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一章
178.陣地作り
しおりを挟む殿下、すなわちルシフェルの周りに、彼がハートマークを書き足す。
「結婚前に気分が落ち込み、悩むことはよくあることです。マリッジブルーとは、「この相手と一緒で幸せになれるか」、「本当にこの人でいいのか」、「経済面で貧しい思いをしないか」等々、尽きない不安が生まれる期間のことです」
ペラペラと話す流暢な言葉を、右耳から左耳に聞き流す。
まるで経験者みたいな物言いだが、大方あってるような、少し違うような感じがする。
「まずひとつずつ、具言化して解消してみましょう」
「ぐげんか?」
続いて、耳の生えた「ミチル」の周りに、形の悪いマルがいくつか描きたされる。
「これは不安の数々です。·····ああ、お可哀想なミチル様、こんなに小さくて愛らしいお体に、たくさんの心配事を抱えていらっしゃるなんて」
紙をこっちに見せながら、美しい顔は百面相だ。
この人、何をしてるんだろう。ミチルがレイモンドを眺める目は、もはや街中のアブナイ人を見るそれだった。
「しかし私が断言致しましょう、殿下に限っては無駄な杞憂でございます」
グレイの瞳がニコリと細まる。
ペンは、まず左端のマルにスラッシュを入れた。
「経済面は言うまでもありません。一生快適で贅沢な暮らしを、仕える身として私もお約束します。そして·····」
続いてふたつのマルが塗りつぶされる。
「殿下はミチル様を何よりも愛し、大切になさっています。そして美しく高貴な紳士です」
ハートが追加されてゆく。熱弁だ。
どう反応すれば良いのか分からないミチルを置き去りに、彼はルシフェルの功績を朗読し出す。
聞けば聞くほど、本当になぜ自分に構うのか分からないほど完璧な相手だ。「さて」と、レイモンドが残されたマルを指さした。
「残る不安は、どのようなことでしょうか?」
弁論で解決するつもりらしい。
とても言うことは出来ない。というか、あたかも相談役として活躍しようとしているが、彼に気を許した気は無い。知らない人がいると安心できないし、もうそろそろ出ていって欲しい。
つい話に耳を傾けていたミチルは我に返る。
今は叱ってくる相手がいないから、枕をかじってストレス解消でもしよう。奥歯で布を引っ張りプライベートゾーンに入ることを知らせたはずだが、相手はこちらを凝視したまま微動だにしない。
「こんなふうに無防備なお姿を見せてくださるなんて、感激の至りでございます」
自分の匂いが着いた場所を齧ったり引っ掻いたりするのは、うさぎにとっての陣地作りみたいなものだ。
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