友達

八花月

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 それからしばらく経ち、出勤日に昭雄が出てくると病院が騒がしい。

 どうやら、建設現場の作業中の事故で誰かが運び込まれたらしい。一命は取りとめたようだった。

 地下に行く前に小耳に挟んだところによると、昭雄の知り合いの名前であった。同姓同名の別人かもしれないと考えていたのだが、詳しく聞いてみるとおそらく本人である。

 浩二がなあ……。 

 ちょうど数日前に道端でばったり出会い、話したところだったのだ。

 小・中学生の頃仲が良かった、というだけで最近は全く連絡も取り合っていなかった。

 に、しては結構話がはずんだ。近況報告のようなことをお互いに話して、共通の知り合いのことなどを伝え合う。とはいっても、そこに関して昭雄はほとんど聞いている側だったが。

「いやあ、でもなんか安心したよ。昭雄がちゃんと働いてて」

 浩二は爽やかな笑顔で言う。

「宿直だけどね」
「良いじゃない、宿直」

 上からものを言われているな、と思ったが古い友達の言うことで別に悪い気はしなかった。

「じゃあね、また」

 お互いに手を振って別れる。昭雄としても、なるほど〝旧交を温める〟とはこういう感触なのか、と思っていたところだったのだ。

 でもまあ、助かったのなら良かった。

 宿直室の鍵を開けながら昭雄はつらつらと友人の容態について考えていた。

 良くなったらお見舞いにでも行ってやろうかな。

 柄にもないことを考えながら荷物を寝具の脇に置くと、あの例の赤い花が目に入る。

 少なくとも昭雄は世話などしていないのだが、まだ花は瑞々しく艶っぽい花を咲かせていた。

『日上さんかな……』 

 どうも、それこそ柄でもなく花を育てているようにも思えないが、状況からして一番可能性が高そうではある。

 調べてみると、この植物はどうもザクロであるらしかった。

 実も生っているが、まだ緑も多く硬そうだ。花は相変わらず周囲から浮いて、眼に突き刺さりそうな紅である。

『なんか、あまり好きじゃないんだよな』 

 きれいはきれいなのだが、不気味に感じる。どこかに持っていって捨ててしまおうかという衝動に駆られる。

 よく見ると、実の一つが下の方からほんのり赤く染まり始めていた。
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