8 / 11
エピソード2【闇社会譚】ブラザーフッド
本文抜粋紹介【序:ヤクザ】
しおりを挟む
俺、ヤクザ――
東京の首都圏を縄張りにしている〝緋色会〟ってわりと規模の大きいところで舎弟にしてもらってる。
正式な子分格で、名前の知られてるある人から子分盃もらってかわいがってもらってる。
エンコは詰めてない。彫り物も背負ってない。
傍目には普通のビジネスマンにしか見えない――とは俺の女の弁。
とはいえ、チャカは持ってるし、シノギもいろいろやってる。自分で言うのもなんだが、頭は切れるほうで昔で言う〝インテリヤクザ〟の範疇にはぎりぎり乗っかってると思う。
まぁ、オヤジや兄貴たちと一緒に毎日危ない橋を渡ってなんとか食っていってるよ。
とは言え――
2040年代の今の御時世、古臭い任侠ヤクザなんてどこにも居ねぇ。21世紀のはじめにどっかのバカが始めた暴対法なんて笑える法律のせいで、頭の切れるヤクザはみんな一家を畳んじまった。そうして〝表社会から見えない〟状態でのヤクザ家業を始めたってわけだ。
海外に拠点を移したり、企業舎弟として一般企業に完全に偽装したり、あの手この手の方法で昔で言うヤクザには見えないように頭を捻ってるってわけだ。
今や大都市の企業の1~2割は何らかのかたちでヤクザの影響下にあると言われている。
フロント企業を設けて、その裏に隠れて、普通の企業のふりをしてシノギをするのは今や当たりまえの話だ。
身もふたもない話だが、就職活動をしてて内定もらったら、そこがガチでヤクザの根城だったなんてのは今や珍しくない。一部のブラック企業はそう言うところもあるのだ。
だが、だからと言って見極める事も難しい。
だってそうだろう?
事務所もない、看板もない、金バッジもない、
肩いからせて歩いてる三下もいない、
今のヤクザはみんな頭が切れる。力だけのバカにはできない商売なのだ。
入れ墨だってもはや過去のものだ。あんなもの彫ってるやつは居ない。
ヤクザに見えないこと――
それが今のヤクザの第一義なのに、ヤクザとしてのシンボルを体に乗せるやつが居るだろうか?
俺も入れ墨は彫ってない。風呂屋にもプールにも行けねぇ。
一部の一般人は、未だにヤクザを識別するアイコン代わりにしてる。わざわざ自分から手の内明かして地雷を踏む必要もねぇしな。
ついでにいうと、ヤクザが親子の縁組や、兄弟の契の固めで定番だった盃事もやる奴は居ない。ちょっとした略式で済ませるだけだ。
今の御時世のヤクザは、外見からはヤクザには見えない。ちょっとばかり目つきが鋭いくらいであとは普通のビジネスマンだ。だが、裏でやっていることは昔と変わらない。
いや、昔よりタチが悪い。
ヤクザと見えないからこそ、〝カタギ〟と〝本職〟と言う区別が一切無いのだ。
昔のヤクザはヤクザであることを恣意的に見せる必要がある。だから、ヤクザがヤクザで有ることの縄張りを主張する必要があった。それが〝本職〟と言うカテゴライズ。
そして、ヤクザで無い者と言う意味で非ヤクザな人間を〝カタギ〟と呼んだ。この棲み分けがかつては許されていたのだ。
だが、暴対法と言う法律がすべてを変えた。
ヤクザにヤクザで有ることを許さず、ヤクザとしての住み場を認めないというのであれば、世の中の表から消えるしか無い。
そして――
――ヤクザが〝カタギ〟と〝本職〟と言う区別を守る道理も無いのだ――
そして社会の治安は乱れた。
今や、昔ながらのカタギと本職の棲み分けを意識している連中を〝任侠ヤクザ〟と呼び、表社会からは一切見分けがつかず、裏で息を潜めて確実に世の中を掌握していく連中を〝ステルスヤクザ〟と呼ぶ。
任侠ヤクザは滅ぶ一方だ。
だが――
ステルスヤクザは確実に増えている。今、こうしているあいだにもな。
そう、俺はステルスヤクザだ。
とある商社のオーナーである〝天龍陽二郎〟と言う男を〝オヤジ〟と呼び、表向きは重役秘書として天龍のオヤジのそばで仕事に励んでいる。その裏では俺は天龍と言う男の子分であり、若衆の一人だ。
俺はもう、表社会に未練はない。
表の世界で生きていたいとも思わない。
だからこそ俺はこの〝見えないヤクザ〟の世界に足を踏み入れた。
社会を裏側から貪り尽くすために。
俺の名は〝柳澤 永慶〟
俺はヤクザ、見えないヤクザ――
おれはステルスヤクザだ。
