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《310》どっちでもいい
務めのためなら、誰とでも床を共にする淫売。
きっと数え切れないほど男を咥えこんだのだろう。
いつもそばにいる近衛騎士達とは、何度体を重ねた?
あられもない声で鳴いたり、強請るように腰を揺らしたりしたのだろうか。
今頃、あの 近衛騎士と────。
知らず知らずのうちに堅く握りしめた手に、鈍い痛みが広がる。
爪は手のひらを破り、深く肉にくい込んだ。
「どうして殿下を、こんなに気にかけてくださるのですか?」
羨ましいなあ、と呟くレハルトの質問への答えは、自分自身よく分からない。
ノワははにかんでみせた。
「当然のことをしているだけです」
「なんと」
宮殿へ帰るまで、残り三日目の夜。
数日間の間を空けて、ノワはやっと、イアードの治癒に復帰した。
「聖徒様の慈悲深さを、殿下にも分けていただきたいくらいです。騎士団で厳しい訓練に気が狂うものも少なくないというのに、ご自分は聖徒様をお見かけになると、すぐに練習を中断なさって·····」
イアードの寝室へ向かいながら、レハルトの愚痴を聞く。
そんなことがあったとは驚きだ。
しかし記憶を思い返してみても、彼から話しかけられたことは無い。
あの晩餐の日を最後に、彼とは口を聞くどころか、対面さえしていないのだ。
恐らく、レハルトの思い違いだだろう。
ノワは扉の前までやってくると、レハルトと別れ、1人で部屋の中へと侵入した。
相変わらず冷たい部屋だ。屋敷は主人に似るというが、ここはさらに冷え冷えとしている。
「!」
治癒を初めて10分もせず、赤い瞳が目を覚ます。
ノワは腕を引っ張られ、ベットの中央へ引き込まれた。
今までは、触れる前に必ず優しいキスをしてくれたのに。
(別に、どっちでもいいけど)
彼は記憶どころか、意識がないのだ。
全て仕方ないと思えば、おかしいくらい諦めが着いた。
ノワの心の防衛本能だった。
唇に若干の寂しさを覚えつつ、彼に一度背を向け、自らスリーパーをたくしあげる。
汚したら面倒だから、予め服を脱いでおこうと思ったのだ。
しかし、それは叶わなかった。
「·····んっ·····」
後ろから乗り出してきた顔がノワの唇を塞ぐ。
ねじれた首が少し痛い。逃げ腰になると、イアードは前のめりに倒れ込んできた。
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