327 / 867
二章
re.《57》噛み付く
しおりを挟むそして唾液を含んだ舌が、甘えるように指へ絡みついてくる。
「ミャゥ·····ン·····ッ♡」
本人すら無自覚なようだ。
ピクピクと身体を震わせながら繰り広げられる行為に、寡黙な召使いは生唾を飲み込んだ。
(冷たい指、きもちい·····)
舌の腹や側面を擦るようにして押し付けて、関節に絡みつく。
これがとても心地よいのだ。
「ミチル様」
「ニャー♡」
離れていこうとする指を甘噛みで引き止める。
また、下腹が熱くて重い。
これは一体、なんなんだろう?
ソワソワし始めた尻を、背後の人物に押付ける。
自我やプライドは葬り去られる。夢中になっていたら、手すり代わりにしていた腕が無造作に動いた。
「·····そのような遣り方をご所望であれば、いつでもお申し付けくだされば良いのに」
「·····?」
ボソリと呟かれた言葉を最後に、指はあっけなく抜かれてしまう。
我に返って、恥じらいと寂しさに言葉をつむげなくなる。
漏れそうな鳴き声を押し殺すが、相手の行動には続きがあった。
「私は忠実で生真面目な下僕ですから───」
くるりと視界が反転する。
後頭部は柔らかな枕にしっかり支えられた。そしてこちらを見下ろす美形に、ミチルは結局「にゃ」と情けない声を漏らした。
「ミチル様からのお戯れにも、誠心誠意お返しすることは、ご存知でしょう」
寡黙で堅物な世話係から時折感じる、妖しい恐ろしさが苦手だ。
こちらの方が主人なのに、大人の色気に抗えない。
差し出された指が唇をなぞると、そこは知らず知らず半開きになった。
指先を追うように飛び出した舌は、まだ駄目ですという一言に戒められてしまった。
お預けされたら、口内は寂しくてたまらない。
吐息を漏らして腹部を見下ろす。さっきよりじんじんして熱いのだ。
視線に従うようにして、大きな手のひらが下腹を覆った。
「どうして欲しいですか?」
冷たいのに、甘やかすようにも聞こえる声だ。
彼の内心など分からないが、とうとうある憶測ができてしまう。
この使用人、もしかしたら自分のことを気に入っているのだ。
とは言っても、猫で言えばマタタビみたいなアレ。自分のフェロモンや肌や、あるいは見た目や滑稽な所作なんかが彼の偏りまくった癖に命中しているのかもしれない。
上唇をトントン叩く指が焦れったくて、ミチルはパクリと噛み付いた。
67
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる