【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

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第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される

26. 補助魔法の使い方

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「いくらなんでも限度というものがあるでしょう!!ドリューさんは樹人族ドライアドですよ!?火属性が弱点だってちょっと考えたらわかるでしょう!?」

 周りへの配慮のかけらもないホムラとエレインを、アグニが怒鳴りつけた。ドリューンを熱風から守るために広げた翼はそのままに、怒りのあまり変化も少し解けて鼻が盛り上がり、鋭い牙を覗かせている。ギョロリとひん剥かれた目玉が2人を睨みつけている。

「ごっ、ごめんなさいいい」
「…チッ、いいところだったのに」
「はい?何ですか??」
「………悪かったよ」

 怒り浸透のアグニに対して、半泣きでペコペコと平謝りをするエレインと対照的に不貞腐れているホムラ。アグニに気圧されて渋々謝罪の言葉を口にしたが、反省の色はない。

「まあまあ、私は大丈夫だからそんなに怒らないで?」

 燃えかけていた当人のドリューンは、身体から雫を滴らせながらも笑顔でアグニを制した。

「はぁ…アナタいつもうちに来ては燃えてますよね?毎度冷や冷やさせられるこちらの身にもなってくださいよ!」
「多少のダメージならすぐ再生するから問題ないのよ?」
「そういう問題じゃないんです!」

 のほほんと微笑むドリューンにも困ったものだとアグニは肩を落とす。実のところドリューンはたまに70階層に顔を出しては、ホムラの炎にあてられてどこかしら燃やしているのだ。
 ここには自分以外に常識人は居ないのか。いや、人じゃなくて竜だから常識竜か。

「仕方ねぇ、じゃあ魔法は無しでもうちょい特訓するか」
「「えっ、まだやるんですか?!」」

 ホムラの言葉に、今度はエレインとアグニが声を揃えた。

「不完全燃焼なんだよ。アグニ、お前が相手してくれんのか?」
「よし、エレイン頑張るんですよ」
「ちょっとアグニちゃん!?嘘でしょ!?」

 自分に矛先が向くと、アグニはあっさりエレインを差し出した。

「よっしゃ、とりあえず俺が刀で攻撃するから、おチビはそれを防げ」
「なんですと!?」
「補助魔法で強化すりゃあ多少何とかなるだろ?いくぜ」
「ちょちょちょ、ちょ待っ…ぎゃぁぁっ!?」

 ホムラは問答無用で一度収めていた灼刀を抜刀すると、勢いよくエレインに切り掛かった。エレインは咄嗟に杖で攻撃を受けるが、素ではホムラの攻撃力に耐えきれない。

「うぐぅぅぅ…きょ、《強化》!」

 刀を受けながら、杖と自分の防御力、ついでに脚力を強化した。

「よーし、どんどん行くぞ!」
「いやぁぁあ、しぬぅぅっ」

 手加減知らずなホムラは、変則的に刀で斬りかかる。エレインはサッと太刀を躱したり、杖で受け流したりとひたすら防戦する。

 そんな様子を眺めていたドリューンは、ポタポタ雫を垂らしながら、何やら考え込むようにしてエレインを観察していた。

「ねぇ、アグニ。エレインちゃんのあの魔法…」
「ん?ああ、補助魔法ですか?変わった魔法ですよね。なんでも、対象者の能力値を増強する魔法らしいです。あ、タオル要ります?」
「そう……あ、ありがとう」

 アグニが差し出したタオルを受け取り、身体を拭きながらも、ドリューンはエレインから目を離さない。

 視線の先では、尚もホムラの凄まじい猛攻を、エレインが悲鳴を上げながらも紙一重で凌いでいた。

「やるじゃねぇか!おらおら!どんどんいくぞ!」
「ひぇぇぇ!!助けてぇぇ!」
「がんばってくださーい」

 爛々と眼を輝かせるホムラに対して、涙目で助けを求めるエレイン。必死にアグニに目配せをしているが、巻き込まれるのはゴメンなので、アグニは感情の篭っていない声で返事をした。

「ふぅん、防御力もそこそこだが、脚力を強化してることで踏ん張りが効いてるのか?……ん?」
「わわわっ」

 戦いながらもエレインのことを分析していたホムラは、ふとあることに思い至り、攻撃を止めて考え込んだ。急に攻撃が止まったことで、エレインは体勢を崩して前のめりに転んでしまった。

「お前、魔法を打つ時にまだ制御が出来ねぇよな。補助魔法で脚力強化すりゃあ踏ん張りが効いて安定するんじゃねぇか?」
「え…?あっ、確かに…」

 エレインはホムラの攻撃を受けつつも何とか倒れ込まずに身体を支えられていた。それは強化された脚の力のおかげなのだろう。ホムラの言う通り、威力ばかり先行して抑えきれない魔法でも、足りない部分を補助魔法で補えば、ある程度形になるかもしれない。そわりとエレインの探究心が疼いた。

「た、試してみたいです…!」
「よし、やってみろ!」
「火球はダメですからね!!!?」
「うっ」

 アグニに釘を刺されたので、危うくいつものように火球を作りかけたエレインは、慌てて|《水球《ウォーターボール》》を試してみることにする。補助魔法を解除せずに、脚に力を集中させながらも杖の先に魔力を集める。
 空気中の水分が凝縮し、杖の先で渦を巻きながら球体を形作っていく。いつもであれば、整形段階でバランスを崩して魔法が明後日の方向に飛んで行くのだが、脚力強化をしているためか、上手く地に足がついている感覚がする。

「ほー、思った通りだな。よし、じゃああそこの柱に向かって打ってみろ」
「は、はいっ!えいっ」

 エレインはホムラが指差した柱に意識を集中させ、思い切って水球を放った。すると、放たれた水の塊は勢いよく柱に向かっていき、柱に直撃するとバシャン!と音を立てて弾けた。

「で、できた…」
「やるじゃねぇか!」

 杖を構えたままポカンと口を開けるエレイン。ホムラも嬉しそうにエレインに駆け寄ると、ガシガシと頭を乱暴に撫でた。

「ちょ、いたたた」

 エレインは痛がりながらも、思わず口元が緩んでしまう。補助魔法で脚に注意しつつも攻撃魔法を使うので、少しの難しさはあるが、練習をすればある程度実戦でも活かせるだろう。
 いくら高火力の魔法が使えても、敵に当たらなければ意味をなさない。針に糸を通すような緻密さで、敵の弱点を狙えて初めて一流の冒険者なのだとエレインは考えていた。まだまだ課題は山積みだが、一歩自分の理想の姿に近付けた気がした。

 一連の様子を静かに見守っていたドリューンが、不意に口を開いた。

「気になることができたから、私帰るわね」
「はぁ?」

 急な発言にホムラは怪訝な顔をする。勝手に押しかけ来て、戦ってるところが見たいと駄々をこねた割にはえらくあっさりと帰るものだ。

「…ねぇ、エレインちゃん」
「はい?何ですか?」

 ドリューンは、エレインの前まで歩み寄ると、膝を曲げて視線を合わせた。

「アナタ、その補助魔法?は誰に教わったの?」
「え…そ、祖母です」
「そう…お婆様が…ありがとう。じゃあね、また遊びに来るわね」

 指を唇に当てて考え込むドリューンであったが、静かに首を振ると、パッと顔を上げた。そしてエレインに微笑みかけると、徐々に光の粒子となりその姿を消した。

「…アイツ、何しに来たんだァ?」

 嵐のように訪れては帰ってしまったドリューンに対して、ガシガシ頭をかきながら、ホムラは首を傾げたのだった。
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