと思う。 生徒会にでも押し掛けるつもりなのかな?
「おーい。 ちょっと足りないから来てくれ。」
別のところでドッジボールをしていたチームからお呼びがかかった。 どうやら1人ずつ欲しいとのことだ。
「俺と坂内で言ってくるから、館は休んでろ。」
「え? でもそれなら僕だって・・・」
「指を痛めたら困るやつらが要るからよ。 それじゃ、行ってくるぜ。」
そう言って小舞君は坂内君の肩を叩きながら歩いていく。 それを言うなら君達だって同じなのでは? しかしここはご好意に甘えて、舞台から降りて床に座り直す。 上から見ているのもいいが、下で見ていると緊迫感が伝わってきていい。 スポーツ自体にはあまり興味はないが、これくらいなら近くで見てみても構わない。
「ご休憩中ですか? 館君。」
右側から声がしたのでそちらを見ると、動いてきたのだろう。 少し息が上がっている安見さんがいた。 どうやら別チームと交代をしてきたらしい。
「お疲れ様。 安見さんも今終わったところ?」
「そうですよ。 館君はどこかでやって来たりはしないのですか?」
「僕も行こうと思ったんだけど、厄介払いされちゃった。」
そう言って今ドッジボールをしているコートを指差す。 どちらのチームもデッドヒートを繰り広げているようだ。
「私達のところもあれぐらいの事をしたかったですよ。」
「その様子だと不完全燃焼な感じ? あんまり動くと眠くならない?」
「子供扱いは止めてください。 ふぁぁ・・・」
反論をしたものの、安見さんの口からすぐに欠伸が出てしまったようだ。 説得力ないなぁ・・・
「やっぱり眠たいんじゃない。」
「あ、今笑いましたね? 本当に怒っちゃいますよ?」
今度はちょっとむくれていた。 そんなに表情に出てるかな? 頬の辺りをマッサージする。
「いいんですよ。 運動した後の・・・お弁当は・・・格別で・・・・・・」
「安見さん? ・・・わっ!」
急に喋りが無くなったと思ったら右肩になにかが当たった。 チラリと見ると眠ってしまった安見さんがいた。 あのー、まだ授業中ですよ?
「あ、館さん。」
動けない状態になってしまったところに、円藤さんが来た。 円藤さんも別グループのところでドッジボールをしているようで、今はその休憩時間に入ったようだ。
「円藤さんの方もお疲れ様。 どう? 頑張っていけそう?」
「なんとか、形にはしようとみんな頑張っているので、私も、張り切って、います。」
それは良かった。 円藤さんのところはそれなりにやる気になっているグループに入れたようだ。 まあ面子のなかに濱井さんがいればそうもなるか。
「お隣、失礼します。」
「あ、うん。」
寝ている安見さんと逆隣に座る円藤さん。 彼女に関しては気になることがあったので、聞いていいのか分からなかったが、気になって聞いてみることにした。
「それで、誰かに言ってみた?」
「はい。 やっぱり千枝ちゃんに相談したんです。 そしたらたまたま近くにいた、梨麻ちゃんも「あたしが見守ってあげる!」って言ってくれて、少し、心が軽やかになりました。 館さんのおかげです。」
「僕はなにもしてないよ。 相談した勇気があった。 それだけだと思うよ。」
彼女なりに一歩を踏み出せたのならそれでいいと思う。 それでこと友情の証なのではないか、と。
そう思っていたが返事がこなかったので、左隣を見てみると、円藤さんが首を上下にこっくりこっくりしていた。 あれ!? こっちも寝ちゃったの!?
そう驚いていたら、もっと驚くべき事が起きた。 なんと僕の左肩に円藤さんの頭が乗っかってきたのだ。
「え!? ええ!?」
右に安見さん、左に円藤さんと、寝ている女子2人に挟まれるという、まさに両手に花状態になってしまった。 でも、完全に身動きが取れなくなってしまったので、時計をチラリと見て、授業が終わるまでの5分間はこうしてなければいけないのかと、周囲の目線が痛い中、完全に脱力してため息をついた。
始めると言ってもバレーのチームのフォーメーションやボール打ち上げ方などの確認や実践を行っているが、ドッジボールチームはどちらかと言えば遊んでいるようにしか見えない、試合形式の形を取っていた。
ドッジボールは練習のしがいが無いように感じるのも頷ける。 正直練習をする理由がないとも言えるから。
「なぁ、こんなことをしてもあんまり意味ないんじゃないか?」
「確かに。 ドッジボールなんて、試合の流れによって変わるわけだから、せめて誰がボールを持った方がいいのか、みたいなのは必要かも知れないけどね。」
そう言っている坂内君と小舞君だが、僕も含めてたチームは適当に組まれている上に、あまり実力を発揮しないでやっている。 この行為に意味を感じないドッジボールの試合を延々としているのだ。 正直僕もやる気が削がれていく感覚があった。
「よし、こんなもんじゃないか? 次、女子が入ってくれよ。」
敵チームとしている矢藤君が適当に集まっていた女子に声をかけて、自分達が入っていたチームと交代させる。 彼が主体で動いてくれているようにも見えるが、実際は「面倒なのだが、彼を敵に回したくない」という思いが男子にはあり、女子の方も「それで単位が取れるなら」位の事しか考えていないのが半分近くいる。
一方でバレーチームは色々な組み合わせをして、楽しそうにやっている。
「俺たちもあれに混ざるか?」
「止めておこうよ。 団結力が崩れちゃうかもしれないし。」
「そうだな。 私たちが行ったところで、かえって邪魔になってしまう位なら、向こうは向こうなりにやらせておいた方がいいと判断するね。」
小舞君の意見に僕と坂内君が否定をしたので、小舞君も少し考えた後に、舞台上まで誘導して、そこで3人仲良く座る。
「こんなのじゃ、団結もなにもないんじゃないかと私は思うのだが、お二人はどう思うかね?」
「同感だな。 バレーチームはしっかり出来ているが、ドッジボールチームはもう少しなにかあればやる気でも出せればいいんだがなぁ。」
「やる気って、例えば?」
「んー。 優勝商品とかか?」
確かにそれはやる気は上がるかもしれないが、それで団結力が上がっては元も子もないんじゃないかな?
