【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

文字の大きさ
42 / 109
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される

41. 攫われたエレイン

しおりを挟む
「あァ?今日も地上へ行くのかよ」

 リリスとの約束の日、エレインは魔法陣の傍らでホムラと向かい合っていた。

「はい!約束したので」
「元パーティの治癒師の女だろ?あれだけ蔑ろにされて来たのに今更仲良くなれるもんかね」

 ホムラは訳が分からないというように首を傾げている。エレインも頬を掻いて照れ臭そうに答える。

「えへへ…絶賛関係修復中です」
「ふーん。まぁ、お前がいいなら何も言わねぇけどよ」

 ホムラはエレインが思っているよりも、エレインの元パーティ面々への風当たりが強い。

「それで、アグニは今日は行かねぇのか?」
「はい、仲直りの邪魔はしたくありませんので我慢してやりますよ」

 地上のグルメが大好きなアグニであるが、今回は遠慮してくれるようだ。

「へへ、ありがとう。また一緒に行こうね!じゃあ、行ってきます!日暮れまでには帰りますので」

 エレインはそう言うと魔法陣へ飛び乗り、地上へ転移した。

「俺には人間同士の馴れ合いってやつがよく分からねぇな。修行や戦闘の方がよっぽど楽しいだろうが」

 エレインを見送ると、ホムラは肩をすくめて言った。

「まあ、エレインもここ数日修行を頑張っていましたからね。たまには息抜きも必要ですよ」

 未だに納得がいかない様子のホムラに、アグニはふと思い付いた事を言ってみる。

「もしかしてホムラ様、エレインが居ないと寂しいんですか?」
「はぁ!?何馬鹿なこと言ってんだ」
「あいたぁ!」

 ホムラは肯定も否定もしなかったが、アグニの脳天には鋭いげんこつが降って来た。

「ったく……ま、アイツがいねぇとここも広く感じるがな」

 いてててと呻くアグニには聞こえないほどの声量で、ホムラがぼそりと呟いた。


◇◇◇

「えっと、お、お待たせ…!」

 エレインが地上へ降り立つと、既にダンジョンの前にはリリスが到着していた。

「エレイン!わざわざすみません。ありがとうございます」

 エレインを確認すると、嬉しそうに笑みを浮かべるリリス。エレインは相変わらずむず痒い気持ちを覚えながら、リリスの隣に並んだ。

「では、行きましょうか」
「うん!」

 二人は肩を並べてウィルダリアの街へと繰り出した。

「へぇ~こんなところに可愛い茶屋があったなんて」
「わっ!見て!ここのお洋服素敵…」
「あ、これアグニちゃんが好きそう…」

 エレインは目を輝かせながら賑わう街を散策した。その様子をニコニコとリリスが見守っている。

 買い食いをしたり、服を見たり、髪飾りを見たり、二人は楽しいひとときを過ごしていた。

「…本当、アナタ変わったわ。こんなに明るく笑う人だったのですね」

 街の賑わいから少し外れ、人通りが少なくなって来た時、リリスが申し訳なさそうな悲痛な表情を見せた。だが、エレインは慌てて両手を振った。

「ま、待って…!もう昔の話をするのはやめよう?お互いにいい思い出がないだろうし…」
「でも…」
「いいの!これから、その…仲良くなれれば、それで」

 二人とも黙り込み、視線を交わすとどちらからともなく微笑を見せた。

 その時だった。

「お前たち、随分と仲良くなったものだな」
「っ!?」
「う、嘘…アナタ…そんな…」

 エレインとリリスの前に立ちはだかるように、フードを被った男が現れた。その声はよく知った人物のもので、リリスの声は震え、信じられないといったように目を見開いていく。

「あ、アレク…」

 エレインがその名を呼ぶと同時に、男はフードをぱさりと下ろした。フードの下から現れたのは、やはりアレクであった。目の下にはうっすらとクマが浮かび、頬もこけ、少し痩せた様子である。

「やあ、エレインにリリス。久しぶりじゃないか」

 不気味な笑みを浮かべながら、アレクが歩み寄ってくる。エレインとリリスはじりじりと後退りをした。

「な、何の用?」

 リリスを庇うように前に立ちながら、エレインがアレクを睨みつける。すると、可笑しそうにアレクは肩を震わせた。

「くくっ、泣き虫だったエレインが、随分と生意気な目をするようになったものだ」
「あ、アレク…どうしたのですか?」

 アレクの様子がおかしいと思ったのか、リリスが恐る恐る声をかける。だが、アレクはリリスを一瞥しただけで、すぐに視線をエレインに戻した。

「俺はもう、この街では生きていくことができないんだよ。金もない、信用も信頼もない、信じられる仲間も失った」
「…それはアナタ自身が招いたことでしょう?私には関係ないわ」
「黙れ!全部、全部お前と、ホムラとかいうあの男が悪いんだ!」

 エレインは絶句した。
 アレクの目には強い憎悪の念が滲んでいる。自分がエレインにした仕打ちを棚に上げて、逆恨みも甚だしい。

「だから、俺は決めたんだ。お前たちをこの世から消すとな」
「なっ、何を馬鹿なことを言っているのですか!!」
「うるさいぞ、リリス」
「えっ…くぅっ」

 エレインの前に身を乗り出し、抗議の声を上げたリリスであったが、あっという間に距離を詰めて来たアレクに腹を殴られた。
 リリスはお腹を抱えて蹲り、ばたりと地面に横たわり呻き声をあげる。

「リリス!!何を…」

 エレインは慌ててアレクとの距離を取った。
 今日は杖を持って来ていない。無くても魔法は使えるが、ダンジョンの外での人に危害を与えるような魔法の行使は、ギルドの規定により固く禁じられている。
 エレインの額に汗が滲む。万一の時は魔法を使わざるを得ないか、そう考えていた時。

「お前はこれでも食らって伸びていろ」
「何…っ!?」

 アレクが懐から取り出した何かが眩い光を放った。白い光に包まれて、エレインは次第に意識が遠のいていく感覚に襲われた。

「一体…な、にを…」

 逆光の中、アレクの顔は黒塗りされたようにその表情は読めない。
 エレインは黒く浮かび上がったアレクの姿を睨みつけ、意識を手放した。

「くく、くはは!この魔道具の威力は確かなようだな…あはははは!」

 アレクは高笑いをしながら地に臥したエレインの横腹に蹴りを入れた。エレインはごろごろと地面を転がっていき、だらりと力なく腕を垂らした。

「だ、め…アレク…エレイン…」

 アレクがエレインを担ぎ上げ、廃屋街の方へと進んで行くのを、白んだ視界の端で確認したところで、リリスの意識は深い闇の中へと沈んでいった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...