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《106》生徒会の先客
しおりを挟む「しかも!パトリックって·····家紋から騎士を1人も出したことの無い半端貴族だろ?」
「!お前、なんて事を·····」
上級生を侮辱するなど前代未聞の出来事だ。
周りにいた部員が思わず声を上げる。
「俺に指図するのか?」
ノワを冒涜した青年が周囲を睨みつける。
「いや、そういう訳では·····」
言い淀んだ相手を嘲笑し、彼は口内に残った水を地面へ吐き捨てた。
1学年の剣術有力者、フランシス・メノーテ・ラントン。
父親の地位を利用し偉そうに振る舞う彼に、同級生達は皆強く物申すことが出来なかった。
彼の周りから同級生たちが離れてゆく。
ふと、射抜くような視線を感じた。
少し離れた場所から、1人の生徒がこちらを睨みつけている。
オスカーだ。
元は貧しい子爵家でありながら、第二皇子率いる軍の先頭に立ち大きな功績を立てた事によって、伯爵家に昇格したシヴァー家の長男だった。
「文句でもあるのか?」
オスカーの視線はふいと逸らされた。
楯突く態度が、この上なく気に入らない。
「くそ·····」
どいつもこいつも、愚か者ばかりだ。
恨めしげにノワを眺めていたフランシスは、やがて何かを企むように目を細めた。
1学年からはアレクシスが生徒会へ抜擢された。
全てゲームのシナリオ通りだ。だから大丈夫、と、自分へ言い聞かせるノワの胸に芽生えた不信感は、日に日に大きくなっていった。
"それ"を無視できなくなったのは、日付けが四月中旬を差し掛かった頃だ。
イケメンロマンスの物語の中で、何よりも欠かせない存在───ヒロイン。
新学期が始まり2週間が経過しても、彼女は現れない。
ストーリー通りなら、もうとっくに学園へやってきている時期だ。
後にこの国の聖女となるヒロインは、新学期と共に学園へやって来ていた。
聖女とは、聖神力を持ち、国を富と平和へ導く存在。
皇帝に並ぶ偉大な存在で、神の使いとも呼ばれていた。
さて、その偉大な聖女様は現在いずこへ。
船を漕いでいる生徒が半分近くいる化学の講義で、ノワは唯一真剣な表情だった。
担当教師は酷く感動したという。
「パトリックを見習いなさい」と寝コケている生徒へ注意する教師の言葉を横目に、ノワはウンウンと頷く。
この国の平和についてここまで真剣に考えている学生など、自分の他にいない。
抜き打ちの小テストも満点で授業を終える。放課後、ノワは話しかけてきたキースを完全に無視して、教室を飛び出した。
今日は生徒会と剣練部の活動日だ。
現在ノワが大急ぎで向かっているのは、生徒会室だった。
放課後に招集をかけられている今日の生徒会は、フィアンと1週間ぶりに会える貴重な機会だ。
彼とは、宮殿でのラッキースケベ以来2人きりになれずにいる。
別によこしまなことを考えている訳では無い。ただ皆の前で時折話しかけられるだけという距離感がもどかしくて、ノワは密かに彼と2人きりになれるチャンスをうかがっていた。
最近になって気付いたことだが、フィアンは生徒会へ出席する日は必ず一番に部屋へやってきている。
つまり自分が早く生徒会室へ辿り着けば、その分彼と2人きりになれる時間が増えるというわけだ。
「はぁ、はぁ·····っ!」
長い廊下を走り、広場を抜ける。
見えてきた扉は半開きになっていた。
扉の間から輝くような金色が覗いた。
フィアンだ。ノワは勢いのまま扉を開く。
「フィアンさま───···········あ····」
部屋にいたのは、フィアンだけではなかった。
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