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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/集結編
Part19 第1方面涙路署捜査課/状況説明
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一人の男性捜査員が今井に促されて状況を簡潔に伝える。
「武装警官部隊・盤古から4小隊が救援に向かったそうです」
「4小隊? そんなに?」
「はい、第2科警研の新谷所長が本庁の特攻装警運営委員会に打診してそこから動いたそうです」
こう言うケースの場合、回収役と支援戦闘役とで2小隊くらいが妥当なはずだ。予想を超える人数に今井も驚かざるを得ない。
「そうなの。でもグラウザーとセンチュリーの回収に2小隊と考えても、残りは?」
今井はエレベーターに乗り込みながら再び問いかける。今井と一緒にエレベーターに乗り込んだ彼は更に言葉を続けた。
「そこから先は機密事項扱いのため、詳細な説明は開示されていません。グラウザーのラインで警備部の近衛課長にも問い合わせましたが、警備部サイドでもまだ事実関係は掌握しかねて居るようです。例の刑事部公安部合同のベルトコーネ追跡のチームの管轄となって部外秘扱いになるそうです」
「なんてこと――、これでは混乱する一方ね」
事実が最悪のまま推移し続ける現状に今井も溜息を吐かざるをえない。だが、それでも今井が育て上げてきた部下たちは優秀だった。ギリギリの状況の中でも諦めては居なかった。もう一人が声をかけてくる。
「課長、よろしいでしょうか?」
今井は声の主の方を振り向く。機動捜査班の一人で増沢と言う男だ。
「これは俺達の勝手な推測となりますがアトラスの追跡探索のためかと思われます」
「え? どう言う事? アトラスたちがなぜこの件に絡んでくるの?」
「これは本庁筋ではなく湾岸の水上署の職員から漏れてきた情報なのですが、数日前にアトラスが水上署の偽装船舶の使用のための協力を打診していたそうなんです」
「アトラスが水上署に?」
それは想定外の情報だった。今井も驚いた風だ。ちょうどその時にエレベーターが止まり扉が開いた。
「それで?」
「おそらくは以前に発生したベルトコーネの逃走のその後の追跡作戦の一環だと思うんです。そして偽装船舶を使ってまで行うことがあるとすれば――」
そこまで話を聞いて今井にもピンとくる物があった。捜査課の執務室に向かいながら言葉を続ける。
「東京アバディーンへの上陸工作ね?」
「はい、それで8割9割間違いないと思います。グラウザーは外部協力者のツテを辿って陸路から潜入しましたが、アトラスたちは洋上から上陸したのでしょう。そして上陸後において何らかのトラブルに見舞われた」
「なるほど、それでアトラスの探索のために2小隊を向かわせるって訳ね」
完全に情報不足に陥っている情報での推測だったが、今井としては今後の方針を考えるための指針にするには必要十分だった。部下の言葉に対してハッキリと頷いた。
「よくやったわね。おかげでこれからの指針について決められるわ」
圧倒的に足りない情報、本庁でなく所轄であるがゆえの情報遮断。不利な状況下でも諦めずに僅かな情報をかき集めて積み上げるその姿は、警察の捜査課に身を置く者として最も大切な物だ。精一杯のねぎらいの言葉をかける。それはさらなるやる気と勢いを部下たちに対してもたらすだろう。
「それでどれだけ集まってる?」
「全員集合しています。警ら係の協力も取り付けてあります。他の捜査係からも協力してくれるそうです」
「わかったわ。みんなを集めてちょうだい」
「はい!」
部下からのその言葉を耳にしながら捜査課の部屋へと入っていく。するとそこにはすでに複数の捜査課職員たちが待機していた。機動捜査課の朝を除く9名。捜査1係から5名、捜査2係からも3名ほどが協力してくれる事となった。彼らを目の当たりにして席につかずに歩きながら今井は声を発した。
「ミーティングをはじめます! みんな集まって!」
多数の刑事たちが一斉に集まってくる。いずれも今井を信じて付き従ってくれている優秀な部下たちである。若きから老いた者まで数多くが揃っている。すでにいつでも行動できるように意識は高まっていた。
「有明沖埋立地帯の湾岸特別スラムに潜入調査に着任していた朝刑事とグラウザーに緊急事態が発生しています。2人の所在確認と救出を行います。宝田君状況説明を」
