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意識してしまった
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「そういえばここの羊達ってやっぱり毛刈りした羊毛ってどこかで使われたりするのかな?」
「少なくともどこかでは使われるのではないのでしょうか? 複雑な話ですが、彼らもそのために飼われているようなものですし。」
「その割には放牧されているようだけど?」
「動物などは下手に隔離して飼うよりも放牧したほうが、品質がよくなるという話らしいですよ?」
「それってパンフレットに書いてあったこと?」
柵の向こうに見える羊達を見ながら、2人で彼らの行く末について語っていた。 周りにはいつの間にか僕と安見さん、そして目の前の羊達のみになっていた。
「ふふふふ。」
「どうしたの? 安見さん。」
「こうして館君と2人で並んでいるのって、何気に久しぶりな気がして。」
言われてみると確かにそうかもしれない。 停学明け以降、僕も安見さんも関係を色々と聞かれて正直気が滅入っていたし、なにより中々2人きりという時間が無かった。 自分達で作らなかったという部分もあるけれど。
「全く、おんなじことをみんなして聞いてくるんだから。 しかも深掘りしようとしてくるし。」
「その辺りは男子よりも女子の方が敏感ですよ。 特に付き合ってるわけでも無いのですからね。」
「・・・それもそうなんだけどさ。」
羊達を遠い目で見る僕。 小舞君からは文化祭までにと念を押されたが、実際にどうすればいいのか分からない。 まだ僕の本当の気持ちを伝えるのは早いと思う。 それにその辺りは安見さんとしてはどう思っているのだろうか?
「ねぇ、安見さん。」
「どうかしましたか?」
「安見さんが、仮に、本当に仮にだよ? 誰かから告白されたとしたら・・・いや、関係ない話だよね。 ごめん。」
自分で何を言っているのだろうか? そんなことを異性に話すほど口は軽くない。 どこかで自分のエゴが発動してしまったのだろうか?
そんな風に考えていると、安見さんは空を見上げていた。 おそらく考えているのだろう。 目をつむって手を顎に当てて、小刻みに上下に揺れて・・・って立って寝てないよね? 大丈夫だよね?
「そうですね。 好きでない人からはお断りしますかね。 やはり好きな人から告白してもらいたいです。」
その言葉に僕の心臓の鼓動は早くなる。 断られるかもという想いもあったけれど、それでも僕は安見さんに歩み寄ろうとした。
「安見さん、それなら、ぼ・・・!?」
歩み寄ろうとした時に僕は前のめりになっていた。 石に躓いたのか、段差が見えなかったのか、僕としてと急なことだったので対処が全く出来ず、そのまま目の前に立っていた安見さんと共に倒れてしまう。
「ごめん安見さん。 すぐに立つか・・・」
両手を使って体を起こそうとしたときに違和感に気がつく。 右手と左手で支えている高さが違う。 しかも左手は堅いのに右手は柔らかい感触が伝わっていて・・・
恐る恐る僕は顔をあげると僕の右手は安見さんの胸部にあって、その更に上には紅潮している安見さんの顔が見えて・・・
「・・・あっ! い、いやその! 決してわざとじゃなくて! 分からなかったっていうか! と、とにかく、その・・・」
その事実に気が付いた僕はすぐに体を離して、言い訳にも近い事を喋りだす。
安見さんは自分の体を起こすと、僕が触っていた胸部部分を押さえて、少し息遣いを荒くして深呼吸を繰り返していた。
「・・・だ、大丈夫です。 すみません。 少し1人にさせてください。」
そう言うが早いかいなか、安見さんは建物の方に行ってしまった。
「・・・・・・やっちゃったなぁ・・・」
僕は落胆の中でその場にしゃがみこむしか出来なかった。
僕は・・・安見さんに嫌われてしまったのだろうか?
