【完結】胸に左右されるは男も女も……誰が男の胸ですって!?~この恨み晴さでおくべきか~

兎卜 羊

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アングラード侯爵が突如我が家へ

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 神官様達が来られてから五日。
 既に神官様から確かに私が女性である、という結果報告と私が離縁を望んでいる、という報告がアロイス様にされている筈。なのに、アロイス様からは手紙の一通どころか葉書一枚届かない。
 別に謝罪の手紙が欲しいとか、以前の様な愛を綴った絵葉書が欲しいとかでは無く、離縁に向けた話し合いの為に連絡が欲しいだけですのに。勿論、あちらからの連絡を待つだけで無く、こちらからも手紙を送っているにもかかわらず一切の音沙汰無し。
 なんでしたら離縁の書類にサインした物を送るだけでもいいし、直接怒鳴り込んで来て下さっても良いのに。そうしたら即日離縁出来ますのにね。

 もう、こうなったら代理人を立ててアロイス様の所へ行って来て貰おうか、と思っていた所へ、アロイス様のお父様、現アングラード侯爵が突如我が家へやって来た。
 先触れも無く来られた事に、アロイス様の話を鵜呑みにした抗議の訪問かと身構えつつも会ってみれば、私の姿を見た途端ガバリと頭を下げて来た。

「この度はアロイスがとんでもない事をしてしまい、誠に申し訳ない!!」

「お、お義父様!?」

 まさかの突然の謝罪。しかも、侯爵と子爵という身分差があるにもかかわらず身分が下の私達に深々と頭を下げられ、お義父様の薄くなった後頭部を目の前に私は戸惑いの表情を浮かべた。
 どうしたらいいのか、とお父様へ目線で窺えば、「こちらからいくら連絡してもアロイス殿から全く音沙汰が無いのでな、アングラード侯爵に手紙を出したんだ」と。

「お恥ずかしい話、コルベール子爵から手紙を貰うまでこんな事になっているとは露知らず。直ぐにアロイスに確認して、初めてあの馬鹿がとんでもない事を仕出かしたと知り、急ぎ謝罪に窺わせて貰った次第だ」

「え……アロイス様からは何も?」

 あれだけ婚姻解消だなんだと騒いでらしたのに? 絶対お義父様には直ぐにお伝えしているものだと。

「何も聞いていなかった。それに、連絡の一つも無かった。言い訳になるが、結婚式後の一週間の蜜月はマナーとして新婚夫婦の邪魔をしない様に新居に行く事も連絡を取る事も基本的にする事は無い。それに、アロイスも仕事は一週間休みだからな、会う事がなかったせいで気付けなかった」

 「すまない」と、どこか疲れた表情を見せながら何度も謝るお義父様にお茶を勧め、一旦落ち着いて頂く。
 どうやら、お義父様はアロイス様とあのお屋敷の使用人達と違い、現状を正しく理解しているご様子で、私は安心したのと同時に僅かに同情してしまう。

「コルベール子爵から手紙を貰い直ぐにアロイスの元に行ったんだが、あいつはアンヌ嬢が男だった、自分は騙されたと言って聞かなくってな。教会からも君が間違いなく女性だったというも報告も貰ったと言うのに、それすらも虚偽だと言う始末で。なぜああもアンヌ嬢が男だったと言い張るのか……誰が見たって、そんな訳ある筈が無いのに……本当に我が息子ながら何を考えているのか。アンヌ嬢には多大なる迷惑をかけてしまい謝罪の言葉も無い」

「教会からの報告も信じなかったのですか!? 女性神官様に直接確認して頂いたのですよ!?」

「ああ、それも説明されたのだが身代わりを立てたに違いない、とかなんとか難癖を付けて絶対に信じようとしないのだ。私も何度もアロイスにそんな訳が無いと、アンヌ嬢はどう見たって女性だと言ったんだが、頑として認めなくてな。本来なら、あの馬鹿も連れて謝罪に来るべきだったのだが、今のあいつをアンヌ嬢に会わせては何を仕出かすか分からんので連れて来なかった。その事も謝らせて欲しい」

 お義父様の話を聞けば聞く程呆れ返ってしまって、ひっくり返りそうだわ。私だけでなく一緒に話を聞いていたお父様とお母様も、衝撃のあまり言葉が出ない様子で、さっきから「は」とか「え」という掠れた声だけが横から聞こえる。
 ここまで来ると何が何でも私が女だと認めたくない意固地な駄々っ子の様だわ。

 
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