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17 王権の儀式

17-003 道化の王

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「さあ。その行方は杳として知れず、ってとこです」
  思いの外あっさりと、未夜は答えた。

「もっとも科乃様辺りは何か知ってるかもしれませんが。あたしにはちょっとお手上げですね」

「ご要望があれば、調べてもいいですよ。大仕事になりそうだから、料金がかさみそうですが」

須軽が開豁な様子で提案する。途端に、うわー、と未夜が呆れたような声を上げた。

「お兄さん、度胸ありますねえ。あたし、もうあんなのに関わるのごめんです」
「いや、度胸は負けますよ」
「誰に?」

笑顔で問う未夜に、いや、と短く応えて須軽は目を逸らす。

「さて、もうこの辺でいいですかね」
未夜は一息ついて立ちあがった。

「あ、ご依頼があればあたしも、ひつきとか以外なら受けますので、お二方ともいつでもご連絡お待ちしてます。……今回は貸しがありますからタダでいいですが、次回からはお金いただきますよ」

守と須軽も席を立つ。

「あの動画って、ネットのやつとか落としてきたの?」  

「ちがいますぅー。独自のルートで入手したんですぅー」

会計に並びながら、須軽と未夜が何やら話しこんでいる。

「今のところ動画サイトとかに流出してる様子はありません。将来そういうことがあってもあたしではないです……。っていうか本当に誰にも言ってませんよね?  守さんにも」

「言ってないです」

妙な緊張感が漂っているが、守はふとした思いつきをまとめることに熱中しており、ほとんど、その会話が聞こえていなかった。

「あっ」

小さく、驚きの声を上げる。ようやっと守の思いつきに一つの結論が出たのだ。

「なんです?」
「どうしました?」
須軽と未夜が、同時に訊ねた。

「あの、あれですよ。あの、冨田さんが言ってた話」

そう言っても、二人ともピンとこないらしく怪訝な顔をしている。

「あの、特定の期間だけ王様をやって、そのあと殺される、とかいう」

はっきり思い出せない自分に焦れているようで、守はもどかしそうだ。

「そうだ!  偽物の王様、『モック・キング』!」

そう言われて二人共思い当ったようで、ああ、とか、言ってましたね、などの言葉で応じた。

「それが?」
未夜が、訝しげに訊ねる。

「あれ、佐一のほうがそれだったんじゃないですか?  科乃さんのほうじゃなくって。その、道化の王」
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