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しおりを挟む「…まだ戻ってないだと?」
「すっ、すみません·····」
時刻は午後7時40分。
2年生の寮館へ足を運んだ司は、優介が不在だというルームメイトの答えに眉を潜めた。
門限まではあと20分。優介が無断で規則を守るような度胸の持ち主でないことは、わかっている。
嫌な予感がする。司はズカズカと2年寮の奥へ進んだ。
周りの視線が鬱陶しい。
舌打ちをすると、廊下に出ていた生徒たちはいそいそと部屋へ逃げていく。向かったのは、監督室だ。
扉をノックし、ノブをひねる。部屋の中には監督教師の山下がパソコンに向かっていた。
入ってきた司を一瞥した山下は、少し驚いたように目を見開いた。
「2年B組の入谷優介は外出届を出していますか」
早口に告げ、じっと山下を見つめかえす司。山下は少しの沈黙の後、肯定の返事をする。
「入谷自身からの届け出ですか?」
「個人的な事を教えることは出来ない。用があるなら伝えておくが」
頭の固い教師だ、と、脳内でつぶやく。司は、結構ですと断った。
この様子では、聞き出すことは不可能だろう。思い当たる場所ならある。踵を返しかけた司を、静かな声が引き止めた。
「入谷一人で不便があるなら、他にも空きはある」
山下の言葉に、司は一度立ち止まる。
そして、無言のまま部屋を後にした。
2年の寮館を出た司は、全速力で走り出した。胸には、ムカムカとしたものが湧き上がっていた。
忌々しいが、その通りだ。学園の人気者である中篠と、腫れ物扱いの自分。さらに中篠は優介の想い人だ。
邪魔なのは自分だけだ。
思い浮かんだのは、優介の柔らかな肌や温もり、声、そして一度だけ見た笑み。
差し出された華奢な手が、嬉しそうに解答用紙を握りしめていた。
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