妖精です、囲われてます

うあゆ

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妖精との出会い:3(アル視点)



*

背後に人の気配を感じた。
ただ、ここら一帯は誰も入ってこないようにしろと結界を張らせた。だとしたらこの気配は…

「あ、アルバート様。お体は大丈夫…そうですね?今回は本当にやばそうだったんで…元気そうで何よりですよ」

「ハワードか…ちゃんと指示通りにしてくれたか?」

草むらから予想通りの人物が現れる。
朝見たときより疲れて見えるのは気の所為ではないだろう。
ハワードは転移魔法は得意でも、結界の類いの魔法はとことん下手で時間がかかる。なぜか本人は下手ではないと主張するが。

それをわかっていて指示を出したのだが…おかげでたくさんフィニーと話すことができた。

「それはもっちろん!けどなぜあんな命令を?それに今までにないくらい調子も良さそうですね?………ところでそちらの小さいお方は?」

摩訶不思議なものを見るかのようにフィニーを見る。
妖精が存在する事実よりも、あれは"俺の膝にいる"ことに驚いている様子だ。
普段の俺を見ているハワードからすると信じがたい光景なのだろう。

「?こんにちは」
「おぉ…どうもこんにちは」
「ハワード見るな。フィニーが減る」

説明はあとでする、と言う前にフィニーが口を開いた。
ハワードも普通に挨拶を返す。一周回って冷静になったのだろう。
そのとき、胸にフィニーが寄りかかってきた。顔を覗き込むと暗い表情をしていて、どうかしたのかと心配になる。

「フィニー、フィニーどうしたの?」

そう声をかけると、小さな頭をさらにぐりぐりと俺の胸に押しつけてきた。んんん可愛い。全然痛くないし、甘えられているようでとても嬉しい。

「アル帰っちゃう?」

顔は上げずにボソリとつぶやくその姿に、庇護欲を刺激される。
こんな可愛いのを前にして誰が平常心でいられるというのだろうか。
アルが帰っちゃう…としょんぼりする姿にたまらなくなって、フィニーの頭に頬をうりうりと擦りつける。
ハワードがとんでもないものを見る目で俺を見ていた。相変わらず執事とは思えない態度だ。

「そうだよね、夜に森に一人は不安だよね?」
「うん………………………。あのね、まだ帰らないで欲しいなって言ったらヤダ…?」

あまりのかわいさに、フィニーを抱えながら悶える。
チラリと上目遣いでそんなことをお願いされたら、何でも叶えてやりたくなるに決まっているじゃないか。

「うぇっ大丈夫?どうしよう、治ってなかった?もう1回治す?」

「大丈夫だよ、あまりにも可愛くって苦しくなっちゃったんだ」

自分の声がとても甘い。自分がこんな声を出せることに驚いてしまう。


「アルバート様、死を目前にして人格が随分お変わりになって……ひぃっ」

「………執事は主人に対して随分無礼な口を聞くようになったみたいだ。」

今、フィニーとの二人の幸せな空気の中に入ってこないでほしい。少し黙ってて、とイライラしながら言葉には出さず目線で伝える。

「全然変わってないですね。失礼しました。」

そう言うと、文句を垂れながらも転移魔法の陣を地面にがりがりと書き始める。
二人以上を移動させるとなると、魔法はより高度な技術を求められる。それを簡単にやってみせるからこそ、こんな態度でも雇い続けてやっているのだ。


「俺はフィニーの望むままいつまでもここにいてあげたいけど、フィニーの羽も心配だし……。
そうだ!フィニーも俺の家に帰ろう!そうしたら傷の手当てもできるし、フィニーの食べたいご飯だって食べ放題だよ?」

本当は家に連れていくつもりは"今日は"なかった。
しかし、頼る動物も現れない、アルも帰ってしまう…とフィニーが焦って、
『まだ帰らないでほしい』と俺にそう言った時、もう連れて帰るしかないと思った。
動物が現れないのは俺のせいだけれど。

ただ、フィニーはすぐに頷いてはくれなかった。もしかして、俺と来たくないのだろうか?それなら無理矢理にでも…とだんだん黒い感情が出てくる。
いや…駄目だ、これじゃまた泣かせてしまう。すぐに拒否しないあたり、もしかしたら押せばいけるかもしれない。

「フィニーは俺と来たくないの…?」

多分フィニーは俺の顔が好きだ。だからそれを全力で使った。
眉を下げ、フィニーと離れるのは悲しいと全力でアピールした。

「そんなわけないよ?僕、アルのこととっても好きだもん。…………でも、僕ここを離れたことないんだ。だから…ちょっと怖いな…なんて」

ぎゅっと俺の服を握りしめて不安そうに呟く。
それとは対照的に、俺はフィニーの発言に思わず口がニヤけ、さっきまでの黒い感情が霧散していくのを感じた。
俺のことが好き。そんなこといわれたらもういよいよ本気で連れ帰るしかないだろう。
家で思いっきり愛でたおしたい、思いっきり抱きしめてかまい倒したい。
そんな思いが爆発する。

「俺が嫌ってわけじゃないんだね?ふふ、良かった。…大丈夫だよ…俺の家が合わなかったらすぐにこの森に帰ってくればいいんだよ。もちろんその時はフィニーの家まで送るから。」

帰らせる気はないけどね。
俺はフィニーの頭を撫でながら、もう片方の手で、服を握りしめているフィニーの手をそっと握った。絶対幸せにするし、なんでもあげる。誰よりも愛す自信があるし、大切にする。
だから…お願い、頷いて?
フィニーの手を握る手に少し力が入る。

「うーんじゃあ少しだけ…でも迷惑じゃない?」

「迷惑なわけないよ!フィニーが俺の家に来てくれるなんてとってもうれしいよ。」

あまりにも嬉しくって、笑顔がこぼれる。
今日だけでどれだけ笑っただろう。本当にフィニーといると幸せだ。
衝動的に、フィニーをぎゅっと抱きしめた。
もう絶対に離さない。


「なんか俺の存在忘れられてない…?」

そんなハワードの声が、静かな森にぽつんと落ちた。

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