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《148》小の方

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リダルを気にするよりも、いまはドゥジーヤの捕獲に集中するべきだ。

ノワは、不意に身震いした。

 
「·····僕、用足してくる」

「用?」

「小の方」

「·····小?」


こういう時、言葉に困ってしまう。

デリックは比喩表現が通じないのだ。

言葉を選びあぐねた末、ノワは限界を迎えた。


「·····も·····もれちゃう·····」

「あ」


デリックは理解したらしく、カッと顔を赤らめた。恥ずかしいのはこちらの方だ。


「えっと」


ノワは一際大きな岩を指さした。


「行ってくる」

「わ、分かりました」

「先に行ってて!」


これ以上リダルと差が開くといけない。

デリックに歩かせておいて、用を足したら直ぐに彼のあとを追おう。
小走りで岩陰まで向かった。

ベルトを緩め、狙いを定める。

ふと、視線の先に、奇妙なものを捉えた。


「·························?」


腕ほどの太さのある棒がうねっている。

岩陰から、それが少しづつ正体を現す。
大玉スイカから、数十本もの触手を生やしたような生物だ。


「う·····」


地面を蠢いていたそれが、ノワへ向かって飛び出してくる。


「うわああああああ!!」


叫んだノワの口元に、ズッポリと太い触手が押し込まれた。


「むぐっ?!」


太さは様々なうねりが、腕や足、腰、腹へと巻き付く。

身をよじると、口の中に押し込まれた触手から、酸っぱい液体が噴射した。


(な、なんだ、これ?!)


ノワの身体から力が抜けてゆく。
抵抗しようとしても、指一本動かすことが出来ない。

謎の液体には、麻痺の効果があるらしい。
こんな状況に覚えがあった。

所謂触手攻めだ。美少女が謎の触手に蹂辱されるというアレだ。
しかしそれは、美少女に限る。


(エ、エロ同人の展開?!)


乙女ゲーム的にどうなんだ。
ツッコミも虚しく、細い触手がズボンの隙間から下着へと入り込む。


「ん、ん」


声にならない声で叫ぶ。

突如、目の前で、スイカが真っ二つに割れた。


「·····!?」


地面に身体を強打する。

起き上がろうとするが、力が入らない。近づいてきた人影が、ノワの上体をゆっくりと起こした。


「解毒剤だ」


飲め、と、唇に瓶を押し付けられる。

唇さえ麻痺して感覚がない。上手く呑み込めず、液体が口の端を伝った。

相手は吐き捨てるような舌打ちを残し、自身の口に薬を含んだ。


「·····ン·····っ」


リダルの口内からノワへ、直接薬が流し込まれる。 

徐々に体に感覚が戻ってくる。ノワはリダルの首元に手を回した。


「───ぷはっ!」




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