「はい!」
今井に求められて宝田は説明を始めた。
「本日、夕方5時過ぎより開始されていた朝・グラウザーの両名による東京アバディーン潜入調査においてグラウザーと同行していた特攻装警3号センチュリーが、現在手配中の容疑アンドロイド体・個称ベルトコーネと遭遇。洋上からの望遠映像により交戦状態にある事が情報機動隊からの提供映像により判明しました。その際、同行していたはずの朝巡査部長刑事の姿は確認できず現在消息不明となっています。これに対し武装警官部隊・盤古より4小隊が救援及び回収のために出動することが確認されています。なお、確認済み情報として現場のグラウザーより特攻装警4号ディアリオを経由して第2科警研に、追加2次武装の装着の支援要請がなされたことが分かっています」
宝田のその言葉に飛島が問いかける。
「例の開発途中の〝鎧〟だろう? 非常戦闘用の」
「はい。ベルトコーネとの戦闘の緊急事態打開のためにグラウザーから強い要請がなされたそうです」
「まだあれは未承認だろうに? よく許可が出たなぁ」
飛島が驚き混じりに推測を述べれば今井が否定する。
「いえ、承認はまだ出ていないでしょうね。おそらく現場のグラウザー自身の判断によるものよ」
「アイツ自身の?」
「えぇ」
今井の推測に皆が驚きを見せる。それを代表したように飛島が問いかえすが、それを今井はシンプルに肯定した。
「それだけ彼の現場判断能力が成長したと言う事よ。それに相手はあのベルトコーネよ? それ以外に選択肢は無いわ。私が指示を仰がれたとしてもゴーサインを出すでしょうね」
「じゃあなんで、こっちに連絡しなかったんでしょうね」
「そうですね。管理監督の責任は我々に有ります。開発元経由で直接お偉方の所と言うのも困りますね」
飛島の疑問を宝田が補足する。当然の疑問だった。本来の業務上の流れから行けば直属の管理責任者である今井の所へと連絡が来るべきだ。その点は今井も合点がいかない。だが優先順位は他にある。
「気持ちは分からないでもないわ。あとで新谷所長に事情を聞くことにします。でも今は話を進めて」
「はい」
皆が抱きつつある疑問を今井が矛先をそらしたその時である。
「今井課長! 涙路署の皆さん! お忙しいところ失礼します!」
捜査課の課室に明朗な声をかけながら入ってくる人影がある。皆の視線が一斉に集まるがその人物の名を今井も驚きを持って口にしていた。
「新谷所長?! どうしてここに?」
「武装警官部隊・盤古から4小隊が救援に向かったそうです」
「4小隊? そんなに?」
「はい、第2科警研の新谷所長が本庁の特攻装警運営委員会に打診してそこから動いたそうです」
こう言うケースの場合、回収役と支援戦闘役とで2小隊くらいが妥当なはずだ。予想を超える人数に今井も驚かざるを得ない。
「そうなの。でもグラウザーとセンチュリーの回収に2小隊と考えても、残りは?」
今井はエレベーターに乗り込みながら再び問いかける。今井と一緒にエレベーターに乗り込んだ彼は更に言葉を続けた。
「そこから先は機密事項扱いのため、詳細な説明は開示されていません。グラウザーのラインで警備部の近衛課長にも問い合わせましたが、警備部サイドでもまだ事実関係は掌握しかねて居るようです。例の刑事部公安部合同のベルトコーネ追跡のチームの管轄となって部外秘扱いになるそうです」
「なんてこと――、これでは混乱する一方ね」
事実が最悪のまま推移し続ける現状に今井も溜息を吐かざるをえない。だが、それでも今井が育て上げてきた部下たちは優秀だった。ギリギリの状況の中でも諦めては居なかった。もう一人が声をかけてくる。
「課長、よろしいでしょうか?」
今井は声の主の方を振り向く。機動捜査班の一人で増沢と言う男だ。
「これは俺達の勝手な推測となりますがアトラスの追跡探索のためかと思われます」
「え? どう言う事? アトラスたちがなぜこの件に絡んでくるの?」
「これは本庁筋ではなく湾岸の水上署の職員から漏れてきた情報なのですが、数日前にアトラスが水上署の偽装船舶の使用のための協力を打診していたそうなんです」
「アトラスが水上署に?」
それは想定外の情報だった。今井も驚いた風だ。ちょうどその時にエレベーターが止まり扉が開いた。
「それで?」
「おそらくは以前に発生したベルトコーネの逃走のその後の追跡作戦の一環だと思うんです。そして偽装船舶を使ってまで行うことがあるとすれば――」
そこまで話を聞いて今井にもピンとくる物があった。捜査課の執務室に向かいながら言葉を続ける。
