『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト

文字の大きさ
4 / 10

第四話 もう一つの提案

しおりを挟む
 おずおずと答えると、お父様は顔を真っ青にし、兄様はやっぱりかとため息をつき、エドワード殿下は…変わらずに爽やかな笑みを浮かべていた。

「うん、君ならそう言うんじゃないかと思っていたよ。返事はすぐにとは言わない。実は、今日はもう一つ大事な話があって来たんだ」

 依然として楽しそうに目を細めるエドワード殿下は、一枚の紙を取り出した。目で内容を確かめるように促され、恐る恐るその紙を手に取る。

「…これは!」

 サッと内容に目を通した私の目は、エドワード殿下の言葉を借りるならば、獲物を狩る獣のように煌めいたことだろう。
 私はお父様に素早く紙を手渡し、中身に目を通したお父様も驚き目を見開いている。だが、その目の奥には商売人のギラギラした鋭い光が宿っていた。

「…へぇ、エドワードの誕生パーティの装飾から食事の手配まで、モントワール商会…いや、マリリンに一任するという依頼書か」

 お父様の手からひょいと紙を奪い取って目を通した兄様がニヤリと口の端を上げた。お父様も兄様も、殿下がいらっしゃるというのになんて悪いお顔を…私も人のことは言えないのでしょうが。

「ああ、二ヶ月後に王城で僕の二十歳の誕生日を祝うパーティが開かれるんだ。是非ともその全ての手配を君に任せたい。頼めるかい?」
「もちろんですわ!やらせてください!」

 私は頭で考える前に殿下のお話に飛びついてしまった。でも仕方がないと思う。だってこんなに大きなお仕事に関われるなんて!モントワール商会の力を総動員して素敵なパーティにしてみせるわ!

「あはは、君ならそう言ってくれると思ったよ。本当はそのパーティで僕のパートナーも務めてくれると嬉しいんだけど…これから二ヶ月間、準備で色々と顔を合わせるだろうし、その中で少しずつ僕のことを知ってほしい」
「っ、で、殿下…」

 曇りのない真っ直ぐな瞳に見据えられ、頬が染まらない女の子なんてきっといない。だから私が今赤い顔をしているのも他意はないし仕方がないこと。

「ああ、今まで誕生パーティは煩わしいばかりだったけど、今回ばかりは本当に楽しみだ。よろしくね、マリリン嬢」
「…よ、よろしくお願いいたします」

 台風のようにやってきたエドワード殿下は、書類にしたためた私のサインを確かめると、満足げに外で控える従者を引き連れて帰って行った。



 こうして誕生パーティに向けた準備の日々が始まったのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私に婚約者がいたらしい

来栖りんご
恋愛
学園に通っている公爵家令嬢のアリスは親友であるソフィアと話をしていた。ソフィアが言うには私に婚約者がいると言う。しかし私には婚約者がいる覚えがないのだが…。遂に婚約者と屋敷での生活が始まったが私に回復魔法が使えることが発覚し、トラブルに巻き込まれていく。

頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして

犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。 王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。 失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり… この薔薇を育てた人は!?

【完結】婚約者とのお茶の時に交換条件。「 飲んでみて?」

BBやっこ
恋愛
婚約者との交流といえば、お茶の時間。客間であっていたけど「飽きた」という言葉で、しょうがなくテラスにいる。毒物にできる植物もあるのに危機感がないのか、護衛を信用しているのかわからない婚約者。 王位継承権を持つ、一応王子だ。継承一位でもなければこの平和な国で、王になる事もない。はっきり言って微妙。その男とお茶の時間は妙な沈黙が続く。そして事件は起きた。 「起こしたの間違いでしょう?お嬢様。」

姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。

coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。 お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません? 私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。

処理中です...