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⑫
しおりを挟む口内を撫でながら、翔の唇がリップ音を落とし、優介の唇を吸った。
怯えるようにあとずさると、翔の手が首元へ回される。
「ん、ン·····っ」
優介の背を、ゾクゾクと甘い痺れが駆けて行った。
酸素を求め、息を吸う。逃げ場を塞ぐように、翔の舌が更に奥へと侵入してきた。
あたたかくて、気持ちがいい。この温もりが翔だと思うと、口内は可笑しいくらい敏感になった。
唇が離れ、二人の吐息が重なる。
力の入らない身体は簡単に押し倒され、大きな手がシャツの中へ滑り込んできた。
「あ·····っ先輩·····」
舐め上げるような、いやらしい手つきだった。優介の身体は、淫らな熱を閉じ込め湿ってゆく。
こちらを眺めた艶やかな瞳に、優介はギクリと体を強ばらせる。
「待って·····」
優介の言葉を無視して、翔が首元へ顔をうずめた。
「あ····っ!」
何度も、何度も、首筋へ強く吸い付かれた。
「好きだよ·····」
見つめ合い、再び唇を塞がれる。
味わうような口付けは、また啄むようなものへと変わった。
静かなリップ音に、淫らな吐息が混じる。少しずつ息の仕方を覚えた優介の服を、翔はゆっくりと脱がせていった。
その先を期待して、優介の身体が震える。
翔が、自分を好き。甘い低音が告げた言葉を思い出す度、鼓膜さえ甘く疼くようだった。
(俺も、中篠先輩が、好き·····)
脳内で反芻する言葉は、驚きのせいで紡ぐことが出来ない。
不安気に揺れる優介の瞳から、熱いものが零れ落ちた。
ぼやけた視界の先で、翔が驚いたように目を見開いた。
彼の手は、行き場をなくしたように握りしめられる。
「·····ごめん、入谷」
「ちが·····」
否定しようとした優介は、立ち上がった欲望を隠すため、慌ててシャツを手繰り寄せる。
伏せられた翔の瞳は、胸が締め付けられるほど切なげに揺れていた。
「困らせてごめん」
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