「でも実際に団結を高めるなら、ドッジボールとかではないと私は思うね。 もっと別の球技にするべきではないかな?」
「それは・・・学校の方針だから難しいんじゃない?」
そこまで変えるとなるとかなりの力が必要だと思う。 生徒会にでも押し掛けるつもりなのかな?
「おーい。 ちょっと足りないから来てくれ。」
別のところでドッジボールをしていたチームからお呼びがかかった。 どうやら1人ずつ欲しいとのことだ。
「俺と坂内で言ってくるから、館は休んでろ。」
「え? でもそれなら僕だって・・・」
「指を痛めたら困るやつらが要るからよ。 それじゃ、行ってくるぜ。」
そう言って小舞君は坂内君の肩を叩きながら歩いていく。 それを言うなら君達だって同じなのでは? しかしここはご好意に甘えて、舞台から降りて床に座り直す。 上から見ているのもいいが、下で見ていると緊迫感が伝わってきていい。 スポーツ自体にはあまり興味はないが、これくらいなら近くで見てみても構わない。
「ご休憩中ですか? 館君。」
右側から声がしたのでそちらを見ると、動いてきたのだろう。 少し息が上がっている安見さんがいた。 どうやら別チームと交代をしてきたらしい。
「お疲れ様。 安見さんも今終わったところ?」
「そうですよ。 館君はどこかでやって来たりはしないのですか?」
「僕も行こうと思ったんだけど、厄介払いされちゃった。」
そう言って今ドッジボールをしているコートを指差す。 どちらのチームもデッドヒートを繰り広げているようだ。
「私達のところもあれぐらいの事をしたかったですよ。」
「その様子だと不完全燃焼な感じ? あんまり動くと眠くならない?」
「子供扱いは止めてください。 ふぁぁ・・・」
反論をしたものの、安見さんの口からすぐに欠伸が出てしまったようだ。 説得力ないなぁ・・・
「やっぱり眠たいんじゃない。」
「あ、今笑いましたね? 本当に怒っちゃいますよ?」
今度はちょっとむくれていた。 そんなに表情に出てるかな? 頬の辺りをマッサージする。
「いいんですよ。 運動した後の・・・お弁当は・・・格別で・・・・・・」
「安見さん? ・・・わっ!」
急に喋りが無くなったと思ったら右肩になにかが当たった。 チラリと見ると眠ってしまった安見さんがいた。 あのー、まだ授業中ですよ?
「あ、館さん。」
動けない状態になってしまったところに、円藤さんが来た。 円藤さんも別グループのところでドッジボールをしているようで、今はその休憩時間に入ったようだ。
「円藤さんの方もお疲れ様。 どう? 頑張っていけそう?」
「なんとか、形にはしようとみんな頑張っているので、私も、張り切って、います。」
それは良かった。 円藤さんのところはそれなりにやる気になっているグループに入れたようだ。 まあ面子のなかに濱井さんがいればそうもなるか。
「お隣、失礼します。」
「あ、うん。」
寝ている安見さんと逆隣に座る円藤さん。 彼女に関しては気になることがあったので、聞いていいのか分からなかったが、気になって聞いてみることにした。
「それで、誰かに言ってみた?」
「はい。 やっぱり千枝ちゃんに相談したんです。 そしたらたまたま近くにいた、梨麻ちゃんも「あたしが見守ってあげる!」って言ってくれて、少し、心が軽やかになりました。 館さんのおかげです。」
「僕はなにもしてないよ。 相談した勇気があった。 それだけだと思うよ。」
彼女なりに一歩を踏み出せたのならそれでいいと思う。 それでこと友情の証なのではないか、と。
そう思っていたが返事がこなかったので、左隣を見てみると、円藤さんが首を上下にこっくりこっくりしていた。 あれ!? こっちも寝ちゃったの!?
そう驚いていたら、もっと驚くべき事が起きた。 なんと僕の左肩に円藤さんの頭が乗っかってきたのだ。
「え!? ええ!?」
右に安見さん、左に円藤さんと、寝ている女子2人に挟まれるという、まさに両手に花状態になってしまった。 でも、完全に身動きが取れなくなってしまったので、時計をチラリと見て、授業が終わるまでの5分間はこうしてなければいけないのかと、周囲の目線が痛い中、完全に脱力してため息をついた。
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