護衛人〜ボディガードと学生の両立は結構大変です〜

岡島冬馬

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1章

1話

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とてつもなくでかい屋敷だな。

 俺は梨奈に言われるがままバイクを走らせ、ここに到着した。

 金持ちの世界でも限られた人間だけが得ることができる豪邸。

 どう考えても俺がいていい場所じゃない。



 梨奈に連れられ中に入る。案内されるままに歩いているが廊下はとてつもなく広い。

 ここまで広くする必要ないだろ。移動に不便なだけだと思うのは俺だけか?



 梨奈は今日この屋敷で見た中でおそらく一番豪華な扉の前で止まった。



「お父様入ります」



 梨奈は扉を開ける。

俺は立ち止まっていたのだが、



「あんたも入るのよ!」



俺は梨奈に続いて部屋に入る。



 そこには厳つい顔をしたおっさんが椅子に座っていた。

 このおっさん一人ってことはこいつが梨奈の親父?



「まったく似ていないな。メタモルフォーゼでも起こったのか」

「何か言ったか小僧」



 おっさんが俺を睨む。やっぱり親子だ。この睨みは梨奈を彷彿とさせる。



「梨奈、その男はなんだ?」

「私のボディガードです」

「なんだと」



 俺を見るおっさんの目が鋭さを増した。何故俺がこんなに睨まねにゃならん。



「おいこら、誰がボディガードだ。それについてもっと言いたいことが」

「ちょっと黙ってて」



 梨奈に睨まれた。こいつ今日だけでどれだけ俺を睨むんだ。出会ったばかりだぞ。蛇でもここまで睨まない。




「それで梨奈、あれほど渋っていたボディガードを何故急に」

「いい人材が見つかったから」

「お前の隣にいるその男が今まで紹介してきた彼らより優秀だと言いたいのか。まったくそうは見えないが」



 それは俺も同感だ。お世辞にも俺は強そうには見えない。



「事実として優秀です。私さっき誘拐されたけどこいつに助けられましたから」

「何!!!」



 おっさんは驚いて椅子から立ち上がった。

 そりゃ驚くわな。



 梨奈は懐から銃を取り出した。



「はいこれ。誘拐犯が持ってた銃です。こいつが警察を呼んだみたいだけどもし逃げてたらこれが有力な手がかりになると思います」

「・・・そうか」



 おっさんは落ち着きを取り戻したのか、椅子に座る。



「梨奈につけていたボディガードはどうした?」

「さぁ私を見失ってから今も必死になって探してるんじゃないかしら?やっぱり使えなかったわね」

「おい梨奈、ボディガードいるんじゃねーか。ならそいつでいいだろ」

「私を守れない時点で失格よ。それにそのボディガードは無理やりつけられただけ、私は反対だったの」



 おいおいボディガードしっかりしろよ。お前がしっかりしてれば俺は今こんな面倒なことに巻き込まれなかったんだぞ。

もし会ったら説教してやる。



「とりあえずそのボディガードは解雇するとして。おい、お前名前と年齢は」

「森林伐採、17歳。それよりもあんたからも言ってくれ、俺がボディガードなんてこいつの将来のためにもよくないと」

「今の発言からしてそうだろうな。俺が堂本であるのに偽名を名乗り敬語も使わず、不遜な態度。一応聞くが、ボディガードとしての技能はどれくらいのものなんだ?」

「技能?」

「柔道、剣道など、護身に関わるものだ」

「そんなものねぇよ」

「不採用だ!!!帰れ」



おっさんの野太い声が部屋に木霊する。



「お父様、私が決めた人ならよいと言っていましたよね?」

「確かに言ったが、限度がある。護身術も身につけていない。梨奈を守れる訳がないだろう」

「なら護衛はいりません」

「ぐぬぬ」



 おっさんは悔しそうに歯ぎしりをする。



「・・・わかった、とりあえずは認めよう。ただしこの男は仮採用だ。問題を起こせばすぐにやめさせる」

「それでかまいません。空の部屋は適当に決めますね」

「ああ好きな部屋にしろ」

「ありがとうございます。ほら行くわよ」



 俺たちは部屋をでる。



「おいこら。俺は何も承諾していないのに、なぜこんなにことが進んでいる」

「それだけ私がすごいからよ。それよりも転校することになるんだから、明日にでも学校に別れの挨拶でもしてきなさい」

「へいへい」



 梨奈に俺がどれだけ言おうがこれは決定事項だ。無理にでも逃げることは出来るが一生追い回されそうだ。



「それで俺がお前のボディガードをすることのどこが礼になるんだ。このままだと俺は危険に巻き込まれて死んでお前を一生恨むことになるぞ」

「そうね。まず私の護衛をしていた肩書きだけでこの先、大抵の人間の護衛なら大金で雇ってもらえるわよ」

「金はいらんし、就職くらい自分で探す」

「あらそうなの?なら欲しいものをいいなさい、わたしを護衛するならそれを用意してあげる」

「特に欲しいものはない」



 生憎と育った環境のせいか欲は少ない。



「そんなのありえないわね」

「何だと」

「特になにかなくてもなにかはあるはずよ」



 それは確かにそうだな。

欲のない人間はいない。もしいるならそれはもう人ではないのだろう。



「なにかは用意してあげる。だから私のボディガードになりなさい」

「そこまでして俺を求める意味がわからん。何で俺にこだわる?」

「ただ私が欲するボディガードが欲しいだけ。あんたはピッタリ当てはまったのよ。私のご機嫌をとるために気色の悪い笑顔をするやつなんていらない。自分が優秀なことを誇りにするやつ。くだらないやつばかり、私は束縛されたくないの。自分一人のほうがいいの」

「なら俺もいらないだろうが」

「それがそうもいかないのよ。お父様は絶対に護衛をつけろと言ってくるわ。こればかりは無視できないの。だから護衛をつけるとしたら私と気兼ねなくやりとりできるやつが好ましいわ」

「それはわかったんだが、転校する意味あんのか?放課後だけ護衛とかでもいいんじゃねぇのか?」

「私の学園ではボディガードはいるべき存在なの、一緒に勉学に励みながら護衛する。だから少しでも気が楽になるやつを側に置いておきたいじゃない。今日会ったばかりだけどあんた以上のボディガードこれから先いないと断言できる。それに多分あんた結構強いでしょ。だから私のボディガードになりなさい」



 無茶苦茶だが、梨奈も色々あったんだろうな。



 俺は平穏な毎日が幸せだと思っている。
 しかし退屈だったのは間違いない。だからこそ今日非日常に足を突っ込んだ。



「わかったやってやるよ」

「そう」

「ただしさっき言ってた用意してもらえるものは用意してもらうぞ」

「何、言ってみなさい」

「ひと月150万俺に支給しろ。ボディガード代ってことで」

「わかったわ。これで成立ね」



 おいおい一発オッケーかよ。

 金持ちの金銭感覚はわからん。



 梨奈は笑顔で俺に手を伸ばす。この笑顔をみれただけで今日の頑張りは報われた気がする。

 俺はその手を握った。



「これからよろしく、空」

「ああこちらこそだ、梨奈お嬢様」

「お嬢様なんていらないわ。気持ち悪い、梨奈でいいわ」

「俺も自分で言ってて気持ち悪いと思ってたところだ。梨奈」



 こうして俺のボディガード生活が始まった。


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