【完結】僕らの関係─好きな人がいるのに、学園の問題児に目をつけられて─

(36)

　『突然別れたいだなんて···』


端末の向こうから聞こえたのは、懇願するような翔の声だった。


『 考え直してくれ』


優介は無言のまま電話を切った。
別れた理由を、翔に言えるわけがなかった。

自分は彼と付き合う権利などない。悲しむなんて、もってのほかだ。

優介は翔からの連絡を無視し続け、やがて眠りについた。












その日の早朝、優介はルームメイトによって叩き起こされた。


「おい！起きろ！起きろってば！」


普段ならばこちらの寝坊など気にもとめない相手だ。不審に思いながらも、優介の瞼は再び下がってゆく。


「起きろ！」

「ううん·····」


ルームメイトはなかなかしつこかった。
重い身体を起こし、時計を見やる。


「早くしろって！」


友人の手が、シャツを引っ張る。
優介は叫び声を上げた。


「な、何？」


返答を聞くと、優介は今度こそベットから飛び起きたのだった。









2学年の寮棟の門の前に、スタイルの良い男が佇んでいる。

立っているだけで様になる。気づかれないように通り過ぎようかと逡巡した優介は、流れるような視線に捕らえられた。

優介を見つけると、翔は迷いなくこちらへ歩み寄ってきた。

心臓が口から飛び出してしまいそうな程うるさい。優介は胸元を握りしめた。


「おはよう、優介」


「あ、おはようございま·····」


反射的に挨拶をし返して、優介は勢いよく首を振った。

なんで、彼がここに？
昨日別れ話をしたばかりなのに。そう言いたいが、ここはあまりにも人目が多すぎる。


「少し話したいんだけど、良いかな？」


翔の提案を拒否する術は無い。
翔に手を引かれ、校舎の裏側に向かう。