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司は、優介の笑みに、目を奪われた。
「司先輩?」
伸ばした手は、優介の頬に触れる寸前で、ピタリと動きを止める。
優介が、不安げに司を見上げる。司は行き場のない手をポケットに突っ込んだ。
「·····そーかよ」
「あ····あの、ありがとうございます」
礼を言うと、彼はこちらに背を向けて歩き出した。
広い背中が遠ざかってゆく。優介は呼び止めかけ、口ごもった。
司が、急に振り返った。
「頑張ったな」
司の口元が、ふっと持ち上げられる。
優介は言葉を失い、プリントを握りしめた。
「···先輩、俺、あの、用事あるから···さよなら!」
「·····?おい、優介·····」
優介は、司に背を向けて走り出した。
無駄なことを考えないよう、一心不乱に3年の寮館へと向かう。
感じた切なさを、苦しさで誤魔化す。やがて優介は、待ち合わせの場所にたどり着いた。
すでに到着していた翔が、優介に気づき手を振った。
「優介」
翔は駆け寄った優介を抱きしめ、甘いマスクを綻ばせる。
「走ってきたの?」
翔の腕の中で、司の笑顔がよみがえる。
優介は、翔を抱きしめ返すことは出来なかった。
エレベーターに乗り込む寸前、一階の廊下が目に入る。
司が自分を担いで進んだ道だった。
何故か寂しく感じる道から視線を外し、優介は、ふと翔の背を見上げた。
こちらの手を握る彼の手には、必要以上に力が込められている気がした。
3階の角部屋が、生徒会長専用の寮室だ。
「わあ!」
部屋の中は、通常の寮室よりも広い。広い窓から見えた夕日に、優介はわざとはしゃいだ声を上げた。
窓ガラスに手を付き、景色を一望する。
広い学園の敷地が、オレンジ色に染っていた。
「あ····」
向かいの校舎の教室は、優介が先程まで補習に利用していた部屋だ。
もしかしたら、この窓から、司といるところを見られてしまったかもしれない。優介は翔に弁解しようとして、後ろめたい気持ちに気付かされた。
「!」
背に、硬い温もりを感じた。
「そのまま」
振り返りかけ、慌てて前に向き直る。
その声が、普段よりも半音低い気がした。
「それで····補習は、楽しかった?」
翔が腰を撫でながら、優介のベルトへと手をかける。
スラックスは、重力に従って脱げ落ちた。
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