【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

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第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される

24. ダンジョンの管理者

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「あ、やべ」
「どうかしましたか?ホムラ様」

 エレインがダンジョンの走り込みに行って数刻が経った頃、アグニが淹れたお茶をのんびり堪能していたホムラが、不意に口を開いた。首を傾げるアグニに、ホムラは今更気づいたことを述べる。

「いや、おチビに戻りの魔法陣持たせてなかったなって思ってな」
「…それ、まずくないですか?」
「…ヤベェよな」

 エレインは恐らく転移門の魔石は持っていないだろう。そうなると、ホムラやアグニがダンジョンを探索する時に常用している魔法陣が描かれた布がなければ、順当にダンジョンを登ってこないと70階層まで戻ることは叶わない。

「あいつ…今どこにいるんだ?」

 迎えに行くにしても、果たして今どこにいるのか。行き先も聞かずに放り込んでしまったことが悔やまれる。

 ホムラがどうやってエレインを回収しようか頭を悩ませているとーーー

 パァァ…と淡い緑色の光が突如ホムラとアグニの前に現れた。

「この光は…もしや?」
「げっ」

 心当たりがあるのか、素早く新しいカップを用意するアグニに対し、露骨に嫌な顔をするホムラ。

 淡い光が次第に人の姿を形どり、パンッと光が霧散すると、そこに現れたのは…

「はぁ…やっぱりお前か」
「うふふ、久しぶりね、ホムラ様」

 艶やかな黄緑色の髪を靡かせる、ホムラのよく知る人物であった。

「って…お前が連れてるの…おチビじゃねぇか!」
「あ、無事でしたか。よかったです」

 女性の後ろから顔を出したエレインは、ホムラとアグニを確認すると安心した様子で座り込んだ。

「あ…も、戻ってこれたぁぁぁ!よかったぁぁぁあ」
「ったく、帰りのことをちゃんと考えろよな」
「えっ!?嘘でしょ!?ホムラさんが有無を言わさず魔法陣に放り込んだんでしょうが!」
「あ?そうだったか?」

 ホムラの言いようにエレインが目を吊り上げて抗議するが、ホムラはどこ吹く風である。そのやり取りを見ていたアグニが空気も読まず、やれやれと肩をすくめた。

「またまたぁ~ホムラ様ったら、かなり心配してたくせに…ったぁ!」

 そして案の定、脳天にホムラの拳を喰らって、頭を抱えてうずくまった。

「ん?ちょっと待ってくださいね…ホムラさん、この綺麗なお姉さんと知り合いなんですか?あっ、お名前聞いてなかった」

 ホムラとアグニのやり取りを苦笑しながら見ていたエレインが、そういえばと考え込んだタイミングで、ようやく女性が口を開いた。

「ふふふ、初めまして。私は樹人族ドライアドのドリューンよ。ドリューさんって呼んでね」
「ど、どらいあど!?」

 自己紹介を受けて、エレインは驚きのあまり目を見開いた。

 樹人族ドライアドは、人嫌いで、普段は美しい森の奥深くに生息し、滅多に人前に現れないという。
 そんな樹人族ドライアドが目の前でニコニコと人当たり良く微笑んでいる。
 もちろんエレインは初めてお目にかかる存在であった。

「あっ、あの!改めて、助けてくださり本当にありがとうございました。私、エレインって言います」
「うふふ、よろしくね。…ところで、何で冒険者で人間のアナタがホムラ様の階層に居座っているのかしら?ホムラ様とはどういった関係なのかしら?もちろん詳しく教えてくれるわよね?」
「えっ、と…?」

 ドリューンに向き直り、ぺこりと頭を下げたエレイン。一方のドリューンは頬に頬を当ててニッコリ微笑んでいるのだが、なんだかピリリと空気が張り詰めた気がした。戸惑うエレインは、助けを求めてぎこちなくホムラに視線を移した。

「はぁー…めんどくせぇな…お前だったら大体のことは把握してるんだろ?俺に挑みに来たパーティに捨てられたコイツを面白そうだから拾った。今は俺の弟子。以上」
「あら、失礼ね。私だって、常にダンジョンの隅々まで把握している訳じゃないのよ?いつもそんなことしてたら疲れちゃうじゃない。…ふぅん、じゃあエレインちゃんはここに住んでるってことなのかしら?……チェックを怠っていたのが悔やまれるわね」

 ギリッと美しい爪を噛み締めるドリューン。何が何だか分からないエレインは、尚も説明を求めてホムラに念を送る。それに気づいたホムラは鬱陶しそうに片手を振ってエレインの念を払う仕草をした。

「もうっ!ドリューさん?…って何者なんですか?私、ダンジョンで怪我をしたところを魔法で助けていただきました。それに、ここまで転移もしてたし…樹人族ドライアドってそんな多様なことができるんですか??」

 痺れを切らしたエレインが、前のめりになってホムラに尋ねる。

「ったく…こいつはな、言わばダンジョンの管理者だよ。転移魔法でダンジョン内ならどこへでもいける。植物を管理してっからその気になったら、今ダンジョン内で何が起こっているかまで把握できるって訳だ。異物が入り込んだら処分もする」
「ダンジョンの管理者…!す、すごい…」

 エレインは羨望の眼差しでドリューンを見つめる。そのような存在がいたなんて、知らなかった。
 当のドリューンは満更でもなさそうに得意げに微笑んでいる。そして、ぽんっと手を叩くと、ホムラにとあることを提案した。

「ねぇ、せっかく久しぶりに遊びに来たんだし、私、ホムラ様の戦ってるお姿を拝みたいわぁ」
「はぁ?勝手に押しかけてきて何いってんだ?今日はもう店じまいだよ」
「そんなこと言わないでよ。ダンジョンでエレインちゃんの魔法を少し見たんだけど、中々の威力に見えたわ。2人の模擬戦でもいつもの修行でも何でもいいから見せてちょうだいな」
「はぁー、めんどくせぇな…おい、おチビ。こいつは一回言い出したら絶対折れねぇから諦めるしかない。さっさと終わらせっぞ」
「えっ!?今からまたやるんですかぁぁ!?」

 エレインは肩を落としながらもすごすごとボスの間へと向かった。ドリューンもウキウキと後に続いていく。

「……おい、アグニ。用意しとけよ」
「はいはい、分かってますよ」

 コソコソとホムラがアグニに指示を出し、アグニは静かに指示されたものを用意して、ボスの間に向かった。
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