メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]

美風慶伍

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第2章エクスプレス グランドプロローグ

プレストーリー 滅びの島のロンサムプリンセス/道化師とバケガエル

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「まいりましたねぇ…… 姫君はどこにむかわれたのか。せめて足がかりだけでも見つかればいいのですが」

 そこは東京アバディーンの中でも最も高いところに位置していた。ダストフォレストの中に廃棄物処理施設の一つに廃棄煙突がある。近隣の市街区に影響を及ぼさないように、汚染物の除去フィルターを幾重にも重ねた上で、それは数十mほどの高さから無色透明の排煙を昼夜にわたり吐いていた。

 そして――誰も気づかないが、その煙突の頭頂部に一人の影が立っている。
 それはピエロともいう、ジェスターともいう、アルルカンと呼ばれることもある。
 赤い衣、黄色いブーツ、紫の手袋に、金色の角付き帽子、角の数は2つで角の先には柔らかい房状の球体がついていた。襟元には派手なオレンジ色のリボン――、派手な笑い顔の仮面をつけた道化者。彼は自らの名をクラウンと名乗っていた。
 左手を腰に当て、右手を目元でかざして身を乗り出す。その視線の先に誰かを探しているかのようだ。
 
「まったく。ディンキー老のお身内でなければ打ち捨ててしまうところです」

 ぶつくさと愚痴をこぼすかの様な言い方に少しばかりのいらだちが感じられる。
 
「こんなところでウロウロしている場合ではないというのに」

 そう愚痴ると右手も腰にあてて大きくため息をついた。

「流石に、この街に入られては早々簡単には見つけることは困難かもしれませんねぇ。何しろ、ここには〝アイツ〟がいますから」

 アイツと呼び捨てると右の人差し指をこめかみに当てて思案げな顔をする。彼なりに頭の痛い案件のようだ。そして右手をこめかみから離すと視線をこの東京アバディーンの街全体へ投げかけて感慨深げに独り言を始める。
 
「いえ、あの娘がこの街に流れ着いたのはもはや運命といえるかもしれませんねぇ。運命の掃き溜め、欲望の集積場、絶望の廃棄物処理場――、この滅びの島は日本であって日本でない。ここは世界のどこでもない場所。ディンキー老亡き今、あの娘は最後の運命の糸からも見放されたのかもしれません。あるいはもはや――」

 彼の名はクラウンと言う。
 あの有明のビルの中でディアリオを手玉に取った人物だ。その彼すらもこの街の中では悲観的な言葉を吐かざるを得なかった。これからどうするか――、思案をしているその時である。
 
「クラウンたま」
 
 そのクラウンの足元から声がする。声のする方に視線を向ければペタペタと足音を鳴らしてユーモラスなシルエットのお化けガエルが煙突を登ってきている。体の大きさは1mちょっとくらいでそれほど大きくはない。緑の体によく目立つ2つのまん丸目玉。まるっきりのゆるキャラの様である。
 
「おや、来たのですか。イプシロン。どの面下げて私の所に来れるのか」
「あやや、クラウンたま。激おこ?」
「当たり前です、姫君のお相手すらもできないでどうします! まったく余計な手間をかけさせて! ほんとにもう!」
 
 クラウンはデフォルメ口調でイプシロンを叱責した。自らの主人に怒られて、イプシロンもしょんぼりである。
 
「ごめんちゃい」
「謝って済む問題ではありません!」
「しょぼーん」

 まるっきりのコミックのようなやり取りだが一通り怒りつけたおかげで多少は溜飲が下がったのだろう。クラウンの口調が穏やかになる。
 
「しかし、仕方ない面もあります」
「え? どゆこと?」
「あの姫君は不完全とはいえディンキー老のマリオネットとしては究極のスペックを持つモデルです。本当に真の力に目覚めれば我々とて太刀打ち出来るかわかりません。それでなくともあの子の〝力〟は非常に厄介です」
「あのピカピカ?」
「えぇ。光圧制御システム。光量子理論により光を超高圧の粒子として制御し『光の奔流』をつくり上げる。本来は光子ロケットの原理に用いられるものですが、使い方を変えればアレほど理想的な破壊兵器はありません。原子力のような放射線問題もないし、プラズマのように電磁気で防御されることもない。それに加え不完全とはいえ、世界各地の戦場を転戦した経験は伊達ではない。自らが生み出す光を自在に操って最新鋭の近代戦車を真っ二つにする事も簡単にやってのける。あの娘のお守役のお前が無事だったのはせめてもの幸いです。ま、脱走はあるていど想定していましたからまだなんとかなります。今回の事は大目に見ましょう」
「ありがとです」
「いえいえどういたしまして」

 クラウンが許してくれたことをイプシロンが感謝すれば、クラウンも大げさに頭を下げて返礼していた。

「そだ! クラウンたま。ゼータとイオタが来たお」
「おや、彼らもこの国に来ましたか」
「あい。今度のこと話したらもう〝あの街〟で姫さまのこと探してる」
「それはそれは。私達二人だけでは少々骨です。あの子たちなら人探しにはうってつけでしょう」

 クラウンがそう告げた時だ。
 
〔クラウン様――!!〕

 クラウンとイプシロンの耳に可愛らしい女の子の声がする。甘く鼻に抜けるような舌足らずな口調であった。
 
〔おや、噂をすれば。イオタではありませんか〕
〔やほー! おひさし! えっとねぇ例の女の子見つけたよ! 今、ゼータが捕捉して追いかけてる! 何なら捕まえちゃおっか?〕
〔まぁ、待ちなさい。手を出してはいけません〕
〔えぇ? なんでぇ?!〕
〔その子は非常に厄介です。本気で暴れられたらただではすみません。マスコミに知られて警察に動かれても面倒です。うまく説得して話を丸く収めなければなりません〕
〔ふーん、そうなんだ〕
〔そういう事です。お前の現在座標を頼りにそちらに向かいます。くれぐれも無茶をしてはなりませんよ〕
〔はーいっ! それじゃまたね!〕

 まるっきり子供を相手にするようなやり取りを終えるとクラウンはイプシロンに語りかける。
 
「聞きましたね? イプシロン」
「あい! イオタが見つけた!」
「そう言う事です。今から私達も追いますよ」
「あい!」

 クラウンが掻き消えるように姿を消すとそれを追ってイプシロンも姿を消す。それはまるで立体映像が消えたかのように、あとには何の痕跡も残さなかったのである。
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