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二章
re.《303》会話
しおりを挟む目の前に現れたのは、予想とは違う人物。
天界の主──ルシフェル・ダンタリアンは、唖然と見つめる下界の者に、そっと微笑みかけた。
親しげにさしのべられるまま、気がつけば彼の手を握っていた。
まるでティータイムするような距離で向かい合う。椅子に座ったミチルは、膝の上に両手を迷わせた。
魅惑的なルビーレッドと、月のような銀髪。
美の神がいるとするなら彼だろう。そんな美貌から顔を背けて、視線を広い肩口の辺りに逃がす。
やはりおかしい。
彼を見ると、胸のあたりが痛い。
何かがつかえたようにこの感情が分からなくなる。まるで意図的にせき止められているみたいだ。
だから、間違いなく彼のことが"苦手"なんだ、きっと。
「·····────」
それなのに。
(なんで?)
初め、時系列にそって拙く吐露し出した報告は、だんだんスムーズになってゆく。
あの青年が語った「夢がある」とか、土地とは無関係だと告げたこと、添い寝を頼んできたこと。
人前でこんなに沢山の言葉を話したのは初めてだ。
こんなに朗らかに言葉を発することが出来たのも初めてだった。
美しい深紅を見ることは戸惑われた。
目が合わなくても見つめられているとわかる。そして何故か顔が火照って、気持ちが逸るのに、居心地は蜜に浸けられた蜂のようだ。
緊張と穏やかさを交ぜた時間が過ぎた。
口をきくことすら嘘のような相手。
ろくに話したこともない、書式上伴侶にあたる天界人。
それこそ自分は、彼の朝食の前に、ひと口で食べられるアパタイザーみたいな存在だ。
心臓と裏腹に心地が落ち着いているのは、現実味がないせい───それだけだろうか?
「彼をどう思う?」
意見を求められるとは思っていなくて、一瞬頭が真っ白になる。
彼とは、あの重罪人のことだろう。
一言で表すなら「変」だ。
己に魔術をかけたことだって、目的が不明。強いて言うなら、この自分と話すこと。
そんなことルシフェルも分かってるだろう。
だから、実際に対面し、長く触れ合った自分だけが感じたことを聞いているのだ。
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