東京の首都圏を縄張りにしている〝緋色会〟ってわりと規模の大きいところで舎弟にしてもらってる。
正式な子分格で、名前の知られてるある人から子分盃もらってかわいがってもらってる。
エンコは詰めてない。彫り物も背負ってない。
傍目には普通のビジネスマンにしか見えない――とは俺の女の弁。
とはいえ、チャカは持ってるし、シノギもいろいろやってる。自分で言うのもなんだが、頭は切れるほうで昔で言う〝インテリヤクザ〟の範疇にはぎりぎり乗っかってると思う。
まぁ、オヤジや兄貴たちと一緒に毎日危ない橋を渡ってなんとか食っていってるよ。
とは言え――
2040年代の今の御時世、古臭い任侠ヤクザなんてどこにも居ねぇ。21世紀のはじめにどっかのバカが始めた暴対法なんて笑える法律のせいで、頭の切れるヤクザはみんな一家を畳んじまった。そうして〝表社会から見えない〟状態でのヤクザ家業を始めたってわけだ。
海外に拠点を移したり、企業舎弟として一般企業に完全に偽装したり、あの手この手の方法で昔で言うヤクザには見えないように頭を捻ってるってわけだ。
今や大都市の企業の1~2割は何らかのかたちでヤクザの影響下にあると言われている。
フロント企業を設けて、その裏に隠れて、普通の企業のふりをしてシノギをするのは今や当たりまえの話だ。
身もふたもない話だが、就職活動をしてて内定もらったら、そこがガチでヤクザの根城だったなんてのは今や珍しくない。一部のブラック企業はそう言うところもあるのだ。
だが、だからと言って見極める事も難しい。
だってそうだろう?
事務所もない、看板もない、金バッジもない、
肩いからせて歩いてる三下もいない、
今のヤクザはみんな頭が切れる。力だけのバカにはできない商売なのだ。
入れ墨だってもはや過去のものだ。あんなもの彫ってるやつは居ない。
ヤクザに見えないこと――
それが今のヤクザの第一義なのに、ヤクザとしてのシンボルを体に乗せるやつが居るだろうか?
俺も入れ墨は彫ってない。風呂屋にもプールにも行けねぇ。
一部の一般人は、未だにヤクザを識別するアイコン代わりにしてる。わざわざ自分から手の内明かして地雷を踏む必要もねぇしな。
ついでにいうと、ヤクザが親子の縁組や、兄弟の契の固めで定番だった盃事もやる奴は居ない。ちょっとした略式で済ませるだけだ。
今の御時世のヤクザは、外見からはヤクザには見えない。ちょっとばかり目つきが鋭いくらいであとは普通のビジネスマンだ。だが、裏でやっていることは昔と変わらない。
いや、昔よりタチが悪い。
ヤクザと見えないからこそ、〝カタギ〟と〝本職〟と言う区別が一切無いのだ。
昔のヤクザはヤクザであることを恣意的に見せる必要がある。だから、ヤクザがヤクザで有ることの縄張りを主張する必要があった。それが〝本職〟と言うカテゴライズ。
そして、ヤクザで無い者と言う意味で非ヤクザな人間を〝カタギ〟と呼んだ。この棲み分けがかつては許されていたのだ。
だが、暴対法と言う法律がすべてを変えた。
ヤクザにヤクザで有ることを許さず、ヤクザとしての住み場を認めないというのであれば、世の中の表から消えるしか無い。
そして――
――ヤクザが〝カタギ〟と〝本職〟と言う区別を守る道理も無いのだ――
そして社会の治安は乱れた。
今や、昔ながらのカタギと本職の棲み分けを意識している連中を〝任侠ヤクザ〟と呼び、表社会からは一切見分けがつかず、裏で息を潜めて確実に世の中を掌握していく連中を〝ステルスヤクザ〟と呼ぶ。
任侠ヤクザは滅ぶ一方だ。
だが――
ステルスヤクザは確実に増えている。今、こうしているあいだにもな。
そう、俺はステルスヤクザだ。
とある商社のオーナーである〝天龍陽二郎〟と言う男を〝オヤジ〟と呼び、表向きは重役秘書として天龍のオヤジのそばで仕事に励んでいる。その裏では俺は天龍と言う男の子分であり、若衆の一人だ。
俺はもう、表社会に未練はない。
表の世界で生きていたいとも思わない。
だからこそ俺はこの〝見えないヤクザ〟の世界に足を踏み入れた。
社会を裏側から貪り尽くすために。
俺の名は〝柳澤 永慶〟
俺はヤクザ、見えないヤクザ――
おれはステルスヤクザだ。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる