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悪い生徒には粛清を 後編
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今いるのはある部室棟の一角。 使用されている様子のないドアに、1人の女子生徒、江東 瞳子がノックをする。
『誰だ?』
ドア越しに聞こえてくるのは低く曇った声。 恐らくマスクかなにかをしているのだろう。 がらがら声出ないということは、素顔を隠すためのマスクだろう。
「どうもどうも、写真部の江東 瞳子でございます。 本日は皆様に耳よりな情報がありまして。」
『合言葉を言わなければ中には入れられん。 『トーテムポールの表情は』』
「「喜怒哀楽の4種類」」
『いいだろう、入れ。』
事前に調査したのか、元々知っていたのか、あっさりと中に入ることが出来た。 そして入った後にそのマスク姿の男子生徒は鍵を閉める。 他の人を安易に入れないためだろう。
『それで? 耳よりな情報とは?』
「一年生の強化週間中の停学処分が決まったのは知っていますよね? それがあったにも関わらず、懲りずに同じ様な事をした生徒がいるという話ですよ。 私写真部ですので、情報は鮮度が命。 というわけで、生徒会に提出する前に、皆様に見てもらいたいなと思いまして。」
そういって瞳子は写真を見せつける。 その写真には学年トップクラスの成績を保持している二人がまるで恋人同士のようにしている様子の写真だった。 その男子生徒だけではない。 後ろからゾロゾロと5、6人ほどの生徒がその写真に食い入るように見ている。
『さすがは写真部だな。 拠り所がしっかりと撮れている。』
「皆様のようにはいかなかった部分もありますがね。 これだけ揃えば十分かと思いますよ?」
「あの二人は既に生徒会に呼ばれているのは校内放送で聞いているから、処分は下ってるんじゃないのか? ひひっ」
『お前は写真部だったな。 ならばこの写真は裏付けに使える。 前回の時は無理矢理やらせたが、今回は協力者のようで手間が省ける。』
写真部は個人的にと部活動的に掲示板という形で掲載している。 なので掲示板は基本的には写真部の独壇場なのだ。
『ったくよぉ、こんだけやってる奴等だっているんだ。 たかがキスからその先の流れをやろうとしただけで、目をつけるなんておかしいだろうが。』
「あらら、1週間という期間は長かった訳でありますか。」
『俺と彼女は学校でしか今は会えないんだ。 我慢が出来なくなるのだって普通だと思わないか? だからこんなことをしているのは俺だけじゃねぇって事を知らしめたかったんだよ! そうだろ!? この不満をぶつけるのが彼女で無理なら他の人間にぶつけるしかないよなぁ!?』
『その発想に行き着いてしまう時点で貴様は生徒としての自覚が欠けている。』
何処からともなく声が聞こえたと思ったらドアが開け放たれ、外からは沈みかけた太陽の光がダイレクトに部屋に入ってくる。
『がっ! な、何故だ!? ドアは鍵を閉めた筈!』
「生徒会は教員が使える鍵束を借りることが出来るのだ。 なにも不思議なことはないだろう?」
その逆光に立つのは生徒会長である源 由来那だった。
「私達の政策に対しての異議だけではなく、我々に対する報復までするとは・・・どうやら反省文だけでは足りなかったようだな! これから貴様らに慈悲の無い粛清を下す! これを翻せると思うな!」
―――――――――――――――
『そうして君達を吊り上げていた連中を一網打尽として、彼等には君達と入れ替わりで、2週間の停学処分が下された。 というのが今回の事件の結末と言うわけだ。』
「・・・それを伝えるためにわざわざ電話をしてきたの?」
週末の夜、僕は会長から渡された予習復習用のプリントを黙々と解いていたところに、NILEのグループ通話の招待が来たので開けてみると、みんながそこで会話をし始めた。 もちろん安見さんも参戦している。
『だから館も安見も来週から普通に学校に戻ってこれるようになったんだよ! 先生達も納得してもらえたし!』
『私達と生徒会のおかげですね。』
『あとは、写真部の、先輩の、おかげです。』
『まあ、それでも1週間どうやって過ごしたか位は聞かせてくれよな! それじゃあ俺は寝るぜ! 明日は週末だから忙しいんだよ。』
『それではな館君。 また週明けに会おう。』
そういってみんな一方的に通話を切ってしまい、残ったのは僕と安見さんだけになった。
「なんだろう・・・こうなるんじゃないかってどこかで思ってたのかもしれない。」
『ふふっ、全く皆さんはお節介が過ぎますよね。』
お節介かどうかはともかく、みんなのおかげで僕らは停学解除と誤解を無くせたと考えれば、みんなは頑張ってくれていたということになる。
『また騒がしい学校生活が始まりますね。』
「その通りだね。 僕としてはちょっとありがたいかも。 家にいてもあんまりやることがなくてさ。」
『私も同じですよ。 それに姉さんと味柑のこともありますので少し居心地が悪いと言いますか。』
なるほど、学校に行っている2人からしてみたら、なぜ家にいるのかという疑問にもなるのか。 それは居心地が悪い訳だ。
『それに館君にも会えないのは寂しいですし。』
「・・・え? 安見さん、それは・・・」
『館君はどうですか? 私に会えないのは寂しくないですか?』
僕はどう思っていただろうか? 停学中の身としてはあまり誰かに会いたいとは思えなかったが、それでも、
「僕も、安見さんには会いたかった・・・かな?」
『曖昧な答えですが、館君からその言葉を聞けて私は十分です。』
安見さんはそう言っているが、本当のところは違うのでないかという想いが募る。 だからこそ僕はこう言った。
「安見さん、週末にどこかで会えないかな?」
これは安見さんのことを考えての台詞でもあったし僕自身の想いでもあった。
『・・・いいですよ。 明日は散歩の当番なので、あの公園で会いましょうか。 ふふっ、やっぱり寂しかったのではないですか。』
「・・・ほっといてよ。」
なんだか改めて言われると気恥ずかしさが滲み出てくる。 何を言っているんだろうか僕は。
『あー、あ、あ。 お二人さん盛り上がってるところ申し訳無いんだけど、そういうのは個人的にやってもらえないかな?』
唐突な第三者である濱井さんの声に僕と安見さんは声をあげてしまった。 ってしまった! これグループ通話だった! みんな切ったものだから油断してた。
『なんというか、聞いているこっちまでキュンキュンしてしまっています。』
『私にも館君のような恋が出来るだろうか?』
『こんなのは最初だけとか言われるけれど、これでも十分じゃね?』
『安見ちゃん・・・いいなぁ・・・』
みんなの声が聞こえたところで、僕は羞恥に耐えきれずに僕から通話を切ってしまった。 うわぁぁ・・・ 流石に今のはない! 会わないからこその暴走じゃないか! うぅ、駄目だ、もうこのまま寝てしまおうそうしよう。 僕はそのまま寝るために布団に自分の身を委ねた。
『誰だ?』
ドア越しに聞こえてくるのは低く曇った声。 恐らくマスクかなにかをしているのだろう。 がらがら声出ないということは、素顔を隠すためのマスクだろう。
「どうもどうも、写真部の江東 瞳子でございます。 本日は皆様に耳よりな情報がありまして。」
『合言葉を言わなければ中には入れられん。 『トーテムポールの表情は』』
「「喜怒哀楽の4種類」」
『いいだろう、入れ。』
事前に調査したのか、元々知っていたのか、あっさりと中に入ることが出来た。 そして入った後にそのマスク姿の男子生徒は鍵を閉める。 他の人を安易に入れないためだろう。
『それで? 耳よりな情報とは?』
「一年生の強化週間中の停学処分が決まったのは知っていますよね? それがあったにも関わらず、懲りずに同じ様な事をした生徒がいるという話ですよ。 私写真部ですので、情報は鮮度が命。 というわけで、生徒会に提出する前に、皆様に見てもらいたいなと思いまして。」
そういって瞳子は写真を見せつける。 その写真には学年トップクラスの成績を保持している二人がまるで恋人同士のようにしている様子の写真だった。 その男子生徒だけではない。 後ろからゾロゾロと5、6人ほどの生徒がその写真に食い入るように見ている。
『さすがは写真部だな。 拠り所がしっかりと撮れている。』
「皆様のようにはいかなかった部分もありますがね。 これだけ揃えば十分かと思いますよ?」
「あの二人は既に生徒会に呼ばれているのは校内放送で聞いているから、処分は下ってるんじゃないのか? ひひっ」
『お前は写真部だったな。 ならばこの写真は裏付けに使える。 前回の時は無理矢理やらせたが、今回は協力者のようで手間が省ける。』
写真部は個人的にと部活動的に掲示板という形で掲載している。 なので掲示板は基本的には写真部の独壇場なのだ。
『ったくよぉ、こんだけやってる奴等だっているんだ。 たかがキスからその先の流れをやろうとしただけで、目をつけるなんておかしいだろうが。』
「あらら、1週間という期間は長かった訳でありますか。」
『俺と彼女は学校でしか今は会えないんだ。 我慢が出来なくなるのだって普通だと思わないか? だからこんなことをしているのは俺だけじゃねぇって事を知らしめたかったんだよ! そうだろ!? この不満をぶつけるのが彼女で無理なら他の人間にぶつけるしかないよなぁ!?』
『その発想に行き着いてしまう時点で貴様は生徒としての自覚が欠けている。』
何処からともなく声が聞こえたと思ったらドアが開け放たれ、外からは沈みかけた太陽の光がダイレクトに部屋に入ってくる。
『がっ! な、何故だ!? ドアは鍵を閉めた筈!』
「生徒会は教員が使える鍵束を借りることが出来るのだ。 なにも不思議なことはないだろう?」
その逆光に立つのは生徒会長である源 由来那だった。
「私達の政策に対しての異議だけではなく、我々に対する報復までするとは・・・どうやら反省文だけでは足りなかったようだな! これから貴様らに慈悲の無い粛清を下す! これを翻せると思うな!」
―――――――――――――――
『そうして君達を吊り上げていた連中を一網打尽として、彼等には君達と入れ替わりで、2週間の停学処分が下された。 というのが今回の事件の結末と言うわけだ。』
「・・・それを伝えるためにわざわざ電話をしてきたの?」
週末の夜、僕は会長から渡された予習復習用のプリントを黙々と解いていたところに、NILEのグループ通話の招待が来たので開けてみると、みんながそこで会話をし始めた。 もちろん安見さんも参戦している。
『だから館も安見も来週から普通に学校に戻ってこれるようになったんだよ! 先生達も納得してもらえたし!』
『私達と生徒会のおかげですね。』
『あとは、写真部の、先輩の、おかげです。』
『まあ、それでも1週間どうやって過ごしたか位は聞かせてくれよな! それじゃあ俺は寝るぜ! 明日は週末だから忙しいんだよ。』
『それではな館君。 また週明けに会おう。』
そういってみんな一方的に通話を切ってしまい、残ったのは僕と安見さんだけになった。
「なんだろう・・・こうなるんじゃないかってどこかで思ってたのかもしれない。」
『ふふっ、全く皆さんはお節介が過ぎますよね。』
お節介かどうかはともかく、みんなのおかげで僕らは停学解除と誤解を無くせたと考えれば、みんなは頑張ってくれていたということになる。
『また騒がしい学校生活が始まりますね。』
「その通りだね。 僕としてはちょっとありがたいかも。 家にいてもあんまりやることがなくてさ。」
『私も同じですよ。 それに姉さんと味柑のこともありますので少し居心地が悪いと言いますか。』
なるほど、学校に行っている2人からしてみたら、なぜ家にいるのかという疑問にもなるのか。 それは居心地が悪い訳だ。
『それに館君にも会えないのは寂しいですし。』
「・・・え? 安見さん、それは・・・」
『館君はどうですか? 私に会えないのは寂しくないですか?』
僕はどう思っていただろうか? 停学中の身としてはあまり誰かに会いたいとは思えなかったが、それでも、
「僕も、安見さんには会いたかった・・・かな?」
『曖昧な答えですが、館君からその言葉を聞けて私は十分です。』
安見さんはそう言っているが、本当のところは違うのでないかという想いが募る。 だからこそ僕はこう言った。
「安見さん、週末にどこかで会えないかな?」
これは安見さんのことを考えての台詞でもあったし僕自身の想いでもあった。
『・・・いいですよ。 明日は散歩の当番なので、あの公園で会いましょうか。 ふふっ、やっぱり寂しかったのではないですか。』
「・・・ほっといてよ。」
なんだか改めて言われると気恥ずかしさが滲み出てくる。 何を言っているんだろうか僕は。
『あー、あ、あ。 お二人さん盛り上がってるところ申し訳無いんだけど、そういうのは個人的にやってもらえないかな?』
唐突な第三者である濱井さんの声に僕と安見さんは声をあげてしまった。 ってしまった! これグループ通話だった! みんな切ったものだから油断してた。
『なんというか、聞いているこっちまでキュンキュンしてしまっています。』
『私にも館君のような恋が出来るだろうか?』
『こんなのは最初だけとか言われるけれど、これでも十分じゃね?』
『安見ちゃん・・・いいなぁ・・・』
みんなの声が聞こえたところで、僕は羞恥に耐えきれずに僕から通話を切ってしまった。 うわぁぁ・・・ 流石に今のはない! 会わないからこその暴走じゃないか! うぅ、駄目だ、もうこのまま寝てしまおうそうしよう。 僕はそのまま寝るために布団に自分の身を委ねた。
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