【完結】悪役令息に転生した社畜は物語を変えたい。

亜依流.@.@

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《102》義弟のバグ

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新入生であるはずのアレクシスの制服姿は、こちらより余程様になっている。
どちらが上級生かわからない。ノワは嬉々として話しかけた。


「アレク、制服すごく似合ってる!格好いい」


片側の前髪のみが掻き揚げられた灰銀に、ネイビーのネクタイが良く似合う。
相手はこちらの足先から頭のてっぺんまでを視線でたどり、ため息をついた。

忌々しげな表情だ。


「兄さんは何を着ても綺麗ですよ」

「····················えっ?」


ノワは耳を疑った。


「寝癖、またつきっぱなしです」


どうぞ、と、ハンカチを渡される。恐らくこれでおさえていろということだろう。

それよりもさっきのは幻聴か何かだろうか。


(あ、そうか)


我が弟があまりにも格好いいので、都合の良い言葉を脳みそがアフレコしてしまったらしい。

この乙女脳め。心の中で自分を叱咤する。


「ありがとう」

「いいえ。·····まあ、そういう所が可愛らしいんですが」

「···························?」


ノワは今度こそ目の前の男を凝視した。
真冬の狼のような瞳は、相変わらず無感情だ。

言葉と態度が全く矛盾している。


「あの·····アレク?」


はいと素っ気ない返事が返ってくる。


「何が悪いものでも食べた?」

「はい?」


何言ってるんですかと呟くアレクシス。
それはこちらのセリフだ。

いつからか、彼の言動は度々バグを起こすようになった。
触れないが吉だ。ノワはこれ以上言及しないように心がけた。

門までの道には、薄桃色の花が沢山咲いていた。
まるで桜のような、それにしては花弁の大きな花だ。

アレクシスと別れ、新しい寮室へ向かう。

見知った顔ぶれ達に挨拶をしつつ、階段を上ってゆく。
指定された部屋の扉を開けると、一足先にたどり着いていたルームメイトがこちらを振り返った。

開かれたカーテンから降り注ぐ陽が、淡いアイボリーを透かすようだ。


「やあ、ノワくん。ちょうど来る気がしてたんだ」


相変わらず調子が良い。
ノワは力なくはにかんだ。 

扉を開ける前から、彼が先にやって来ているような気がしていたからだった。


「君の言った通り、運命かもしれない」

「そうだ、陣地を決めよう。部屋の丁度中央で線を引くのはどう?」 


ノワもしれっとして、初めの頃に告げられたセリフを言い返す。


「全くセンスがない。誰だい、そんな考案をしたのは?」


彼は白々しく首を傾げた。
思わず吹き出す。キースはノワの荷物をとりあげ、机の上に置いた。


「行こうか」




     

始業式が終わり、去年より1つ上階の教室へ。
席さえまるきり変わらない配置のおかげで、新しい学年が始まる緊張感はなかった。

漆黒の髪は見当たらなかった。
始業式早々遅刻とは、流石田舎の男爵令息は優雅なものだ。
アレクシスに揺すり起こされた自分を棚上げし、脳内で皮肉をつぶやく。


物語はまもなく幕を開ける。


少しの不安と楽しみが綯い交ぜになった胸元を撫でる。
鐘の音とともに、初老の教師が教室へやってきた。


「えー、皆さん、充実した休暇は過ごせましたか?」


こもったしわがれ声は、通称「学園の子守唄」と云われている担任のものだ。
ホームルームの時間でも構わず延々と話し続けることで有名な教師は、珍しく挨拶のみで1度口を閉じた。


「入ってきなさい」


担任が扉を振り返る。
教室はしんと静まり返った。

間もなくして、扉の向こうから背の高い男子生徒が姿を現した。

伏せられたエメラルドの瞳に、寝癖だらけの赤茶髪。
少し日焼けした肌が健康的な、頑丈そうな青年だった。









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