オカルト調査員 苗山隆

戸山紫煙

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奇妙な心霊写真?

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「はあー。」
一層大きなため息をつく苗山。
「どーしたよ、らしくないな。」
岡山がすっと顔を出して聞いてくる。
「いや、なんでもないよ。」
「えー、隠し事はやめろよー。もしかして、彼女と上手くいってない?」
「ん、ええ、まあ、そんなとこ。」
苗山は“調査員”を流れで引き受けてしまったことを後悔していた。
ひどく落ち込むほどではないが、興味のあまり持てないことに時間を取られることに対して気乗りしていなかった。
『まあ、ちょっとすりゃあ紗枝の方から飽きてくれるかな。』
厄介なことに彼女の紗枝も今は乗り気だった。調査員2号を名乗り、都市伝説の謎解明に躍起になっていた。

既に調査員を任命されたその日にテーマは託されていた。
「よくある心霊写真ではあるんだが、ちょっと変でな。」
重田はそう言いながらスマホに映る写真を見せる。
苗山は思わず笑った。往々にして心霊写真というのは怖いポイント、つまり霊というものが写っているのがわかりづらい。しかしこの写真は違う。いや、確かに霊は分かりにくいのだがそれ以上に変な部分が分かりやすすぎた。
「え、これ…ここ、変じゃないですか?」
指差したのは写真に写る女性。おそらく看護師だろうか、白衣を着て微笑む女性。個人情報保護のためにちゃんと目元に黒い線がかけられている。
苗山が変だと言ったのはその女性の大きさだ。明らかに大きい。背が、というだけでなく全体的に拡大されたかの如く大きい。写真の全体像は子供たちとその後ろに2人の看護師らしき女性が並んでいるものだ。その2人の看護師のうち、左に立っている女性が明らかに大きかった。
「うん…そう、思うよね。」
「え、これの怖いところって、ここですか?」
「いや、違うんだ。ここ、見て。」
重田は写真の端に写るガラスを指差した。病室の扉にある小さな窓。そこにはうっすらと笑みを浮かべた女性のような影が写っている。
「あ、うーん。女の人?」
「そう。なんでもこの小児病棟の子どもの亡くなった母親だとか。」
「そう言われると、なんだかありそうな話ですね。」
苗山はあまり腑に落ちない気持ちだが、無理矢理に納得した。
重田曰く、15年ほど前のテレビで取り上げられた写真らしいが、そのときの映像も残っていないため、窓に映る影だけでなく、巨大化した看護師の女性も心霊要素なのかがわからないらしい。
そこで、この画像、特に看護師の部分が通常のものが存在するのか、どちらが先の画像なのかを探してほしいとのことだった。
「まあ、やってみますよ。素人なりに。」
苗山はその画像をもらい、調査することになった。
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