須今 安見は常に眠たげ

風祭 風利

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2人だけの予定計画

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今回の期末テストも終わり、僕らは一安心したところで終わったその夜。 僕は安見さんに電話をかけることにした。 2コールした後に電話が取られる。


『もしもし?』

「もしもし、安見さん。 今回のテストはどうだったかな?」

『少しミスがありましたが、特に問題にはなりません。 そちらはどうですか?』

「僕も同じ様な感じかな? 国語の読解力問題がちょっと不安な位。」

『それくらいなら大丈夫ですよ。 国語の先生は採点に少し甘い部分がありますから。』

「それもそうだね。」


 そんな会話を続けるが、僕としては今はそんな事を話したいのではない。 僕は一度呼吸を整えてから本題に入る。


「ねぇ、安見さん。」

『冬休みの予定について、ですよね?』

「・・・流石に分かっちゃう?」

『そのような話題を振られた後に光輝君がそうやって悩んでいるときは、私の事を考えている時ですから。』


 半年以上一緒にいるからか、僕の考えている事が筒抜けのようで、少しばかり恥ずかしさを帯びてしまう。


「でも別にあんな言い方しなくても良かったような気がするんだよね。 そんな事を言わなくても僕は・・・」

『光輝君の場合ですと言わないと分からないことが多いことを皆さん知っているのではないでしょうか?』


 むぅ、そんな悲しいことを言われてもなぁ・・・ とは言え約束をしようとしているのは事実なので、改めて話を進めよう。


「安見さんはどこか行きたいところとかって無いのかな?」

『私ばかりわがままを言うのもあれですので、クリスマスの日は光輝君の行きたいところでいいですよ?』

「えー? 僕の行きたいところ? うーん・・・」

『せっかくのクリスマスなので、どこかロマンチックな所がいいですよね。』


 おっとぉ? これは僕に丸投げですかな? いや、こう言ったときの安見さんの問いかけは僕を試そうとしているな? クリスマスらしくてロマンチックな場所かぁ・・・ あ。


「あそこはどうかな? ちょっと遠くなっちゃうけれど、あのスウェーデンを模したあのテーマパーク。」

『あぁ、あそこですか? そうですね。 もしかしたらクリスマスイルミネーションになっているかもしれないですね。』


 どうやらお気に召したようで少しホッとする。


『しかし光輝君。 いくらイルミネーションなどがクリスマスっぽいからといって、光輝君の行きたいところとはなりませんよね?』


 ぐっ・・・鋭い・・・だが僕だって伊達に半年一緒にいた訳じゃないんだぞ。


「じゃあ安見さんは僕とその場所に行きたくないの?」

『そうは言っていませんよ? ただ光輝君の意見ではなく、一般的思考だなぁと思ったので・・・』

「僕は安見さんとなら、どこでも素敵な場所になると思うんどけどなぁ。」

『くっ・・・そう言う言い方は卑怯ですよ・・・』

「じゃあそこで決定、ということで、」

『むぅ。 分かりました。 そこにしましょう。 また場所や行き方などは詳しく見ていきましょう。』


 ふふん。 これで僕の勝ちだ。 なんで負けたのか明日までに考えておくんだよ。

『ですがこういった話を出来るのも、私達が付き合い始めたから、ですよね。』

「そうだねぇ。 色々あったけれど、なんだかんだで、こうして話し合ってるんだもんね。」

『前回見に行った映画のように、周りも気が気で無かったことを考えると、やはり遅く感じたのでしょうか?』

「そんなことはないでしょ。 ただ今の時ほどお互いに想いがあった訳じゃないってだけの話じゃないのかな?」

『それでも私は加奈実さんに宣戦布告を申し立てられたのですよ。 その後光輝君に告白するのかなと思ったら、なんだか意気消沈というか自然消滅という感じで。』

「それを今の僕に言われてもなぁ・・・」


 他愛ない話はどこまでも続く。 だけれどその会話が今はとても心地がいい。 それは会話の相手が安見さんだからなのだろう。 僕と安見さんの会話は中々尽きない。


「そういえば今年のクリスマスは雪が降るんだってね。」

『おー、ホワイトクリスマスになるのですか。 それはまた幻想的になりそうですね。』

「そうそう。 場所も場所だからそれらしくなるよね。」


 あははと2人で笑うのみとなってしまう。 か、会話の引き出しがそろそろ品切れ寸前だ。 また週末に入ってしまうのにこのまま終わるのはなんか・・・


『光輝君。』


 なんとか繋ぎ止めようと考えている間に、安見さんの方から僕の名前を呼んできた。


『光輝君は言いましたよね? 私とならどこでも素敵な場所になるって。』

「・・・うん。 確かに言ったね。 でも嘘なんか言ってないよ? それは全部本心だよ。 というか今さら嘘なんて・・・」

『私も同じ気持ちですよ。 光輝君と一緒に、色んな物を見たり、聞いたり、感想を言い合ったり。 思えば人間不審になっていたのかもしれませんね。』

「そんなことはないんじゃないかな?」


 僕はそう言うと一拍おいてから安見さんに語りかける。


「確かに安見さんはある男子と出会ったことで、安見さんは嫌な想いをした。 だけれど、本当にそれが原因だったら、僕や坂内君、小舞とこうやって話が出来てたかな? 安見さん。 人間不審になってしまうのは、結局は環境のせいなんじゃないかなって思うんだ。 どれだけ人は人と会うのか分からないけれど、それでも僕らが出逢ったのは偶然の産物だよ。 だから僕はその出会いを大切にしたいな。」


 我ながら痛い言葉を投げ掛けているような気がするが、安見さんの不安が拭えればそれでいいんだ。


『私は、光輝君に会えて、本当に幸せ者だと思います。 そして恋人になってくれたことも。』


 それは僕もだよ、とは敢えて言わなかった。 正直に言ってしまえば恥ずかしかったからだ。


『お姉~。 お風呂空いたよ~。』


 下から味柑ちゃんの声が聞こえた。


『光輝君。 それではここで電話を切りましょう。』

「そうだね。 安見さん。 良い週末を。」

『光輝君も、良い週末を。』


 そうして僕らは通話を終えた。 ちゃんと考えないとな。 クリスマスデート。

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