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しおりを挟む「翔先輩の事が好きでした」
けれど、最近は胸の中に別の人物が入り込んできた。
その人物を思う時、翔を思うのと同じようにときめき、ある時は切なさを感じる。
翔と付き合いながら、別の人物へ想いが傾いた。そんな事、事実であっても絶対に言うべきではない。
そう思い、別れを告げる時、口にする事が出来なかった。
「別の人を好きになっちゃったんです」
一通りを話し、優介は声が震えないよう拳に力を入れる。
きっと翔は、自分に愛想をつかし軽蔑しただろう。
嫌われたに違いない。けれど最低な自分が、最後まで彼にいい顔をして別れを告げるなんて元から無理だったのだ。
「ペアとしての役割は、一生懸命果たすつもりです。でも、もうさっきみたいなことは····ペアを解除したければ、して下さい」
推薦の利用不可と、罰金。どこまでも最低だが、翔ならば痛くも痒くもないペナルティだ。
むしろ彼は、喜んでペナルティを承諾し、優介を突き放すだろうか。
「本当に·····ごめんなさい。今まで、ありがとうございました」
目の奥がツンと痛む。優介は慌てて立ち上がった。
急いでここを出なければ。と扉の方へ向かい、鍵がかかっていることを思い出す。
もちろん、ノブを捻っても開く気配はない。
おずおずと翔を振り返りかけた優介の頭上に、音もなく影が落ちた。
「!」
優介の耳元を掠め、彼の手が扉の横へカードをかざす。
ロックを解く機械音が聞こえた。
「早く出てくれ」
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