転生先は、暴君のせいで滅亡(予定)の帝国だった。

亜依流.@.@

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4.

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戦闘シーンを好むあまり、それ以外を飛ばし飛ばしに読んでいたからだ。
少し複雑なストーリーで、設定や人物はうろ覚えだ。

転生するとわかっていたら一字一句完全に覚えていたのに。
歯ぎしりするが、後の祭りだ。


「本当にそれだけの荷物で向かわれるのですか?」

「そうだよ」


当日、ボストンバッグだけを持ち上げ、アリステアは馬車に乗り込んだ。

詰め込んだのは必要なものと、母の形見のペンダント。
今から自分は、物語の序章の序章であり、原点となる場所へ向かう。

なんとかなるだろう。
これからのことは今後考えようと思う。


「どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」


ロマの所作は相変わらずだった。
しかし不安げな瞳がこちらをのぞきこんでいる。アリステアは馬車から飛び降り、彼女を抱きしめた。


「半年後にまた会おう」


運転手が急かすように咳払いする。


「ハイヤ!」


乗り直すと、大袈裟な掛け声とともに、馬車は大きく揺れだした。


窓からちょっと顔を出してみると、道の向こうに、小さくなったロマがまだ立っていた。
手を振ってみる。
少し時差があって、彼女は自信なさげに手を振り返してきた。



















首都に入り、王宮への道を真っ直ぐに進む。林を抜けた丘の上に、ベルゴッドの門がそびえ立っている。

敷地は中型の丘4つ分。
1番大きな建物が学び舎である本館、使い勝手が悪いと評判の2号館、次に武道場が二つ、階ごとに学年を分けられている寮棟、あとは外の闘技場が2つに、いちばん高い丘にあるのが天文塔。
とりあえずとても広いということだ。

既に知り合い同士で固まっている新入生たちを横目に、広場へ向かう。学生証とパンフレットを受け取るため、長蛇の列ができていた。

最後尾について、無沙汰に辺りを見回す。
歳の近い人達がこんなに沢山。久しぶりの人混みは新鮮だが、息を吸い込むと変な匂いで吐き気を催された。香水だけはいつの時代も好きになれない。

長蛇の列を並び続けて10数分後、やっと受付が見えてきた。

自分の番まではあと数人。
ルームメイトは無干渉な人がいい。祈りながら待っていると、4人の男が、横を通り過ぎていった。


「·····?」


ここには順番待ちをする新入生だけのはずだ。
疑問に思っていると、


「どけよ」


短く一言。
アリステアの前に並んでいた男子は、そのうちの一人に押され、二、三歩よろめいた。

彼の前に4人が並ぶ。
横入りだ。


「待てよ」


アリステアは彼らに声をかけた。






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