「せめて、機嫌だけは直しておかないと・・・」
安見さんは笑っている方が合っている。 そう思うのは僕だけじゃないとは思うけれど、それでも僕は・・・安見さんには笑っていて欲しい。
――――――――――――――――
私は振り向くことが出来ないまま歩き、速くなる鼓動を右手に感じながら先程の光景を思い出してその場に留まる。
触れていた、触れられた、触れられてしまった。 彼の本意ではないにしても、触れられた左胸の重みを思い出してしまう。
私とて今までに館君に触れる場面は多かったと感じる。 ゴールデンウィークの時の空中ブランコの時も、怖がっていた私の手を握ってくれて怖さが和らいだ。 彼の腕にしがみついていた時もあったし、彼の頬にキスをしたこともあった。 しかし彼にこうして触れられて、決して不快ではなかった。 むしろどこか彼に委ねてもいいと感じてしまった。
そんな私を見てほしくなくてああして離れてしまったが、館君はどう思ったのでしょうか? 彼のことなので罪悪感が出てしまっているのかもしれない。
先程も触れられていたとしても、彼はすぐに立ち上がって距離を取って謝罪の意を籠めていた。 そんな優しい彼を私は突っぱねてしまった形を取ってしまった。
「・・・っ!」
その事実を改めて感じた私は凄く胸が締め付けられる想いになった。
彼には見てもらえるだけで良かった。 最初の頃は本当にその想いだった。 だけれど、彼から「異性として好き」だと、それが彼にとっての世迷い言だったとしてもその想いを聞いてから、私は彼の側にいたいと思ってしまっていた。
それをもしかしたら壊してしまったかもしれない。 そう思うと胸が更に締め付けられる。
「・・・い、いえ。 まだそうだとは決まってないです。 先程のは私が悪いのかもしれません。 館君なら、ううん、館君には誤解をしてほしくないです。」
館君に好きになってもらうのは難しいですが、嫌われるのは簡単です。 ですが私自身がそれは許したくないのです。
それだけ彼は私の中で特・別・な・存在になっていた。 私は、彼にいつか・・・自分の想いを届けたいと思っているから。
「少なくともどこかでは使われるのではないのでしょうか? 複雑な話ですが、彼らもそのために飼われているようなものですし。」
「その割には放牧されているようだけど?」
「動物などは下手に隔離して飼うよりも放牧したほうが、品質がよくなるという話らしいですよ?」
「それってパンフレットに書いてあったこと?」
柵の向こうに見える羊達を見ながら、2人で彼らの行く末について語っていた。 周りにはいつの間にか僕と安見さん、そして目の前の羊達のみになっていた。
「ふふふふ。」
「どうしたの? 安見さん。」
「こうして館君と2人で並んでいるのって、何気に久しぶりな気がして。」
言われてみると確かにそうかもしれない。 停学明け以降、僕も安見さんも関係を色々と聞かれて正直気が滅入っていたし、なにより中々2人きりという時間が無かった。 自分達で作らなかったという部分もあるけれど。
「全く、おんなじことをみんなして聞いてくるんだから。 しかも深掘りしようとしてくるし。」
「その辺りは男子よりも女子の方が敏感ですよ。 特に付き合ってるわけでも無いのですからね。」
「・・・それもそうなんだけどさ。」
羊達を遠い目で見る僕。 小舞君からは文化祭までにと念を押されたが、実際にどうすればいいのか分からない。 まだ僕の本当の気持ちを伝えるのは早いと思う。 それにその辺りは安見さんとしてはどう思っているのだろうか?
「ねぇ、安見さん。」
「どうかしましたか?」
「安見さんが、仮に、本当に仮にだよ? 誰かから告白されたとしたら・・・いや、関係ない話だよね。 ごめん。」
自分で何を言っているのだろうか? そんなことを異性に話すほど口は軽くない。 どこかで自分のエゴが発動してしまったのだろうか?
