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二章
re.《251》練習
しおりを挟む自分を肯定すること。
尊重すること。
必要とされたいとか、認められたいとか、それよりもずっと深くにあった願い。
他の誰でもない自分自身が、自分をなんて、できるだろうか?
「そんなこと」
自信はない。
「出来ますよ」
続きはレイモンドが断言した。
「私に仰ってくださったではありませんか」
長い足は目の前で跪く。
こちらを見上げた灰色を見ていると、彼の言うことが全てその通りに思える。
だから感じたのは安堵だった。
なんの根拠もない言葉なのにだ。
「まずは少しづつ、練習していきましょう」
明るい提案に、一瞬目の前が眩く照らされた気がした。
「·····うん」
「良いお返事です」
ミチルは無言のまま俯いていた。
彼に褒められるのは嫌いではない。
「私でも良いですが───ああ、そうだ」
パンと軽く手を叩いた彼のトーンが明るくなる。
「折角ですから、彼にも練習相手になってもらいましょう」
そう言うのと、扉がノックされ、かっきり3秒後ノブがひねられるのはとてもテンポが良かった。
「お薬のお時間です」
1日1回、体調回復のために飲まされている薬だ。
苦くて大嫌いなやつだ。前は飲みたくなくて中身をそっと捨てようとしたら、バレて叱られた。
それから彼は、この薬を飲ませる時は敵意を隠しもしない。
実際は敵意ではなく、なんとしてでも飲ませようとするジェロンの使命感なのだが、残念ながらミチルには理解されてない。
「いま、召し上がってください」
圧がすごい。
レイモンドの方を振り返ったら、彼は仲介にも入らず微笑むだけ。
どうやら彼は、ジェロンがやってくることをすでに感知していたようだ。
故にこの微笑みはやってみろということだろう。
ミチルはもじもじしてから、ちょっとジェロンを見上げてみた。
神経質そうな美形は、ベットに座ったこちらの斜め前まで来て、机の上にコトリと小瓶を置く。
飲むまで見張ってるらしい。
確かに、薬を飲む時毎回さんざん拒絶していたのを思い出せば仕方のない事だ。
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