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⑤
しおりを挟む司が立ち止まる。優介は固い背に額をぶつけた。
「優介に何の用だ?」
(優介?)
下の名前で呼ばれたのは、初めてだった。
しかし、怒りのこもった声は、普段の優しげなそれとは違った。
捕まれた右腕が痺れ始める。
本当に痛い。顔を歪めた優介は、大股で近づいてきた翔に腕を引かれ、肩を抱き寄せられた。
「·····?·····??」
ひりつく空気は、呼吸をするのも躊躇われる。
優介は睨み合う美形の男二人を交互に見上げた。
「優介は俺と話してる」
取り付く島もないほど冷ややかな声が、出て行けと言い放つ。
「····ああ、そいつの名前、ユースケっていうんだな」
司は嘲るように笑った。
「こっちに来い優介」
監督生の呼び付けには従わなければいけない。ペア関係を続ける上でのルールだ。
訝しげな顔をした翔は、何かに気がついたように優介を見下ろした。
ペアの命令を聞くことは決して義務ではない。
下学年はそれを拒絶することが可能だが、承諾した場合、他人は関与することが出来なくなる。
これ以上翔に迷惑はかけられない。
優介は、司へと一歩近づいた。
彼の元へ行くよりも早く、乱暴に腕を掴まれ、引き寄せられる。
司は翔と優介を向かい合わせ、背後から優介のシャツへと手を伸ばした。
「!」
彼の指が、シャツのボタンを弾いた。
「っ!」
肩口までシャツをずらされ、緑色に光るペンダントがあらわになった。
「こいつは俺のペアだ」
優介は引きずられるようにして、図書室を出た。
何度か名前を呼んだが、無視された。司は三学年の寮棟まで足を止めなかった。
廊下を進むにつれ、視界は薄暗くなる。
三学年の寮棟1階の奥は、不良のたまり場だから近寄ってはいけない。有名な話だが、今更思い出したって時はすでに遅い。
廊下にたむろっていた数人が、優介をじっとりと一瞥してゆく。どこからか尻上がりの口笛が聞こえた。
「司~、ちょっと待てよ」
厳つい風貌の生徒が、司に声をかけてきた。
「可愛い子連れてるじゃん」
男は、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ優介を見下ろす。
優介は思わず司の手を握り返した。
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