【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

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《17》ノワという後輩

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「僕、今までこの体型がコンプレックスでしたが、さっき先輩がアドバイスしてくれたような戦闘スタイルが向いてるのかなって思ったら、なんか嬉しくて·····ありがとうございます!」


ノワが気恥しそうにはにかむ。

ロイドは少し遅れてから、先程と変わらない調子で頷いた。
一生懸命で危なっかしくて、なんだか放っておけない、そんな後輩だ。

鬼教官ロイドと謳われる自分が、1人の後輩を気にかけてしまうなど、誰が予想出来ただろうか。

ロイドは気づいていない。
この健気な発言から表情までが、全て気に入られる為の計算だということを。


ロイドが去ると、ノワの顔から笑みが消え去った。

張り切って鍛錬した直後に全速力&表情筋フル起動の愛嬌スマイルは、ロイドには効かないようだ。


(反応からして、ぜんぜん好感度上がってない)


冷たい三白眼は勿論格好いいが、こっちの立場からすると、少しは絆されてくれなければ困る。

やはり一筋縄ではいかない。
ため息をついた所で、ロイドが再びこちらを見回りに戻ってくる。

ノワは慌てて素振りに取り掛かった。


(これぞ、すぶりをするそぶり)


寒いオヤジギャグで一人ニヤつくノワこそ、この剣術場で1番の煩悩の持ち主だった。











  翌日からは調理場で料理作りに励んだ。

パーティーの為の試作評価会まではあと1ヶ月。
剣練部の練習が無い日の放課後は、調理台の前に立ち試行錯誤した。

広い調理場の一角で、ノワはうーんと唸る。

もちろん天才料理人ではない自分が味だけで勝負するのは、とうてい不可能だ。

であれば、やはり一目置くような、この世界では馴染みのない料理を作りたい。
前世の記憶を活かせばそれが可能だと見ていたが、材料や調味料には限界があった。


(いっその事·····)


珍しい見た目と食感、この世界の人間には考えもつかないような組み合わせの具材。 

閃いたノワは調理室を飛び出した。











「·····」



ノワが駆け出すのを、向かいの建物から眺めている人物がいた。

調理室でノワを見かけるようになったのは数日前からだ。
四苦八苦している様子だった彼は、今日やっと何かに閃いたようだった。
フィアンは、無人になった調理室から視線を外す。

実のところ、あの1年生のことを入学式当日から知っていた。

式典で生徒代表の言葉を述べた時、新入生の中で一層熱のこもった視線を向けていたのが彼だ。
向けられ慣れた淡い憧れや尊敬のそれとは違い、男子校でも稀にある焦がれるような眼差しとも違うそれだった。

次に彼を見かけたのは、新入生の剣術試験の時。
華奢な身体と、生傷を知らぬような白い肌。とてもでは無いが、剣を嗜んだことがあるようには見えなかった。

ノワはフィアンの予想を裏切り、舞うような身のこなしで相手を圧倒した。


『怪我は?』


近くで見た彼は、遠くから眺めるよりさらに華奢な体つきをしていた。


"フィアンさま·····"


それは、余程仲の良い間柄でなければ冒涜にも値する、親しい敬称。
ノワは、なぜか呼び慣れた風にそれを口にした。


「試作評価会の日が楽しみだな」


ソファに腰かけたユージーンとロイドを振り返る。


「あまり期待しすぎても重荷だろう」


ロイドが呟く。
フィアンは軽く笑った。
彼らしい発言だが、ロイドがノワに1目置いているのは知れた事だ。



「俺は勿論、期待してるよ。パーティーでは·····」


ユージーンが手にしていたカップを傾ける。


「·····失敗は許されないからね」



穏やかな微笑みはどんな無表情よりも冷ややかだ。
何はともあれ、彼らがノワに強い関心を示しているのは間違いないようだった。


「さて」


フィアンは時計を確認し、窓から背を離す。


「俺は先に失礼する」


扉が静かに閉まる。
部屋に差し込む西日はいくらか和らいでいた。


「パトリックか·····」
 

ユージーンはそこはかとなく、話題の名前を口にする。


「彼、男色家なのかな」


「··········は?」


「ああ、いや」



彼は突飛な発言をしてから、軽く首を振った。


「"例の"伯爵令息と噂だろ?」


三白眼に怒りが滲む。ここまで感情をあらわにするロイドは珍しかった。


「噂は所詮噂だ」


彼は馬鹿馬鹿しいとでも言いたげに髪をかきあげた。


「それもそうだね」


なんにせよ、あの1年が害のある人間でないか、確かめる必要がありそうだ。


「俺もそうであることを願うよ」




















.




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