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ふいに、温かな風が舞い込んできた。
中庭に続く渡り廊下の扉が解放されている。
司は陽の光が眩しくて、目を細める。光の中に、栗色の髪の毛が揺れた。
「!」
すぐに見えなくなった姿を追い、司は扉をくぐる。
緑が生い茂ったアーチの向こうに、優介の後ろ姿を見つけた。
司は、呆然と細い後ろ姿を眺めていた。
胸部のささくれが溶けるような気分だ。
───こんな気持ちになれるなら、話しかけるのに理由なんて必要ないかもしれない。
歩みを進めた司は、しかし、ピタリと動きを止める。
優介の隣に、背の高い男がいた。
中篠翔だ。
二人は歩幅を合わせ、中庭を歩いてゆく。
優介は時折翔を見上げ、嬉しそうにはにかんだ。
立ち止まった翔が、軽くかがみこみ、優介へ顔を傾ける。
木漏れ日の中、そっと重ねられた2人の影が、穏やかに揺れていた。
購買で菓子パンを買った優介は、翔に連れられ中庭にやって来ていた。
木々の隙間から零れる日が、キラキラと翔を照らす。
美しい横顔に見とれていると、翔の視線が流れるように優介をとらえた。
「どうしたの?」
「あっ」
優介は、翔から首ごと視線を逸らした。
「!」
すくうように唇が重ねられる。優介は慌てて周りを見回した。
「翔先輩!」
「ごめん、あんまり可愛いから」
爽やかな笑顔が、目に悪い。優介は会話に集中できなくなってしまった。
中庭を散歩しながら、その後も、触れるだけのキスをした。
恥ずかしくてのぼせてしまいそうだが、決して嫌ではなかった。
五回目のキスの予感では、優介は自分から瞼を強く閉じ、翔からのキスを身構えていた。
「·····?·····??」
ぷるぷると震える瞼の上に、柔らかい温もりが落とされる。
「可愛い、優介」
優介ははっと目を開ける。
同時に、唇が塞がれた。
「あっ·····う·····」
困ったように眉を下げる優介の頬が、みるみるうちに赤く染ってゆく。
彼に触れるのも、彼のこんな表情を見ることが出来るのも、この自分だけだ。
翔は優介を抱きしめ、そっと微笑んだ。
二人は中庭のベンチに腰かけて昼食を済ませた。
昼休み終了の時間が近付く。優介は残念に思いながら、翔と別れた。
翔が好きだ。
運命さえ感じる程、彼を好きになっていた。
しかし優介には、翔に対して後ろめたいことがあった。
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