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一章
191.優しい旦那様
しおりを挟む決してほかの皇子の名を呼ばないこと。
そして想い描くことさえ懲罰の対象だといった。
次に、授けられるものは全て受け入れること。拒絶は許されない。
最後に、この身も心も、全てがルシフェルのものであるということ。
苦しくなったお腹を見下ろしていたら、身体が宙に浮いた。
抱き上げてきたのはルシフェルだ。彼は、避妊薬はもう必要ないと言った。
「サタンがミチルを好いている今、君の赤子にはサタンの生命がやどる。何も心配いらないよ」
もっとも、一夜で妊娠する確率は高くないらしい。
「ん·····」
行為中のルシフェルは、怖かった。
今まで与えられたことのある、暴力や冷たい命令なんかじゃない。彼の媚薬は、優しく解くように、しかし確実にこちらを意のままに操ることが出来る、そんな力があるのだ。
ルシフェルがただの優しい旦那様でないことを、既に分かっている。
しかし支配されることに悦びと安堵を得ていた。
ここには自分をほったらかしにする人はいない。どうでもいいとおざなりに扱って、要らなくなれば捨てる人もいない。
出来損ないだからと虐げるものも、命を脅かす者も存在しない。
彼は居場所をくれた。
こんなに素敵な人なのだ。
ルシフェルだけを愛することができるだろう。
だから、「何も心配しなくていい」。
真夜中、オレンジの灯りの元で、彼はミチルの前に跪いた。
手の甲へキスを落とす唇は、鋭い牙を隠し優美に微笑む。
ミチルは彼からのプロポーズに頷いた。
薄れる意識は、やがて深く沈んでいった。
「··········!」
目を覚ました時、炎の滾る草原の真ん中にいた。
真夜中だ。
あの夢だ。
いつもと違うのは、彼がいないこと。
ミチルは呆然と丘の向こうを見上げていた。
古びた孤城だった。
半分は崩れ、錆び付いているが、間違いない。
これは、過去の天界の宮殿──または、記憶の中の風景だ。
ずっと疑問に思っていた。
なぜ夢の中の草原には白花が咲いているのか。なぜ毎回同じ風景で、ここが天界だと認識しているのか。
なぜ自分は、いつもあの青年に出会うのか?
答えは簡単だ。
『俺はお前のような幼獣は呼んでない』
自分の夢では無い。
自分が、彼の意識の中に入り込んでいたのだ。
目の前で、広い空に、いくつもの星が瞬いては消滅していった。息苦しいほど目まぐるしく年月がかけてゆく中で、不意に、あたりはしんと静まり返った。
───行かないでくれ。
虚無に流れ込んできたのは、凍えそうな程冷たい冷気。
それでも、草原の炎は消えない。
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