20 / 71
⑳
起床時間まで、一睡も出来なかった。
しょぼついた目を擦り、洗面所の前に立つ。鏡の向こうで、未だ中学生のような容姿が、頼りない欠伸を落とした。
「おい、洗面所まだー?」
優介は、ルームメイトの催促に気のない返事を返し、冷たい水を掬った。
「前髪、横分けとセンター分けどっちがイケてる?」
ルームメイトの下らない質問には、なんと答えたんだっけ。
習慣化した朝の支度は、上の空でも務まるものだ。優介は、気がつけば学生寮の外に出ていた。
腰の辺りで端末が震え、優介はおもむろにそれを取り出す。
画面の中央に表示されたのは、中篠翔の3文字。今日初めて目が覚めたような気分だった。
体を労る内容と、昼食の誘い。
湧き上がった喜びは、頭に浮かんだ別の人物のせいで、たちまち萎んでゆく。
薄暗い部屋の中で伏せられた鋭い視線が、少し寂しそうに見えた。
(違う、そんなんじゃない)
優介は、何度目かも分からない言葉を脳内で呟き、足を早めた。
罪悪感なんて、感じる必要は無い。
(俺は、なにも悪くない)
ずるずると司のことを考えてしまい、ブンブンと頭を振る。
優介は、翔の誘いを二つ返事で承諾した。
翔の好きな食べ物はなんだろう。いつか、手作りの料理を食べて貰えたら、凄く嬉しい。
一人自席でにやにやしていると、くくっ、と、押し殺すような笑い声が聞こえてきた。
「ご機嫌だな」
隼人がスマートフォンをいじる手を止め、優介の隣の席に腰かける。
「大輝が、心配して損した、って、ぼやいてた」
からかわれたりもするが、なんだかんだ、2人は自分のことを気にかけてくれていたらしい。
「ありがとう」
「で?」
「え?」
隼人が、ニヤニヤと優介を眺めた。
「どこまで進展したんだよ」
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?