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《297》お祭りと悪魔
───────────────
町はどこもかしこもお祭り騒ぎだった。
陽気な音楽に人々の笑い声がまじる。広場では、炎を囲んだ人々がゆらゆらと踊っていた。
道端の芸人が風船でうさぎや犬を作っている。薄暗くなると、看板やパラペットに温かい灯りがともった。
街全体がイルミネーションみたいだ。
「イアード、見て!」
威厳あるイアードの銅像には、まるでクリスマスツリーのように光の線が巻き付けられている。
ノワはイアードを見上げた。
「あ·····」
彼は反対方向を眺めていた。
自分だけはしゃいでいたんだ。
「お姉さん、一杯いかがですか?」
飲み物を配っていた青年が笑いかけてくる。
ノワは慌てて、フードで顔を隠した。
性別を間違えられたが、顔を見られていないということだから良しとしよう。
「すぐに気分が上がりますよ」
酒がなみなみに入ったコップを差し出される。
「いただきます」
ちょうど喉が渇いていた。ノワはありがたく受けとり、ほんの1口含む。
思った以上に度数が高い。
思わず口をイの字にすると、喉に渋い味が残った。
すぐに気分が上がるとは、この事だったようだ。
(お酒の力を借りれば、話を切り出せるかも)
この手があった。
後のことは酒に任せよう。
一息に飲み込もうとして大口を開けるノワだが、コップは何者かに奪い取られた。
「阿呆、やめとけ」
イアードだ。
さっきまでこっちにはこれっぽっちも興味がなかったくせに、こういう時だけ邪魔をしてくる。
「邪魔しないで」
手を伸ばすと、相手も腕を持ち上げる。
飛び跳ねても届かない位置だ。
一口含んだだけなのに、頭がクラクラする。背伸びをしたノワは体制を崩し、イアードのもう片手に支えられた。
「お前、酒弱いだろ」
「でも、飲みたいんだよ」
駄々をこねる子供みたいな言い草になってしまった。
「なんとしてでも飲む」
こうなったら意地だ。
強く言い放つと、相手は呆れたように溜息をつき、ノワを離す。
彼は持っていたコップを口元でひっくり返した。
「あ!」
大きな喉仏が上下し、それを飲み干してゆく。
さっきまで酒が満タンだったはずのコップはすっからかんで、近くの石畳に投げ捨てられてしまった。
「残念だったな」
ノワはあっけに取られてから叫んだ。
「ひ、酷い!この悪魔」
「·······」
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※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
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