「東京アバディーンへの上陸工作ね?」
「はい、それで8割9割間違いないと思います。グラウザーは外部協力者のツテを辿って陸路から潜入しましたが、アトラスたちは洋上から上陸したのでしょう。そして上陸後において何らかのトラブルに見舞われた」
「なるほど、それでアトラスの探索のために2小隊を向かわせるって訳ね」
完全に情報不足に陥っている情報での推測だったが、今井としては今後の方針を考えるための指針にするには必要十分だった。部下の言葉に対してハッキリと頷いた。
「よくやったわね。おかげでこれからの指針について決められるわ」
圧倒的に足りない情報、本庁でなく所轄であるがゆえの情報遮断。不利な状況下でも諦めずに僅かな情報をかき集めて積み上げるその姿は、警察の捜査課に身を置く者として最も大切な物だ。精一杯のねぎらいの言葉をかける。それはさらなるやる気と勢いを部下たちに対してもたらすだろう。
「それでどれだけ集まってる?」
「全員集合しています。警ら係の協力も取り付けてあります。他の捜査係からも協力してくれるそうです」
「わかったわ。みんなを集めてちょうだい」
「はい!」
部下からのその言葉を耳にしながら捜査課の部屋へと入っていく。するとそこにはすでに複数の捜査課職員たちが待機していた。機動捜査課の朝を除く9名。捜査1係から5名、捜査2係からも3名ほどが協力してくれる事となった。彼らを目の当たりにして席につかずに歩きながら今井は声を発した。
「ミーティングをはじめます! みんな集まって!」
多数の刑事たちが一斉に集まってくる。いずれも今井を信じて付き従ってくれている優秀な部下たちである。若きから老いた者まで数多くが揃っている。すでにいつでも行動できるように意識は高まっていた。
「有明沖埋立地帯の湾岸特別スラムに潜入調査に着任していた朝刑事とグラウザーに緊急事態が発生しています。2人の所在確認と救出を行います。宝田君状況説明を」
「はい!」
今井に求められて宝田は説明を始めた。
「本日、夕方5時過ぎより開始されていた朝・グラウザーの両名による東京アバディーン潜入調査においてグラウザーと同行していた特攻装警3号センチュリーが、現在手配中の容疑アンドロイド体・個称ベルトコーネと遭遇。洋上からの望遠映像により交戦状態にある事が情報機動隊からの提供映像により判明しました。その際、同行していたはずの朝巡査部長刑事の姿は確認できず現在消息不明となっています。これに対し武装警官部隊・盤古より4小隊が救援及び回収のために出動することが確認されています。なお、確認済み情報として現場のグラウザーより特攻装警4号ディアリオを経由して第2科警研に、追加2次武装の装着の支援要請がなされたことが分かっています」
宝田のその言葉に飛島が問いかける。
「例の開発途中の〝鎧〟だろう? 非常戦闘用の」
「はい。ベルトコーネとの戦闘の緊急事態打開のためにグラウザーから強い要請がなされたそうです」
「まだあれは未承認だろうに? よく許可が出たなぁ」
飛島が驚き混じりに推測を述べれば今井が否定する。
「いえ、承認はまだ出ていないでしょうね。おそらく現場のグラウザー自身の判断によるものよ」
「アイツ自身の?」
「えぇ」
今井の推測に皆が驚きを見せる。それを代表したように飛島が問いかえすが、それを今井はシンプルに肯定した。
「それだけ彼の現場判断能力が成長したと言う事よ。それに相手はあのベルトコーネよ? それ以外に選択肢は無いわ。私が指示を仰がれたとしてもゴーサインを出すでしょうね」
「じゃあなんで、こっちに連絡しなかったんでしょうね」
「そうですね。管理監督の責任は我々に有ります。開発元経由で直接お偉方の所と言うのも困りますね」
飛島の疑問を宝田が補足する。当然の疑問だった。本来の業務上の流れから行けば直属の管理責任者である今井の所へと連絡が来るべきだ。その点は今井も合点がいかない。だが優先順位は他にある。
「気持ちは分からないでもないわ。あとで新谷所長に事情を聞くことにします。でも今は話を進めて」
「はい」
皆が抱きつつある疑問を今井が矛先をそらしたその時である。
「今井課長! 涙路署の皆さん! お忙しいところ失礼します!」
捜査課の課室に明朗な声をかけながら入ってくる人影がある。皆の視線が一斉に集まるがその人物の名を今井も驚きを持って口にしていた。
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