そんな風に考えていると、安見さんは空を見上げていた。 おそらく考えているのだろう。 目をつむって手を顎に当てて、小刻みに上下に揺れて・・・って立って寝てないよね? 大丈夫だよね?
「そうですね。 好きでない人からはお断りしますかね。 やはり好きな人から告白してもらいたいです。」
その言葉に僕の心臓の鼓動は早くなる。 断られるかもという想いもあったけれど、それでも僕は安見さんに歩み寄ろうとした。
「安見さん、それなら、ぼ・・・!?」
歩み寄ろうとした時に僕は前のめりになっていた。 石に躓いたのか、段差が見えなかったのか、僕としてと急なことだったので対処が全く出来ず、そのまま目の前に立っていた安見さんと共に倒れてしまう。
「ごめん安見さん。 すぐに立つか・・・」
両手を使って体を起こそうとしたときに違和感に気がつく。 右手と左手で支えている高さが違う。 しかも左手は堅いのに右手は柔らかい感触が伝わっていて・・・
恐る恐る僕は顔をあげると僕の右手は安見さんの胸部にあって、その更に上には紅潮している安見さんの顔が見えて・・・
「・・・あっ! い、いやその! 決してわざとじゃなくて! 分からなかったっていうか! と、とにかく、その・・・」
その事実に気が付いた僕はすぐに体を離して、言い訳にも近い事を喋りだす。
安見さんは自分の体を起こすと、僕が触っていた胸部部分を押さえて、少し息遣いを荒くして深呼吸を繰り返していた。
「・・・だ、大丈夫です。 すみません。 少し1人にさせてください。」
そう言うが早いかいなか、安見さんは建物の方に行ってしまった。
「・・・・・・やっちゃったなぁ・・・」
僕は落胆の中でその場にしゃがみこむしか出来なかった。
僕は・・・安見さんに嫌われてしまったのだろうか?
「せめて、機嫌だけは直しておかないと・・・」
安見さんは笑っている方が合っている。 そう思うのは僕だけじゃないとは思うけれど、それでも僕は・・・安見さんには笑っていて欲しい。
――――――――――――――――
私は振り向くことが出来ないまま歩き、速くなる鼓動を右手に感じながら先程の光景を思い出してその場に留まる。
触れていた、触れられた、触れられてしまった。 彼の本意ではないにしても、触れられた左胸の重みを思い出してしまう。
私とて今までに館君に触れる場面は多かったと感じる。 ゴールデンウィークの時の空中ブランコの時も、怖がっていた私の手を握ってくれて怖さが和らいだ。 彼の腕にしがみついていた時もあったし、彼の頬にキスをしたこともあった。 しかし彼にこうして触れられて、決して不快ではなかった。 むしろどこか彼に委ねてもいいと感じてしまった。
そんな私を見てほしくなくてああして離れてしまったが、館君はどう思ったのでしょうか? 彼のことなので罪悪感が出てしまっているのかもしれない。
先程も触れられていたとしても、彼はすぐに立ち上がって距離を取って謝罪の意を籠めていた。 そんな優しい彼を私は突っぱねてしまった形を取ってしまった。
「・・・っ!」
その事実を改めて感じた私は凄く胸が締め付けられる想いになった。
彼には見てもらえるだけで良かった。 最初の頃は本当にその想いだった。 だけれど、彼から「異性として好き」だと、それが彼にとっての世迷い言だったとしてもその想いを聞いてから、私は彼の側にいたいと思ってしまっていた。
それをもしかしたら壊してしまったかもしれない。 そう思うと胸が更に締め付けられる。
「・・・い、いえ。 まだそうだとは決まってないです。 先程のは私が悪いのかもしれません。 館君なら、ううん、館君には誤解をしてほしくないです。」
館君に好きになってもらうのは難しいですが、嫌われるのは簡単です。 ですが私自身がそれは許したくないのです。
それだけ彼は私の中で特・別・な・存在になっていた。 私は、彼にいつか・・・自分の想いを届けたいと思っているから。
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